第61話 ウエディングドレス2

アースランド達と別れた後、天狐は暫く景色を見ていた。


「いい景色だなー、ずっと見ていたい。でもなんでこんなに惹かれるんだろう、前の世界じゃ見ることが出来なかったからかな。まぁ、なんでもいいか。それにしてもいい景色だな。」


ブツブツと独り言を話しながら頭の中ではマイナスな思考を巡らせてしまう。


そうえいばさっきの話から僕はこのままずっと生きていけるのかな?そもそもいつ死ぬかすらわからないけど。この眼はよくわからないし特に文様については尚更だ。この世界に目に関する文献はないんだろうなー、今更調べてもしょうがないか。もしかしたら前の世界にはあったのかな?まーいいか。


目のことについては忘れよう。


…けれどもアースランドさんとは確実に別れが来る日がある、サクヒノラさんや屋敷の皆も同じだ。こればかりはどうしようも無い、寿命があるからだ。皆不死身になればいいのかな?よくわからない、でもどんな生き物にでも死ぬことはあるから一概に不死身はいいことではないのかもしれない。けれど僕まで死んだらヤマタドナが1人になってしまう、それは避けたいしそのためなら長生きしたい。どうしたらいいのかな、ヤマタドナは何とかするとは言ってたけど。


結局はこの眼次第って感じか。


天狐はうねりながら考えるもあることが頭に浮かび上がってしまった。


あれ、そういえば考えたことなかったけど、考えようともしなかったけどこの眼が原因ならもしかして、もしかしなくても眼をくり抜けばワンチャンある?潰せばいける?

あれ?これなら長生きできる気がする。今度2人に聞いてみよう、眼の替えあるかって。

…なんとかなるよね?仮に眼が見えなくなって能力も削がれても九尾だからパワーダウンがある訳じゃないし、そもそも自然界の魔力は自分でも集められるし、入れ替えとか便利なのは使えなくなるけど仕方ない。ずっと長く生きて行くために必要なんだ。


うーん。どうするかなぁー。あっ時間だ、戻らなきゃ。


そんなことを考えているといつの間にか時間になっていて天狐は慌てたみんなの元へ戻る。


「遅いよ天狐ちゃん。」


「ご、ごめんなさい。考えごとして、て。」


アースランドに怒られるが天狐はいつもより数倍、いや数十倍綺麗になったアースランドから目が離せなくなって途中で言葉が止まってしまう。


「どうしたの天狐ちゃん?」


「アースランドさん、凄く綺麗です。いつもより。」


「ふふ、ありがとう、天狐ちゃん。」


ウエディングドレスを着たアースランドさんを見るとその姿はとても美しかった。白ではなく黒のウエディングドレスを纏っていてあなた以外には染まりません、その意味がわかるように互いに視線が離せない。ずっとこのまま見つめていたいくらい。とても幸せな瞬間だ。時間を止めていたいくらい。


2人の距離は近くなり顔が近くなっていく、そのまま唇を重ねようとするが不意にその瞬間は終わってしまった。


「おい、なにを見つめあっている。キスまでしようとするなど、私たちに少しは顔を向けろ。ハブられている気持ちになるだろう。」


「そうですね、私たちも着ていますのでこちらにも感想を頂けると嬉しいです。」


ヤマタドナとサクヒノラが少しだけ不服そうにこちらを見ている。


「え、あぁごめん、2人とも綺麗だよ。」


「ふふ、ありがとうございます。」


「なんだその適当な答えは、もっとしっかり見ろ。味わうがいい、こんな高貴な姿そうそう拝めんぞ?」


「ヤマタドナはそんなに高貴なの?サクヒノラさんの方が高貴な感じがするけど。」


「私は龍だぞ!少しはなんかいい感じの反応しろよ!」


「だってサクヒノラさんは国王の娘だよ?気品もあるし。」


「くそ、言わせておけば。他に感想はないのか!?」


「「わぁ、すごーい。」」


「アースランドまで適当に言うな!」


「ふふ、仲が良さそうで羨ましいですね。」


「そうですね、めちゃくちゃ仲がいいですよ。」


「ずっとこのまま一緒に入れると良いですね。」


「はい。このままずっと、3人とも幸せに出来たらと思います。」


「それは期待してもよろしいのでしょうか?ふふ。」


「そ、そんなに期待はしないでくださいよ?」


「いえ、期待してますよ、お兄さん。」


「え、それってどういう…。」


「私、先日14歳になりましたから。」


「と、年下だったんですか!?どう見ても18歳にしか見えませんけど!?」


「え、気づかなかったの?天狐ちゃん。」


「え、アースランドさん逆に知ってたんですか?」


「だって国王様の娘だよ?知ってて当然だよ。」


「だって、どう見ても僕より年上にしか見えない 。」


「よく誤解されますね、ですが慣れていますので。」


「そ、そうなんですか。でもサクヒノラさんとはこれから仲良くなっていけるように頑張ります。」


「はい、こちらこそよろしくお願いしますね、天狐様。」


こうして3人はウエディングドレス姿を天狐にじっくりしっとり見てもらい、天星眼に焼き付けてあげた。

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