第10話・大賢者の魔法理論

「うーん・・・・」

 昨日、包丁で刺された女性を治したんだけど、その件でこの世界の魔法理論が他の世界と違うと思った。

 いや、当たり前のことなんだよ?この世界と別世界の魔法理論が違うなんて。だけど、根本的なところが違う気がするんだよ。

 この家は広いけどまさか勉強するための部屋があるとは知らなかった。まあ机と椅子だけなんだけど、この木でできてる机と椅子がなんか細かい模様が刻み込まれてておしゃれだ。壁紙も見た目は白いんだけど近づいて見てみたらレースみたいな細かい模様が刻み込まれてるし、床も木を組んだだけに見えて歩きやすいので木以外の物を使ってると思う。

 今は魔法理論の共通点、相違点をノートに書き記している。じゃないと魔法の開発なんてとてもできないし、酔い止め魔法と酔い止め耐性を早く完成させないとこの世界では死にそうになるって認識したから頑張らないと。

 でも魔法語もわからない状態で魔法理論を一から書くとか少なくとも今世中には無理だよな・・・・。他の世界でも何百年とかけて完成させてるんだし。

 そういう時は他の世界の魔法理論をアレンジするといい。そうすれば何百年の積み重ねをちょっとは引き継げる、はずだ。

 二、三歳(三、四歳?)の見た目で何やってるんだって言われればそれまでなんだけどね。だって気になるじゃん?え、気になるよね?

 もう一つの疑問がある。それはこの世界の魔法語とは何か、ということだ。

 普通の世界では言語と言ったら共通語、魔法語、神仏語の三種類になる。

 共通語はその世界の基本の言語だ。世界のほとんどの町が使っている。

 魔法語はその世界で詠唱に使える言語だ。一部の町が使っていることもあるが、使っている町のほとんどは人間が住んでる町ではなかったりする。

 神仏語は沢山の世界の神様が使っている言語で、地上の生物が使うことは少なくとも私は見たことない。生物が覚えるとしたら神々召喚をしたい人などに限られる。

 で、このうちの魔法語がどの言語なんだ、てこと。魔法語を覚えないと詠唱の言葉を考えられないし詠唱ができないから無詠唱魔法で何とかすることになりかねないので知らないといけない。

 そもそもこの世界に言語が多すぎるからこうなってる。日本語だけじゃなくて英語とかフランス語とかドイツ語とかスペイン語とか中国語とかあるらしいし。それ以上の言語の種類は存じ上げていない。

 神様も言語神とかそういう神様がいないと回らないぐらいになってるってことだからね・・・・。

 とにかく、魔法語を見つけて覚えないとどうしようもないってことだ。魔法理論を突き詰めるためにはそこから始めないといけない。

 だいたい魔法語って難しいっていうし難しい言語を当たっていけばいいのかな?でもそうしたら外れたときのリスクが大きすぎるし・・・・。

「玲香ちゃん、どうしたの?」

「あ、玲仁君。この世界の魔法理論はどんなものなのかを考えてたの。」

「この世界っていうからには別の世界では魔法理論が違うの?」

「うん、そうよ。魔法理論っていうのはいわば”世界の理”。世界が違うなら世界の理も違う。世界ってそういうものよ。」

「で、俺のMPと魔力量の測定結果はどうだった?」

 ちなみにこれは昨日帰ってから依頼されたものだ。私としても知りたかったし張り切ってやってた。

「前世よりは多いわね。」

「平均よりは多いの、少ないの?」

「平均よりは・・・・うーん、ちょっと少ないかな?」

 ちょっとどころじゃなくめちゃくちゃ少なかった。ただ、前世と比較したらかなり多いと思う。前世では魔法を使うMPの余裕なんて全然なかったからね。

 まあ、先天性異世界転移ってだいたい前世の能力を引き継ぐからね。むしろ変わっている方だよ、この状態は。

 まあ前世では出会ったときにはすでにすごい前衛タイプだったし、幼少期のローレンス様には出会ってないから比較対象にはならないけど。

 説明すると基本的には男性と女性で生まれ持ったMPや魔力の高さや成長によるMPや魔力の高さが違う。男性のMPは幼少期のころに多くなる。

 なので玲仁君が9歳の時に測った記録とローレンス様が16歳に測ったときの記録は比較対象にはならないということだ。

「魔法は使えるに越したことはないからね?」

「そうなの?」

「だって回復魔法が使えたら一人旅だってできるし、攻撃魔法が使えれば攻撃の幅が広がる。もちろん物理攻撃も大事だけど、魔法も同じぐらい大事だと思うんだ。」

「一人旅・・・・」

「うん、そうだよ。で、授業をしていい?」

「うん!」

「まず、魔法ってどうやって発動されると思う?」

「え・・・・」

「魔法を使ったときに消費されるものって何かな?」

「うーん・・・・もしかして、MPのこと?」

「そうです!MPと意思を結びつけることで魔法が発動します。これは最低条件ね。」

「最低条件ってことは他の条件もあるってこと?」

「そう!詠唱を唱えることで魔法の発動を助けることができます!」

「なるほど。詠唱って必須なんだと思ってたけど、必要ないんだ。」

「あ、でも必須に近いことは間違いないよ?だって詠唱がないと沢山のMPと意思が必要になるからね。」

「なるほど・・・・。」

 まあ、無詠唱魔法をポンポンだす私が異常なのだ。それは間違いない。

 私は玲仁君に授業を教えて魔法理論の復習をすることにした。

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