第64話 オレロとグラツィア

天狐達が屋敷に帰ってから数週間、オレロとグラツィアの距離が近いことに天狐は驚愕していた。

なぜなら2人はもともと天狐と婚約関係であったためなんでこんなに仲がいいんだろうと疑問に思っていたがエリザが話してくれた。


「あのエリザさん。オレロとグラツィアってあんなに仲が良かったんですか?」


「あなたが眠っている間にグラツィアが心配しててね、それを見たオレロが色々とやってあげたのよ。もともとオレロはああ見えて面倒みはいいからあなたが来る前からも仲は良かったのよ?」


「そうだったんですか、でも距離が近すぎません?」


「だってあの2人今は付き合ってるのよ?それにグラツィアも来てから半年は立っているし、全然不思議じゃないわ。むしろ2人ともあなたと婚約関係があったことが不思議なんだけど。」


「そうですよね、そっちの方が不思議です。でも付き合っているなら教えてくれたって…。」


「あら、2人から聞いてなかったの?」


「いえ、聞いてません。」


「だったら聞いてきたらどうかしら?」


「え、いや、いきなり聞くのはちょっと。」


「男でしょう?ビビらずに聞いて来なさい、元はと言えばあなたを心配してたんですから。」


「…そうですね、ちょっと聞いてきます。」


「頑張ってね、狐さん。」


エリザさんに言われたあと天狐はオレロの元に向かった。屋敷に帰ってきてからも騎士の訓練所に泊まることが多かったのでこっちに帰って話すの久しぶりかもしれない。

オレロの魔力を探知して声をかけに行く。


「お、オレロ、久しぶり。」


「天狐、久しぶりだな。どうかしたのか?」


「ちょっと聞きたいことがあってね、それに少し話したいと思ったから。」


「そうか、それで聞きたいことはなんだ?」


「ええと、それは。」


「言いづらいことなのか?」


「そうだね、周りに人が居ないと助かるかな。」


「それなら俺の部屋に行こう。」


「そうして貰えると助かる。」


2人はオレロの部屋に移動して話すことになった。


「それで、聞きたいこととは?」


「…グラツィアとの関係なんだけどさ、付き合ってるって本当?」


「そういえば、言ってなかったな。俺は今はグラツィアと付き合ってる。」


「そっか、おめでとう。」


「あぁ、ありがとう。恋仲になれたのは天狐のお陰だな。」


「そういえば僕が眠っている間にグラツィアに色々としてあげたんだってね。エリザさんから聞いた。」


「エリザさんが。でも俺はもともと面倒みはいいからな。それに俺は天狐は必ず目を覚ますと信じてたからな。そこまでのことはしていない。少し話したり一緒に居ただけだ。」


「それでもありがとう。」


「別に感謝を言われる筋合いはない。俺とグラツィアは元々天狐よりも一緒にいた時間が長かっただけさ、だから別に感謝しなくていいぞ。」


「それでもグラツィアとは婚約解消したから少なからず心にダメージがあったはず、しかも帰ってきたら新しい婚約者を連れてきた。僕はグラツィアになんて言えばいいかわからない。」


「天狐が帰ってきた時には俺たちは恋人関係にあった。だからそこまで気にする事はないと思うがしっかり話してくるといい、まだ帰ってきてから話してないんだろう?」


実は天狐とグラツィアは屋敷に帰ってきてから一言も話してなかった。オレロと恋人関係になったが、婚約解消後に新しい婚約者を連れてきた。これにグラツィアは少し心がモヤモヤして天狐に声をかけられなかった。天狐も同様に声を掛けづらかった。


「そうだね、あんまりウジウジ悩むのは駄目か。」


「大丈夫、グラツィアならしっかり話を聞いてくれるさ。」


「わかった、ありがとうオレロ。行ってくる。」


「ああ、行ってこい。」


天狐はグラツィアの元へ向かった。

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