第6話・大賢者は幼稚園へ行く
「ここが幼稚園だよ。」
もうちょっと学校っぽいものを想像していたのだが、壁にはこの世界特有の透明なガラスが使われていたり、ガラスに明らかに幼児が書いた絵が張ってあったり、ちょっとメルヘンチックな外装になっていてびっくりした。
私の知ってる学校って石造りでかわいらしさのひとかけらもない堅苦しい場所だったからびっくりした。
いろんな子供が入っていってるけど・・・・子供達、小さすぎないかな?もしかしてこの世界の子供って発育が遅いの?
魔法を使って大人たちの会話を盗聴したところこの幼稚園はプレスクールというものに入ってから幼稚園に通うらしい。
で、プレスクールに通い始める締め切り的なものが決まってないから私を連れてきたのだとか。
この世界の教育の仕組みがよくわからないがまだわからなくてよさそうなので知らないままでいることにする。
言語精霊が体の中から出たり入ったりができるようにコントロールすることを覚えたので言語問題はとりあえず大丈夫だと思う。
ちなみに本来は精霊は人間には見えない。なぜか私は見えるんだけど。あと天使は人間にも見える。普通に見える。
だからよっぽど聡明な子がいない限り出て来ても大丈夫そうだ。出てくると私の言語問題が解決しないから問題大ありなんだけどね。
「どうしたの?入るよ。」
「うん!」
「玲香は頭がいいね!」
「ありがとう!」
正直、そんなにうれしくない。頭がいいなんて当たり前だ。だって体の年齢と実際に生きた年齢が大幅にずれてるのだから。生きた年齢を忘れるほど生きてきたというのにほとんど勉強をしていないから私が年相応の年齢になったらバカ呼ばわりされると思う。
正直この世界の子供の発育ってあんまりよろしくなさそうだからな。だからこの受け答えだけでも頭がよく見えるのかもしれない。
練習したおかげで軽いスピーキングぐらいはできるようになった。それも玲仁君のおかげだ。玲仁君に出会ってなかったら今頃リスニング力も全くついてなかったと思うし話すことすらできなかったと思う。
内装もメルヘンチックな見た目をしていた。かわいらしい見た目をしているのはいいことだ。
「今日は新しい子がいるよ!玲香ちゃんっていう子供だからみんな仲良くしてあげてね!」
「家永玲香です!よろしくお願いいたします!」
多分発音とかものすごく怪しかったと思うけど実際に外国人だから気にしないでおこう。
幼稚園の先生がいろいろ話してるのは多分朝の会だと思う。正直座ってるだけとかそれでいいのか不安になってしまう。
あ、私の誕生日は不明だ。もともと幼いころに親と離れて異世界で魔法の勉強をしていたし、血縁関係があるってわかってた人って姉ぐらいだったし、姉は私と姉の出生に関して頑なに語らなかったからね。
・・・・今思い返してみると私、完全に孤児だな。そのうえ今の状態って姉と離れてしまった状態だ。名前もわからない叔父叔母夫婦に感謝。
あ、男女の身元に関しては寝てる間に思い出した情報だよ。お姉ちゃんが母方叔父と父方叔母の夫婦に助けられたって言ってたことを思い出したから。というかその説にしないと厚遇してくださる心当たりが本当にない。
まあ今は朝の会に集中しようか。
この幼稚園では朝の会が終わったあと自由時間があるらしい。だったら何か書けるものでももらって魔法の研究でもしていようかと思ったので、今紙に魔法理論を書きなぐっている。
まあこの世界の魔法理論が全くわからない以上異世界の話にはなるけど。
そうこうしているうちに私はだんだん心が暇になってきたので前にいた世界の魔法理論の一部をみんなに話すことにするよ。
まず、魔法はMP+意思+(詠唱)=発動となる。順番に説明していくね。
詠唱とは魔法を詠唱するのを助ける役割を持つものだ。詠唱だけでは発動しない。ただ、詠唱を唱えることで威力の大幅上昇や消費MPの大幅削減などが期待できる。基本的には魔法語と呼ばれる存在のテンプレート的な一文を使う。
意思とは魔法を唱える意思のことで、意思と魔力が結び付くことで魔法が発動する。さっきも書いたけど詠唱は魔法のサポートに過ぎない。
MPとはいろんな生き物に宿る魔法を使うエネルギー源だ。同時に生存するのに必要なエネルギーでもある。でも魔法にはMPが必須なので使わないといけないけどね。
詠唱を使わずに意思とMPだけで発動するのが無詠唱魔法というものだ。MPの消費量も多いし、凝縮した意思を扱えないといけないので上級者向けの発動方法だといえる。まあ私はやろうと思ったら無詠唱で雷バンバン出すけど。というより感情が高ぶると暴発するんだよ。
あ、ちなみに暴発という現象はMPを出すことに慣れた人の感情が高ぶったときに無意識に魔法を発動させることだ。無意識なので操作が大変難しくMP切れを起こしやすい。この現象が起きた状態に遭遇したときに助かるためにはMP切れを狙うことになる。
ちなみに魔力というとだいたいは”魔法の威力”のことを指す。つまり魔力が高いというと魔法の威力が高いことだ。なんとなくわかった?
MPも魔力もLvが上がったときに多くなったり高くなったりするものなのでLvというものは大事なんだけど、この世界ではLvをあげる手段はないに等しい。どうしたものか・・・・。
・・・・ん?不吉な予感がする。晴れてるのに、豪雨、それも雷雨が降る予感というか・・・・とにかく不吉だ。私の少ないMPと魔力でどうにかなるといいんだけど・・・・。
「玲香ちゃんどうしたの?」
「なんかいやなの。怖いの。」
「そうなんだ。大丈夫だと思うよ。」
でも、世の中怖いどころですまされない大事もあるからね。多分。少なくともあの世界にはあったよ。とにかく不吉な予感が当たってませんように・・・・。
現在午後1時、その不吉な予感が当たってしまってびっくりしている。というのもさっきまであれだけ晴れていたのに今、豪雨が降りだして雷までなりだしたのだ。
これまでの人生経験で不吉な予感はだいたい当たってたんだけど、今回も当たるとは・・・・。
まず、これまでの人生経験上、こういう雷雨って最低でも一人は雷に打たれて死ぬ生き物が出てくる。
幸いなことにここの周辺の建物は雷に強い造りをしているので建物の中にいる人は大丈夫かもしれないが、それでも怖いものは怖い。
私自身は雷の音を聞いたぐらいで怖くはないのだが、雷が落ちたことで死人が出るのがすごく怖い。
どうにかできないかな・・・・魔法か・・・・。風属性魔法で雲を散らせばいいんだよね?でも、地上には吹かせてはならない。MP、足りるかな・・・・。
いや、以外と足りるかもしれない。そう思ってつけている腕輪を起動した。
この腕輪は本来はステータスを確認したりパーティーを組むための腕輪だ。でも、これは魔法でできてるので私の場合はそれ以外の機能も搭載している。
たとえば魔力増強とかだ。今回は魔力を増強してMPを節約しようと思う。ただでさえこの世界の魔法語がわからないんだし、節約できるところはしないと。
~私よ、上空に風を起こしなさい~
そう祈ると風が巻き起こったようだ。これを維持して雲を散らしてみよう。
ちょっとずつMPが抜ける感覚がするが、いったん今は無視する。
どうやら水がちょっとずづ拡散されていってるらしく、雲がだんだん薄くなっている。やがて雷は止み、雨は止まり、雲もなくなった。
どうやらこれでみんな帰れそうだ。よし、帰るか。
「ちょっと待って、玲香ちゃん。玲香ちゃんはまだおうちには行けないよ。」
「え」
どうやら話を聞いたところではお迎えの人が来ないと返さないように言われていたらしい。
くそー、過保護な叔父様めー!
そのあとちゃんと迎えが来て幼稚園一日目はしっかり帰れましたとさ。
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