第58話 おはよう。

天狐が眠ってから3ヶ月が経った。特にイベントは起きず、アースランドはヤマタドナと特訓をしていた。

この国は平和そのものでする必要はないが、自分だけ弱いのも嫌で2人に追いつきたいと思っていた。特訓が終わったあとは天狐の所に行って様子を見ている。

しかし天狐が目を覚まし、2人は飛びついて天狐を抱きしめる。


「おはよう。あれ、どうしたの2人とも?抱き着いたりしちゃって。」


「よかったぁ、天狐ちゃんが目を覚まして。」


「え、どうしたんですか?アースランドさん。今日はデートですよね?準備しなきゃ。」


「準備も何も今日は動いちゃダメだよ!」


「え、なんでですか?お腹も空いたんですけど。」


「ダメ!暫くは流動食ね!胃が弱っているかもしれないし。」


「え、な、なんで?僕は元気ですよ?」

天狐が疑問に思っているとヤマタドナが答えてくれる。


「なんでって3ヶ月も眠っていたんだぞ。」


その言葉を聞くと天狐が唖然とし口を開いてしまう。

「え、本当に?記憶すらないんだけど。」


「何も覚えてないのか?私達の会話も。」


「え、うん。でも何も異変はないし大丈夫だよ。」


「全く、心配させやがって。」

ヤマタドナが荒く頭を撫でて髪を乱す。


「わわ、ごめんってヤマタドナ。」


「本当だよ!目覚まさないから怖かったんだよ?私。」


「アースランドさん…。ごめんなさい。」


「もういいよ!起きてくれたし、今のところ何ともないんでしょ?」


「はい、体も全然動かせます。なんなら凄く軽いんですけど。」

天狐は飛び起きて地面を跳ねるようにジャンプする。


「もしかして魔力切れで寝てたのか?」


「さぁ?ただ12時を回った瞬間に意識が途切れたよ?この眼のせいじゃない?」


「そうか、少し心配ではあるが問題は無いか。」


「うん、じゃあ明日デート行く?」


「それはダメだ」「駄目!」


「えー、そっかぁ。」


「さっきも言ったけど暫くは流動食ね!デートは今度してあげるから。」


「はい…。」


天狐が目覚めたことを国王に連絡し直ぐに皆が駆けつけるのであった。


「天狐様、お目覚めになったようでなによりです。」


「あぁ、えっと、ありがとうね、国王。」


「滅相もありません、ただ私たちは心配で。サクヒノラも心配しておりました。」


よく見るとサクヒノラの顔も心配そうにしていた。

「そっかぁ、サクヒノラさんもありがとうございます。」


「はい、おはようございます。」


「お、おはようございます。」


「お体はどうですか?どこか気分が悪くなったとかあれば言ってくださいね。」


「はい、今のところは大丈夫ですよ。」


「そうですか、良かったです。」


「天狐様が眠っている間はサクヒノラ様がお体をお拭きになっていたんですよ。」

セリクトが爆弾を投げてくる。


「え、そうなの?」


「はい…。ヤマタドナ様とアースランドは特訓に集中してまして、私がお体を拭かせたり着替えさせたりしていました。」


「そうだったんですか。え、もしかして下着まで?」


「はい、将来の旦那様なので…。」


「あの、顔を赤くしてもらわなくてもいいですか?こっちが恥ずかしいです。」


「す、すみません。」

サクヒノラさんが顔を赤くして謝罪をしてくるが話題を逸らさなきゃ。


「それにしても特訓?」


「あぁ、3ヶ月でだいぶ強くなったぞ。まだまだ訓練は必要だがな。」

よく見るとアースランドの体格が少し大きくなっている気がする。


「そんなに女の子の体をジロジロ見ちゃダメだよ天狐ちゃん、あとでじっくり見せてあげるからね。」


「み、見てないですよ!」


「あと数年もしたら氷の大陸には連れていけそうだな。」


「結構時間かかるんだね。」


「これでもかなり早いほうだぞ?私が教えていないとそもそもそこまでの高みにはいけない。ついでにセリクトやほかの騎士たちもだいぶ成長した、仮にほかの国と戦争しても負けないくらいだぞ。」


「ヤマタドナは教えが上手みたいだね、先生みたいだ。」


「ほめてもなにもでらんぞ?」


「そっかぁ、それならこの国は安泰だね。」


「ああ、仮に私がいなくても魔獣結界は作動し続けるしやり方も教えた。問題はないだろう。」


「じゃあもうしばらく滞在したらステリオスに帰ろうか、皆と随分あってないからね。」


「そうだね、家族にも顔を合わせてないし。デート行ったら帰ろうか!」


「はい、そうしましょう。」


「あの。」


「どうしました?サクヒノラさん。」


「デートに行く際、私も連れて行ってくれませんか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る