第26話・大賢者は異世界に戻る
「じゃあ、異世界に行こう!」
「うん!」
このままだと話が平行線なので異世界に行くことにした。
「14,401、14,402、14,403・・・・」
あ、ちなみに玲仁君には目的地にたどり着くまで何秒か数えてもらっている。え、理由?ただの好奇心だよ。だって気になるじゃん。え、気にならない?
あ、目の前に目的地がある。入ろう。
「懐かしい・・・・。」
「うん、懐かしいわね。」
心底懐かしそうな声色で言われたので全力で同意した。
「これで昔の姿に変われば昔そのままなのにね。」
「昔の姿・・・・」
「・・・・まあ、それは今回の目的じゃないから、目的を達成しに行きましょう!」
「うん!」
私は一瞬、第一次逆異世界転移現象というものを思い出していた。
第一次逆異世界転移現象というのは”先天性異世界転移をした生物が、先天性異世界転移以外の方法で元いた世界に戻ったときに起こる様々な現象”のことだ。
玲仁君にも当てはまる現象なので、思い返していたが、何かを忘れている気がする。まあ、とりあえず今回にはかかわらなさそうな話なのでスルーしておこう。
「お前、誰を連れてるんだ?」
早速自称母親の手下が来た。いくつか質問をするか。
「あの女・・・・美玲は本当に生きてるの?」
美玲というのは彼女の名前だ。本名かは定かではないが。ちなみに私は努めて冷静に話そうとしている。
「はい、当主様は生きてらっしゃいます。あなた様のおかげで一時期は生存が危ぶまれましたが。」
「そうですか。」
「忙しいので行きますね。マクリス」
マクリスとは長距離移動魔法だ。一度行きたい場所の景色を見ないといけないという制約がある。あと、行先の特定には気を付けないといけないのだが・・・・。
「フィシカカントリーの洞窟って・・・・あの女には警戒心がないの?」
特定した場所を見るにいきなり向かったみたいだ。
行先の特定はMPの残り香を”読んで”特定する。MPの残り香を出さないことは非常に難しいため、基本的には二回転移して残り香を紛らわすことをする。
「じゃあ、私たちも行きましょう。」
「うん。」
「マクリス!」
私たちは白い光に包まれて、気づいたら洞窟にいた。しかも最奥部に。これはさすがの私でも「もうちょっと警戒しろ」と突っ込んでしまった。
「あ、あったあった。」
「なにこれ。」
目の前にあったのは不透明な翡翠色で白く発光している・・・・。
「・・・・ミスリルね。」
白く発光しているのは魔法が入っている証だ。入っている魔法は使用者のMPをミスリル自体が生み出すMPで魔法を模倣し続ける。つまりそれは使用者のMPが尽きたり、ミスリルの寿命が尽きない限り永遠に効果は続くということなのだが・・・・。
「・・・・複雑すぎて読み取れないわね。」
この洞窟に埋まっている人と同じぐらいの大きさのミスリルは質自体は悪いが、その大きさのおかげで複数の魔法を模倣し続けても、寿命を削りづらくなっている。まあ、ちょっとずつ削られてるだろうけど。ちなみに最高品質のミスリルは、無色透明で、この大きいミスリル以上の魔法を模倣し続けても寿命が削れないけどね。
しかし、この光は蘇生魔法に近いな。あと、天使が一人いる。
(光天使さん、出てきて。)
(・・・・どちら様でしょうか?)
(光天使さん、これの仕組みを知ってる?)
(知ってるけど、主に口止めされてるので。)
(わかりました。私が来たことは他言無用でお願いします。)
うん、別の方面で切り込んでみよう。ちょっと今回は突破してみたい。
「突破って何?」
「え、突破フ○イルって知らなかったっけ?」
「・・・・知らないよ。」
うん、この話は平行線だと判断したので突破に向けてやってみよう。見たところ、あの光天使さん含めて四つの魔法が同時にかかってる。
あと三つの魔法は何だろうか?あと、蘇生魔法に近い光は何だろうか?明らかにMPが漏れてるどころじゃないぐらいだ。あたかも模倣してばらまいてるかのようだ。
・・・・本当に模倣しているなら模倣元のミスリルを解析するより、周りにばらまかれる魔法を解析したほうがよさそうだ。
どうやらこの魔法はリアナスっていう魔法みたいだ。あ、リアナスっていうのは気絶状態になったときに復活させる魔法だ。保険として掛けることが多い。
あと、アナサスもかかってるみたい。アナサスっていうのは気絶状態のときにかけると完全復活する魔法だ。緊急時にかけることが多い。
あと一つは他の魔法を支援する形かな?これは・・・・ノシエゴ?あ、ノシエゴっていうのは”状態異常の効果が時間経過で切れることを防ぐ”魔法だ。バフだろうがデバフだろうが効果がある。と、なると・・・・リアナスを切らさないため?
この三つが組み合わさることでどうなる?光天使さんがいたこととの関係は何?・・・・あ、思いついた。
「なるほど?」
「何か思いついたの?」
「うん。まず、このミスリルは光天使召喚とリアナスとアナサスとノシエゴがかかってるの。」
「はい。」
「で、これが何を意味しているかというと、この周辺で不死状態にすることができるの。」
「・・・・この周辺なの?」
「最後まで聞いて?気絶してもリアナスがかかってることで復活して、仮に一撃で死に至ったとしてもアナサスですぐに復活する。ノシエゴがかかっているからリレイズが切れることはない。」
アナサスの最大の特徴は”状態によっては死んだ状態から復活が可能”ということだ。もちろんダメなときはダメだけど、可能性があるからね。
「それでもダメだったときの保険として光天使さんがいるわけよ。」
「なるほど。」
「で、なぜ自称母親が死ななかったか。結論から言うと転移魔法でここに飛んできていた。」
「・・・・あ!」
「そう、ファイナルアタックでここに転移すれば何の問題もないわ。」
「そっか。・・・・で、これは壊せるものなの?」
「それなんだよな・・・・。これを壊すかファイナルアタックを封じて遠いところで倒すかしないと。それに仲間に転移されたらおしまいだし。壊したなら壊したであいつら神経質になりそうだし。」
「うーん・・・・。」
「・・・・とりあえず一旦帰ってごはんでも食べましょう。」
「うん、そうだね。」
とりあえず帰ることにした。まったくどうしようもない話だな。がんばらないと。
そう思いながら二回転移魔法を使ったあと異世界転移をして帰ったのだった。
あ、夕食のカレーは絶品だったよ。多分みんなにも人気なんだろうけどね。
あとがき
(自称)母親の秘密がわかったようです。これをどう壊すのか、見ものですね。結末を見たい方はフォローや応援や★、レビューやコメントなどお願いいたします。
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