第8話・大賢者の散歩 part1
「じゃあ、行こうか。」
「うん!」
推しに手を握られてデートに行くとか最高か!もしかしてファンサービスしてくれてるの?ありがとう大好き!
「おすすめの場所があるから、行ってみよう!」
「わかった!」
「その場所にはバスっていう乗り物に乗っていくんだ。」
「OK!」
あ、ちなみにOKっていう返事は周りの人から学んだよ。以外と便利な気がするので使ってる。
「おっちゃーん、バスに乗せて!」
「はいはい。」
よくわからないが知り合いなのだろうか?まあいいや。
今までは反応することを封じていたが、余裕が出ると周辺が要塞みたいだとわかる。通る道全部が平な石だし、時々ある看板も金属でできてるし、道案内に使われてるであろう赤と黄色と緑の光は明らかに人工物だし。なんで青がないのかは謎だが。
周辺を見ていたらだんだん気持ち悪くなってきたことで思い出した。私は乗り物酔いがかなりひどく、今までも転移魔法を使ってしのいでいたことに。もしかして、結構ヤバいんじゃないかな?
鉄の塊に関してもあとで聞いたら車っていう乗り物だってわかった。馬車とかは乗ったことがあるけど、鉄の塊が動いたことはなかったのですごいびっくりしたよ。
「大丈夫?ここからだとちょっと遠いけど降りる?」
あ、ローレンス様もとい玲仁君のやさしさ発動!かっこいい!
「転移魔法が使えるならそうしたいわ。」
「この世界では転移魔法は使えないけど、どうする?」
「・・・・じゃあ、我慢するわ。」
全く、こんなことになるなら事前に研究していた酔い止め魔法と酔い止め耐性を完成させておくべきだった。
あ、酔い止め魔法っていうのは私が研究していた魔法だよ。それぐらいに困ってたんだけど、私はなんで忘れてたんだろうか。転移魔法ばっかり使ってたから?
あ、でも第二段階も終盤だったから使えるかな?そう思って無詠唱魔法を展開してみる。
そうすると乗り物酔いがかなり楽になった。便利魔法、最高!
あ、ちなみに第二段階っていうのはこの場合だったら魔法研究の段階のうちの一つだ。第二段階の場合だとその魔法を便利にする段階だ。とはいえこの段階がないととても使い物にならない魔法が多いし、重要な段階だ。
まあ、数分間は酔わないっていう効果もあるけどそのあとがきついから外の景色でも見ておく。回避するのは無理かもしれないけど。自分の中にある敵って怖い。
なんとなく後ろを走っている車を見たんだけど・・・・なんでうちの車と書いてある数字が一緒なの?
「なんで後ろを走ってる車の数字が我が家と一緒なの?」
「え?あ、本当だ。うーん・・・・過保護だから、じゃない?」
「え、過保護なの?」
「俺たちは表面上子供じゃん。だから不安なんじゃないの?」
「そうなのかな?」
冒険しててお姉ちゃんと二人で紹介所に行くと「不安じゃなかった?」って聞かれてタンクばっかり紹介される現象と似てるのかな?
「え、そんなことがあったの?」
「え?なんのこと?」
「紹介所のおばちゃんにおせっかい焼かれてたの?」
「まあ焼かれてたよ。まあ女の子二人が紹介所に来るってことは前衛が不足してるって思うんだろうね。」
ちなみにお姉ちゃんは魔法騎士タイプだから前衛はアタッカーが一人いれば十分だったりする。このお姉ちゃんの一撃をくらったら結構痛いんだよ。
「お姉ちゃん・・・・どこいったのかな・・・・。」
これはただの私の勘なんだけど、お姉ちゃんはこの国・・・・日本という国のどこかにはいる気がするんだよね。どこなのかはよくわからないんだけど。
「ちなみに日本ってどういう国なの?」
「日本・・・・島国で、独自の文化がある国かな。」
「どんな島があるの?」
「大きく分けて北から北海道、本州、四国、九州、沖縄かな。」
「ここから一番離れてるのはどこなの?」
「沖縄諸島かな。だいたい2,000
「そうなの?わかったわ。」
私が行った一番大きい世界の広さに比べたら2,000
「あ、ついたよ。」
「OK!」
玲仁君が運転手さんにお金らしきものを渡している。私は何もできなさそうなのでとりあえず見ていたら終わったみたいだ。
「じゃあ、散歩に行こうか!」
「うん!」
たどり着いた公園が思っていたより広かった。もちろんあの世界みたいな草原が視界いっぱいに広がるみたいなイメージではないが、私が想像していた公園って整備せずにちょっと柵だけ立てて”ここで遊んでいいよ、襲われないから”って感じのをイメージしてたんだけどね。現代日本はいろんな意味で期待を裏切ってくれるよ。
それに比べてここは平原って呼べるほど広いし、向こうには森とかも見えるし、気になるものがいくつか建っているとかパラダイスみたいだ。
「わあ・・・・!」
あの世界ではもっと広い自然はあったけど景色に見とれていたときに魔物に襲われることが一種のお約束だったからね。安全な状態でこの景色は本当にすごい。
「喜んでくれてよかった。」
「玲仁君遊びましょう!」
「はいはい。何して遊べばいいの?」
木の枝を拾って玲仁君にぶつけてチャンバラごっこしてたら玲仁君も応戦してくれた。
「どりゃあ!」
「おっと!」
現代日本では体力を使うことがほとんどないから体力が有り余ってるんだよね!玲仁君よ、体力消費のサンドバックになるがいい!
しばらく木の枝をぶつけあってたら玲仁君の木の枝が私のみぞおちに当たったりした。
「うぐっ」
「ごめん、ごめんて!」
まあこのぐらいなら回復魔法で簡単に治せるのでセーフだよ、玲仁君。とは言えないのでした。
しばらく歩いてて気づいたんだけど、これ女性がついてきてるよね?
「誰?」
「わあ!」
声をかけたら後ろの女性がびっくりしていた。でもよく見たら久保山家に来た初日に私をお風呂に入れた人だった。変質者じゃなくてよかった。でも不意打ちって怖いんだよ、わかる?
「れ、玲香様!?どうしてわかったの!?」
「ついてきてるからわかるでしょ?」
「?」
あ、異世界の共通語で話しかけてた。
「ついてきてたからわかったそうです。」
通訳ありがとう感謝。
「わたくし、ちょっとトイレに行ってきます。」
「行ってらっしゃい!」
女性を送り出した。
「玲仁君、ちょっとここらでシャドーイングでもしない?」
「いいよ。」
知らない人のために説明するとシャドーイングとは、ネイティブの人の発音を勉強する人がひたすら真似するという言語における練習方法だ。今の私の課題は聞くこと、そして話すことなのでこれを使って頑張っている。
「じゃあ、今日は早口言葉にしようか。」
玲仁君が息を吸った。
「生麦生米生卵」
「なまみゅぎ、なみゃごめ、なまたみゃご」
うん、噛みまくってる。これはひどい。ていうか玲仁君はなんでそこまで噛まずに言えるの?
「赤巻紙青巻紙黄巻紙」
「あかみゃきがみあおまきがみきみゃきがみ」
微妙に噛んだ。青巻紙は言えたけど、他が噛んでる。
「隣の客はよく柿食う客だ」
「となりのきゃくはよくきゃききゅうきゃく・・・・え?」
噛み噛みの早口言葉を言っていたのを中断したのは視界の端にさっきトイレに行った女性がいたこと。
そして、その女性の向かい側に刃物を持った知らない男性がいたからだ。
「玲仁君、あそこ」
すぐに対処しないと。私は焦燥感に追われた。
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