第9話 記憶のエディット作業 その1
今、オレとニニさんは、ターミナルプールの外周付近にある〈記憶編集ブース〉で、並んで漂い、さっきまで潜っていた〈アース〉の記憶を、編集・脚色・整理しているところだ。
忘れないうちにやらないといけないので、結構大変な作業だが、コレこそが最も重要である事も知っている。
今日のニニさんは縦に伸びる長まるの下半分を、お花畑のようにしていて可愛らしい。
ちなみにオレは大昔に流行った〈イエス・スタイル〉にちょっとだけアレンジを加えた〈YES YESスタイル〉だ。まぁ、白いワンピースにオヒゲに、冠はさすがにイバラは古すぎるから〈オレ〉と書かれた日本国旗のはちまきをしている。両手でVサインを出す責任があるデザインだ。
ちなみにニニさんには、お花を一番上から出さないようにする責任があると言っていた。
(オレもボディービジョンのデザインをもう少し自然寄りにしてみようかな。)
…と、感心していると…
「ダダくん、コレでしばらくは〈アース〉で会う事がなくなるなんて、ちょっと寂しいけど、しばらくはそれぞれの〈アース〉でお互い頑張りましょう!きっとうまくやり遂げられるわよ!」
「…確かにその通りだね、お互い頑張ろう。」
(いや、ごめん!逆にオレはそっちに興奮するタチなんだよねー。気持ちよくなってしまうというか…)
オレは変な〈念〉が漏れないよう、ちょっと緊張してしまう。
〈アース〉の中のニニさんに暴力を振るった振るったオレは、その後警察に数日拘留され、マンションに戻ると書き置きがあり、妻と子供が家財道具一式と一緒に出ていった後なのだと知った後、〈人生の最大深度の最大負荷〉を体験するスケジュールだ。
つまり、しばらくの間〈アース〉では会う事がなくなる事になる。でもこっちでは同じクラスで毎日会えるのだから、そこはどっちでもいいところだ。さすがニニさん、女性寄りの
それにしても問題は今回の記憶素材の密度だ。こんなに高密度の記憶素材は初めてだ。切れ目を一つ入れるだけで、結構な時間がかかる。
目の前の透明な机には、冬の海のような色をしたボウリング大の球体が置かれている。普段は水のような質感なのだが、今日はゴムタイヤのような質感だ。
このメモリーボールは、約1時間の〈シーン(場面)〉と〈感情〉が、ギュッと凝縮されており、これらを一旦バラす必要があるのだ。
エナジーカッターのレーザーを球体に照射しながら、オレは〈シーン〉と〈場面〉をつなぐ神経のような部分を慎重に引き剥がす。
コレを球の中心にある〈暴力シーン〉まで剥がしていかなければならない。
〈暴力シーン〉といえば、昨夜のママンさんとおじさん達は凄かったな。アレを見たあとじゃ、自分の暴力なんて児戯に等しい。上には上がいるという事だ。
(マズい!また興奮してドキドキが始まってしまう!良からぬ期待が現実を作り出してしまう前に、気持ちを切り替えねば!)
オレはレーザーメスの出力を上げた。
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