第18話・大賢者にとっての”夏休み”

「ナツヤスミ?」

「そう、日本の子供には夏休みっていう長期休みがあるの。」

「どのぐらいの長さですか?」

「幼稚園だったら七週間ぐらい?」

「七週間って何日ですか?」

「七週間は49日だよ。」

 つい昨日ハウスキーパーさんから夏休みだよという連絡が入って大混乱に陥り今は勉強部屋で夏休みの意味を玲仁君に聞いたところだ。

 この世界に来て、久保山家に拾われて3ヵ月半の月日がたった。幼稚園での勉強も簡単すぎてつまらないぐらいだったので困ってはいなかったのだがこういう話になると途端に混乱することがあるのだ。

 聞いたときに(え、夏休みがあるの?どっかの貴族の話ですかね?私の場合年中休みなしで受けれる仕事は全部受けてましたよ?)って考えてた。

「ちなみに小学校に上がったら高校卒業するまで夏休みの期間はだいたい同じになるかな?高校生だったら夏休みの間に軽く働いたりもあるかな。」

 あ、そうだ、玲仁君に聞きたいことがあったんだった。

「ねえねえ、仕事の紹介所とかのいい場所を知りませんか?」

「うん、紹介してあげるよ、16歳になって条件がそろったらね。」

「え?」

「この世界では例外を除いて16歳未満は働くのを禁止してるんだ。だから玲香ちゃんは16歳になるまで働いちゃだめだよ。」

「・・・・実年齢は成人してるのに。」

「実年齢は成人してても法律上は三歳だからダメだよ。」

「え、三歳なの?」

「祐奈社長から聞いたけど玲香ちゃんの誕生日は2月26日だって。」

「・・・・そっか。」

 ずっと肉体年齢に関して二歳二歳言われてたから完全に勘違いしてた。でも今考えれば外面が二歳っていう評価は成長が早い異世界の人が下した評価なわけだから、成長が遅い(かもしれない)この世界の人間の私と評価が同じになるわけがなかった。

「例外って何?」

「演劇関係とかかな。」

「そっち方面で働くことはできないの?」

「うーん・・・・厳しい業界だし、仮に受かったとしても祐奈社長とか佑太副社長が働くことを許すかというと・・・・」

 あ、無理そうね。素直にあきらめましょう。幸いここは子供が働かなくても家に住めて水が飲めてごはんが食べれてふかふかのベッドで寝れて趣味まで作れるぐらい豊かな世界だし。

「ちなみにこの世界の学校とか幼稚園の冬休みはだいたい三週間、春休みは二~三週間ぐらいかな?だいたいそのぐらいになるよ。」

「え、春も休めるの?」

「うん、そうだよ。春は教育の節目だからっていうところもあるけどね。」

「え、そうなの?」

「基本的には春に学年が変わるからだよ。」

「なるほど。」

「ところで、夏休みっていつ始まるかわかる?」

「ええと、7月22日からだって。」

「奇遇だね、俺もその日から始まるんだ。」

「本当!?」

「よかったらいろんなところに遊びに行こうよ!」

「うん!」

 よし、今世のローレンス様とデートの予定だ!・・・・まあ玲仁君にそんな気はないだろうけど。

 そのあと日本語の勉強してたら部屋にノックされた。

「お嬢様、夏休みには行きますか?」

「え、何かありますの?」

 予定が決まってそうみたいな言い方だと思った。

「別荘に行きますか?」

「え、別荘があるんですか?」

「ありますよ。毎年行ってますが、お嬢様は行きたいですか?」

「どれぐらい滞在するのです?」

「毎年週末に合わせて二日連続の休みを取って三泊四日で行きますよ。」

 まあ、四日ぐらいならいいか。

「行ってみますわ。」

「はい、わかりました。」

 玲仁君から別荘へのあこがれを感じるし、楽しそうだからいいか。

「楽しそうね・・・・魔法理論の研究、がんばりましょう!」

 その言葉は玲香にしかわからなかった。

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