第22話・大賢者の別荘 part4

「ねえ、あの爆発ってどうやって起こしてたの!?」

「えっと・・・・」

 今、理沙ちゃんに魔法の発動の瞬間を見せてしまったせいで理沙ちゃんに詰められている。

 せっかく青を基調にした和風の広間で座椅子とかちゃぶ台とか置いてあるのに景色が白黒に見える。もったいない。ちなみにこの広間は小広間らしい。大広間が夕飯を食べた場所なんだとか。

「ねえ助けてローレンスさん。」

「あ、ああどうしようもないんじゃないか?」

 どうしようこれ詰んだかもしれない。この世界では魔法が使えないことが信じられてるって聞いたのにどうしようか。

「あと、あいつの力が急に抜けたのは何を使ったの!?」

「ま、魔法を使いましたわ。」

「本当!?私にも使い方を教えてよ!」

 ごまかせなさそうだったので早々に自白することにした。それにしてもあの件はトラウマになってなさそうだ。本当によかった。

「うーん・・・・多分今の状態だったらMPが足りないと思いますわ。」

「え、そうなの?・・・・そっか・・・・。」

 正確に測ったわけではないが、渦巻くMPの量を見た限り少なそうだ。まあ実年齢がまだ7歳なので仕方ないのは仕方ないけど。

「まあ見せることぐらいはできますけどどうかいたしますか?」

「え、いいの?じゃあお願い!」

 とりあえず近くにかかしを召喚した。ちなみにかかしは召喚されて1時間が経ったら勝手に引っ込むようになっている。それにMP消費量がほぼ0というところも嬉しい点だ。

「何の属性を見たいのですか?」

「え、氷魔法が見てみたいな!」

「わかりましたわ。氷」

 かかしの周りに氷の柱が立つ。そしたら理沙ちゃんは驚きの表情を見せた。

「わあ、すごいすごい!」

 やっぱり私にとっては魔法理論がわかっていないだけに不完全に見えるのだが、ここの人たちには違うように見えるようだ。

「ありがとうございます。」

「部屋全体を冷やすこととかはできるの?」

「できますけどこの状態でさらに冷やすと逆に健康に悪いと思いますわ。」

 そう、案内されたこの部屋夏なのに結構涼しいんだよね。確実に26℃は下回ってると思う。

「そうなの?じゃあいいや。」

「玲香ちゃんって場所が違ったら大賢者って呼ばれてるんだよ。」

 ちょっと玲仁君火に油というかガソリンを注ぐような言葉をやめなさい!そんな言葉を言ったらもっと詮索されるにきまってるでしょ!?

「えええええ!?そうなの!?どうやったら大賢者になれるの!?」

 ほら、ものすごい嬉しそうな悲鳴をあげられたじゃないか。

「大賢者になるためには4種類以上の魔法をマスターする必要があるよ。」

「そうなの?じゃあ何の魔法をマスターしたの!?」

 理沙ちゃんはすごい興味津々になっている。これはこの話からずっとあとに聞いたんだけど、インターネットという場所で異世界で無双?するようなファンタジー系の物語が流行っていたらしく、そういうweb小説にはまっていた時に私の話を聞いたからこんな詮索に至ったらしい。

「・・・・攻撃魔法、回復魔法、補助魔法、時空魔法、神々召喚だよ。」

 もう紹介するのがだんだんめんどくさくなってきた。

「すごい、五種類もマスターしてるの!?」

「まあ、そうなるね。ところで理沙ちゃんはどうしてあんな場所にいたの?」

「起きたら物音がしたから入ってみたの。いつもはお父さんもお母さんも入れてくれないし。」

「いつも起きちゃうの?」

「まあいつもではないけどたまに目覚めちゃうの。そしたらたまたま泥棒がいただけ。玲香ちゃんこそなんであそこにいたの?」

「なんか毎日ちょっとずつ睡眠時間が短くなってるみたいで、今日はあの時間に目覚めて、散歩しようかなって思ってたときに怒鳴り声がしたから入ってみたの。」

「なるほどね。ねえ、よかったら友達になってまた会ってね!」

「うん!」

 そうだ、私もやりたいことがあったんだった。

「玲仁君、ちょっと私の研究に付き合ってくれない?」

「わかった!」

 私たちは外に出ることにした。


「召喚」

 私の前に光が発せられて、光がなくなったときにはお馴染みのものを持っていた。

「懐かしいね。」

「うん、取り出せてよかったわ。」

 私が持ってきたものは私のロッドだ。木の持ち手の先には大きい翡翠色の宝石がついている。ちなみにこれはミスリルという宝石だ。

 ミスリルとは、この世界の火におけるガソリン的な存在の魔力水が個体になった宝石で、膨大なMPを入れることができたり、入れた魔法を模倣することができたり、入れた魔法を膨大な魔力にして放つなど、魔法媒体としての価値はもちろん、ロッドにも使われることが多い宝石だ。

 で、これを取り出したのには理由がある。

「ええと、六角形に六芒星だったね。」

 はじめにロッドにMPを注いで丸を描く。そうしたら描いたところに白い光が出てきた。そのあとに(今回の場合は)六角形に六芒星を描く。最後に・・・・。

(現在の座標はどこですか?)

(******だぞ。)

 さすがに要ともいえる情報でかつ個人情報に関わることなので座標は隠させてもらう。そして調べた座標を5だけずらして書き入れる。描いたところの中に太い棒を置いておく。そして、最後に・・・・

「発動しろ」

 そう一言いうと、書いたところに光が生じる。そして、描いていたところから5Mメートルずれた場所に太い棒が置いてあった。

「なにこれ。」

「魔法陣だよ。」

「え!?」

「移動魔法の魔法陣は便利だから使わせてもらったわ。だからロッドが必要だったのよ。」

 説明している間に座標をメモしておく。

「で、これを実験した理由は何なの?」

「これでいつでもここに駆け付けられるでしょ?」

「・・・・ああ、なるほどね。」

 そう、これでMPがある限りいつでもここに来ることができるようになった。それはつまり、距離の暴力がなくなったということだ。

「また来ましょう!」

「うん!」

 まあ魔法を使う以上お忍びにはなるけど。でも魔法という存在が信じられてない以上仕方ない。世界によっては魔法教っていう魔法を崇めて信じる宗教があるんだけど、そんな世界で世間に賢者認定されると、神みたいに崇められてめんどくさい。何事も加減が大事だよ、本当にそうだ。

「じゃあ、戻って勉強しない?」

「うん、そうだね。意欲があるなら勉強しようか。」

「うん!」

 よし、ひらがなの勉強頑張るぞ!


 あとがき

 ここまで読んでくださってありがとうございます。よろしければフォロー、応援、★、レビューなどお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る