第12話・大賢者は祖父母と出会う2
「初めまして、家永玲香と申します。よろしくお願いいたします。」
玲仁君に翻訳してもらった文章を噛まずに言えたことにまず一安心した。
「玲香、初めましてだな。よろしくな。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
「うちの娘も佑太君もわがままだからおばあちゃん心配してたの。でも、玲香が来てくれるって聞いたとき、すごい素敵だな、って思ったの。うちの会社をよろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いいたし・・・・え?会社?」
全然聞いてないんだけど、会社って何?資本主義のお金持ちの対象の定番だけどさ、久保山家って社長一家だったの?
「うん、久保山財閥をよろしくね。」
久保山財閥・・・・なんかお金持ちそうではあるけど!
「全く知らなかったますけど、久保山財閥とは?」
「久保山財閥はうちの会社だよ。どこに出しても恥ずかしくない大企業だけど、よろしくね。」
しかも大企業だったの!?だから玲仁君の授業も会社関係の単語が多めだったの?そうなの?
「は、はい・・・・。」
「祐奈、玲香に会社のこと話してなかったのかい?」
「うん。だって玲香に私の仕事のこととか気にしてほしくなかったもん。」
「それぐらい話した方がよかったのではないか?」
「いや、玲香は二歳だよ?玲香はすごく物分かりのいい子っていうのはわかるけど、それでも二歳の小さい子供にお金のことを気にしてほしくないの!わかる?」
「・・・・そうか。介入してすまなかったね。ただね」
「玲香、今日からうちの子だぞ!よろしくな!」
「はい、おじい様、おばあ様!」
おじい様が親子喧嘩になりそうなのを察して私に話しかけてこの場を終わらせようとしてきた。ありがたい。
「祐奈、帰ろう?」
「・・・・お母さんには話したいことは沢山あるけど、いったん帰るよ。あとは電話でも。」
喧嘩が終わったかと思えば家で白熱しそうだ。関わるのがめんどくさい・・・・関わる必要がないので私は我関せず帰ろうと思う。
車の中で話す時間ができた、というか何かに集中してないと酔いそうだったためお話をすることにした。
「お父様、ありがとうね。」
「え、パパは何もしてないよ?」
「だっておばあ様とお母様の喧嘩を中断してくださったし・・・・。」
「あれぐらい気にすんな。それにあの二人の親子喧嘩めんどくさいから、俺自身のためだよ。」
「わかった。」
うん、めんどくさいならしょうがないね。
「それと俺のことはパパ、祐奈のことはママ、おじいちゃんとおばあちゃんのことはじいじとばあばでいいぞ。」
「わかったわ、パパ。」
この世界で子供は父親のことパパって砕けて呼ぶみたい。でも、私の中身はとっくに大人なんだけどな・・・・。
「パパはね・・・・」
とはいえお母様が車の中で電話してずっと怒鳴ってるのでお父様と一緒に話をすることにした。他愛のない会話はすごく楽しかった。
でも、幸せというのは長く続かないということを私は知ってる。車が家に止まったときに私はそう思った。
「つきましたよ。」
お母様はまだ怒鳴ってるし、お父様と一緒にこっそり抜け出すことにした。
「玲香、どうしたの?」
あ、引き留められた。めんどくさいなと思いながらも応対することにした。
「先に車から出ようかな、って。」
やばい、すごい胡散臭い嘘っぽい声しか出ない。
「玲香、何か嘘ついてる?」
「そんなわけないよ?」
ダメだ、火に油を注いでる。速く逃げたいのに逃げられない。
「玲香、帰ったら話しなさい!」
「わかりました。」
さすがに怒鳴るお母様が怖かったとは言えないし、途方に暮れる私だった。
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