第4話・大賢者の日本語入門

「そろそろ終わりにしようか。」

「え、もう終わりなの?」

「・・・・じゃあ、休憩しようか。」

「・・・・わかった。」

 やっぱり日本語は難しいけど、のめりこむぐらいには楽しかったな。

 あ、この世界についての情報を聞いておきたいな。

「玲仁君、今いる国ってなんて国なの?」

「日本、って答えればあってる?」

「ニホン・・・・」

 うーん、やっぱり異世界だ。あれだけ世界を周ったのに聞いたことがない地名が出てきたとは。

「今5月?だよね?」

「いや、今は4月だよ。」

「え」

 もしかして季節に対する気温も違うのだろうか。前の世界の温帯の気候で推理して考えたんだけど失敗したな。

「あの場で聞き損ねたんだけど、大賢者ってことは魔法語が使えるんだよね?」

「うん、そうよ。魔法でできることの幅が広がるって聞いたから必死で覚えたわ!」

 まあ神様の力を借りなかったわけではないけど。

 ちなみにいろんな神様に呼び掛けてみたが全部失敗した。多分Lv1だからだと思う。

「でも歩いても雑魚敵に襲われなかったんだよな・・・・」

「あ、この世界に魔物はいないよ。」

「ええ!!?」

 え、じゃあどうやってレベルをあげればいいの?もしかして神々召喚を封印しないといけないの?そんなの無理だよ!

「うーん、魔法のことはよくわからないけど、練習すればできるんじゃない?」

 あ、確かにそうかも。・・・・ん?ちょっと待った。

「なんで魔法ができないからショック受けてるってわかったの?」

「え、だいたい顔に出てるから。」

「・・・・」

 私ってそんなに表情豊かだっけ。あんまり心を読まれたことはないし、むしろ何考えてるかわからないと言われたことはあるけど・・・・。

「慣れればわかりやすいよ。」

 慣れる?人の表情を読むのに慣れるもあるのだろうか。よくわからない。いつか解き明かしてやると思いながら今は一旦無視することにした。

「じゃあ、勉強再会してもいい?」

「うん!」

 とりあえず今は日本語を習得することに集中しよう。


「@、レージ+*@+*@*?(ねえ、玲仁君ってアレルギーってあったりする?)」

 うーん、わかる単語が玲仁以外なかったぞ。前途多難だな。

「*+@。(ありませんよ。)」

「%$+スキ?(甘いものは好き?)」

「+スキ@%。(大好きですね。)」

「レーカ%スキ?(玲香ちゃんは好き?)」

「玲香ちゃんは甘いものが好きか、だって。」

 また通訳してくれてありがたい。

「甘いものは大好きだよって伝えておいて。」

「@:@スキ%。(甘いものは大好きだって。)」

「*+@&+?(お茶でも飲んでく?)」

「はい。」

 うん、最後だけしっかり聞き取れたね。

「お茶でも飲んでくか、だって。よかったら一緒に飲む?」

「うん!」


 お茶菓子は黄色い円盤状の焼き菓子だった。

「おいしそう・・・・昨日食べたお肉の塊よりおいしそう!」

「お肉の塊って・・・・どんな形だった?」

「え、球体を長くしたような形だったよ。」

「それは多分ハンバーグっていう料理だよ。」

「へえ、そうなんだ!お肉は何を使ってるの?あの味と食感だとアルミラージかな?」

「いや、牛と豚の合びき肉だと思うよ。」

「牛ってどんな生物なの?」

「いろんな種類があるけど・・・・まあ、この場合見た目は体が白と黒のまだら模様で角が生えてる四足歩行の生物かな。こんな感じの。」

 そういって玲仁君は昨日いやというほど見た黒い板を使っている。この黒い板は驚くことに横についているボタンか何かを押したら青く光ったのだ!

「わあ!・・・・昨日から思ってたんだけど、それなんなの?その黒い板ってこの世界ではあちこちにあるけど。」

「これの場合はスマホっていうものかな。機能はいろいろあるけど、一言で説明できないから便利なものぐらいに思っておけばいいよ。これに関しては今度授業するね。」

「スマホ・・・・」

 何そのスマホとかいう便利な魔道具。この世界すごい便利そうじゃん。

「あ、これ魔道具じゃないよ。というかこの世界では魔法を使ったものは一個もないよ。」

「えええええ!!!!?」

 ないの!?あんなにごはんはおいしいし便利なものもいっぱいあるのに魔法を使ったものは一個もないの!?

「で、牛はこういう見た目をしてるかな。」

 あ、本来の話をすっかり忘れてた。で、実物?を見たんだけど・・・・どう考えても実物じゃないのにリアルだ。

「この牛ってこんなに小さいの?」

「いや、結構大きいよ。足から背中までで140~150cmあるらしいし、しっぽから頭までってなると170cmとかだからね。」

「え、じゃあなんでこの小さなスマホとやらに収まってるの?」

「ああ、写真っていう道具が見ている範囲を誰でも見れるように記憶して見せることができるんだ。」

 マジか。写真すごい。じゃあ、口で言っても誰も信じてもらえなかった人口ミスリルとかも写真を見せれば信用してもらえたってこと!?

「で、豚はこんなのかな。」

 へえ、ピンク色でちょっとかわいい。豚はお腹がちょっと膨れてるんだ。

「この二つをお肉にしてひき肉にしたってこと?」

「うん、多分そうだよ。詳細は聞いてないからわからないけど。」

「ちなみにこの黄色くて円盤状のお菓子は?」

「これはクッキーっていうお菓子だよ。食べてみて。おいしいから。」

「わかった。」

 私も一口食べてみた。そしたらサクサクで、バター的なものが効いてて甘い。

「おいしい・・・・。」

「確かにこれおいしいね。」

「こんなものを平気でお茶菓子として出すってことはこの家は公爵家なのかしら?」

「いや、この世界は資本主義だよ。多分。」

「シホンシュギ?」

「まあお金がすべての社会なんだけど・・・・詳しくは13、4歳でやると思うよ。あの世界ならノードタウンのあたりかな。」

 なるほど、わかった。だからお金がすべての社会なのか。

「まあこの久保山家は大企業の社長だからね。だからお金はあると思うよ。」

 久保山家はこの家の苗字かな?私だったら家永とか。

「とりあえず勉強再開しよう!この話始めたらきりがないと思うから!」

 まあ、確かにそうかもしれない。がんばるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る