第3話・大賢者の勉強の始まり
「はっ」
気づいたら朝だった。それにしてもこの世界では午後の9時ごろから朝の5時ごろまで寝れるのか。
前の世界にいたときは30分寝れたらいいほうだったのに。
「よくねたー!」
しかし昨日私を持ち上げて降ろしてってしてた女性は今はいないのか。
じゃあちょっと家の外に出てみよう。え、窓まで浮遊魔法で飛び上がってからうまく調節して着地するだけだもん、そんぐらい私以外でもできるよ。
よし、ひと思いに行こう。浮遊魔法は付与できた。よし、降りるぞ。
・・・・できた。じゃあ、散歩でもしますか。ついでに周辺にうろついてる雑魚敵でも蹴散らそうかな。
あれ、こんなに歩いてるのに一回も雑魚敵に出くわしてない。もしかしてここら辺一帯に私でも気づかない結界が張ってあるの?だとしたらなんて巧妙なんだ。
そう思って近くの公園に入った。理由は瀕死の魂を一つだけ近くに発見したからだ。
中に入ってみたら8歳ぐらい・・・・いや、この世界の価値観なら10歳ぐらい?の男の子を見つけた。しかも瀕死と言わず思いっきり気絶状態で。
にしても美形だな。漆黒の髪だし目鼻立ちも整ってる。でもかわいい。
あ、見とれてる場合じゃなかった。とりあえず蘇生魔法をかけてみるか。お、効いた。目が開いてるよ。黒とび色の瞳が綺麗。
「目覚めましたか?」
あ、この世界で聞いても返事が返ってこないのになんで声をかけたんだろう。
「・・・・%?*?(え?どうして?)」
やっぱり声を掛けずにさっさと立ち去っとけば・・・・
「あなたは誰でしょうか?」
え、ちょっとまってあの世界の共通語?なんで?なんで散々通じなかったのになんで意味が通るの?
「家永玲香と申します。」
「え、ちょっとまって本当に玲香さん?大賢者の?」
やっぱり私のことを知ってる。私もこの子のことを知ってる気がする。一体誰だったっけ・・・・
「俺は神垣玲仁。そして、聖人君子の最強騎士と呼ばれる人です。」
聖人君子の最強騎士・・・・え!?なんでここに!?それに名前が違うよね!?
聖人君子の最強騎士とは、18年前に死んだ伝説の騎士であり・・・・私の推しの騎士だった。
ちなみに前世の本名はローレンス・ケンドリック。当時必死で綴りを覚えたっけ・・・・。
で、18年前に死んだ、今は姿が違うということを考えると、先天性異世界転移だろう。
先天性異世界転移とは一言で言うと”何らかの理由で魂が別世界に移動する”ことで起こる異世界転移だ。要は”前世が異世界人”タイプ。
それより今はどう見ても成長途中だ。完全に自分より弱いと思う。かわいい。
「少しだけでもいいんです。話をさせていただけませんか?」
「はい!」
玲仁君は天使みたいにかわいいな。前世でもかなりのイケメンだったし、二回連続で人間、それも美形を引くとか強運すぎる。
前世の記憶を取り戻したならすごく優しくなるだろうし、将来絶対モテるだろうな。実際私も推しと言っても差し支えなかったし。
「で、前世の記憶は取り戻しましたか?」
「うん、取り戻したよ。だから今の玲香ちゃんを思い出せたんだけど。玲香ちゃんこそどうしたの?どうしてこの世界にいるの?」
「私ね、もともとこの世界の人間だったみたいなんだ。だからこの世界に戻ったの。」
「そうなの!?じゃあ、玲香ちゃんは普通の人間と同じように成長していくってこと?」
「うん、そうだよ。」
「・・・・そっか・・・・。」
玲仁君から複雑な感情が読み取れる。嬉しいような、さみしいような、ってところかな?
正直頭もよくて性格もいい玲仁君に頼みたいことがある。
「ねえ、あったばかりで申し訳ないんだけど、お願い事があるの。」
「何?なんでも聞くよ?」
「この世界の言語を教えてほしいの。私、気が付いたころにはあの世界にいたから本当に言葉がわからなくて。だから、通訳したり言葉を教えたりしてほしいの。だめ、かな?」
正直あったばかりで都合のいいことばかり言ってると思う。でも、私の言葉を理解してくれる人って全世界で玲仁君しかいない気がする。だからこそお願いしたいんだ。
「いや、全然ダメじゃないよ。よろしくね、玲香ちゃん。」
「ありがとうね!本当に何にもわからなくて・・・・。ついでに失礼にならないように文化とかも教えてくれないかな?」
「うん、俺でよければよろしくね!」
それからは他愛もないことを話していた。そうしたら、昨日いろいろしてくださった女性が駆け寄ってきた。
「*、#$+*!?(もう、何してたの!?)」
「何してたか、だって。」
すごい、通訳までしてくれるんだ!
「この男の子に勉強を教えてくれって頼んだ、って言ってくれない?」
「*+@#”+;@:(俺に勉強を教えてくれって頼んでたよ。)」
「&%*+!?*+‘>?(そうなんですか!?では、勉強部屋に招いても?)」
「@*。(いいよ。)」
「*+$?(今からご予定は?)」
「#”*。(ないですよ。)」
「*>‘*?(じゃあ、今すぐ来てもらっても?)」
「*+&%。(いいですよ。)」
「&%、<‘}!(お嬢様、帰りますよ!)」
「今すぐ勉強しなさいってことと帰れって。」
「玲仁君は一緒に行くの?」
「うん、今日は予定がないからね。」
「わかった。」
よし、勉強しよう。というか早く勉強して習得しないとヤバい。言語が通じない怖さは知ってたつもりだけどこの世界は他に類を見ないぐらい重要だ。がんばろう。
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