第48話 激戦の後で。
ヤマタドナとの激戦が終わったあとは天狐の誕生日パーティーを開催する予定だ。
国王のポケットマネーらしいけど気にせずに楽しもうと思う。準備はまだまだかかりそうなのでお風呂に入って先程の汚れを落とす。
お風呂に案内されたがヤマタドナと混浴になってしまった。
「お、天狐来たか。」
「あれ、ヤマタドナ?先に入ってたんだ。」
「まぁな。しかしここの風呂も気持ちいいな、ずっと浸かっていたい。」
「そうなんだ、じゃあ僕もさっさと身体洗おう。」
「せっかくだ、私が洗ってやろう。」
「ならお言葉に甘えて。」
ヤマタドナが正面に座り、頭から洗ってくれる。目の前に凄いものが揺れておかしくなりそうだけど理性は何とか保てていると思う。自室の風呂じゃないから変なことはしないつもりだ。
しばらく無言でいるとヤマタドナが声をかけてくる。
「天狐、気持ちいいか?痒いところはないか?」
「え、ああ、うん。大丈夫、」
「そうか。」
「うん。」
「「…」」
またしばらく無言になり、全身を洗われる。
「なぁ、天狐。」
「なに?」
「さっきの試合のこと覚えてるか?」
「ヤマタドナの技が凄かったよ?」
「それは当たり前だが、途中でお主の雰囲気が変わっただろう?」
「そんなことあった?あの後気絶して負けた記憶しかないけど。」
「そうか。」
「もしかして何かあった?」
「あぁ、お主の雰囲気がガラッと変わってな。まるで別人だった、力も技も全てが桁違いで私は手も足も出なかった。」
「…。」
「それに眼が赤くなり、口調もまるで違う。なにか心当たりはないか?」
「んー、ないなぁ。大体気を失うのは初めてだったからよくわかんない。」
「そうなのか。」
「うん、ヤマタドナより強い生物なんていなかったからね。」
「それは当たり前だ。龍族の中でも私が最強だからな。」
「龍族って他にもいるの?」
「数匹いるぞ、そのうち1匹は赤子だがな。」
「へぇー、そうなんだ。知らなかった。」
「天狐と力の差がありすぎるのだろう、だから気付いてなかったんじゃないのか?」
「そうかな?そうかも。」
「まぁ、気が向いたら連れて行ってやる。結婚報告しにな。」
「それは面白そうだね、でも龍族と結婚しなくて良かったの?」
「アイツらが私より弱いからな、する気は起きなかった。」
「でも僕もヤマタドナに負けたよ?」
「それは天狐がハンデありだからだろう、尻尾の2.3本は出しても良かろうのに。それに天狐の雰囲気が変わった時は手も足も出なかったぞ。」
「出しても数本じゃ勝てないって。さすがに7本以上じゃないと厳しいよ。けど雰囲気変わった時って僕強いんだ。」
「そうか、しかしあれはやばかったぞ。」
「どのくらい?」
「天狐がヴィカミオと戦った時よりやばいと感じた。」
「それはやばいね。でも僕もヴィカミオの時も100%全力かと言われればそうでも無いしなぁ。」
「いや、尻尾がない状態であれはヤバいぞ。もし赤い眼の状態で尻尾を出されていたらさすがに私は死んでたな。」
「そっかー、じゃあ気を失わないように気をつけないとね。また出てきそうだし。」
「そうだな、それがいい。私でも手に終えるかわからんからな。」
「肝に銘じておくよ。」
「あぁ、ならさっさと風呂からあがろう。パーティーがある。」
「そうだね、初お酒が楽しみだよ!」
「そんなに楽しみなのか?」
「だって飲んでみたいじゃん。」
「全く子どもか。」
「子どもだけど?」
「そうだったな、ガキンチョ。」
「…なにその言い方、200歳。」
「…まぁ、安心しろ。天狐が酔いつぶれたら介抱してやる。」
「それは先にアースランドさんに言ってあるから心配しなくてもいいよ。」
「なに?」
「だから安心してね?アースランドさんとはイチャイチャしてくるよ!」
「な、私も混ぜろ!」
「残ねーん。予約済です!」
「私は勝者だぞ!?」
「じゃあ着替えて先に行ってるね!」
「あ、おい!…全く、子どもだな。」
ヤマタドナも風呂から上がって着替える。
…しかしあの時の天狐は本当に別人だった。誰が何を言おうと別人だ。もしかしたらあいつが天狐の未来を見せないようにしてるのか?
だとしたらなんのために。それにアースランドに関する未来も1部見えない、天狐絡みか?
その見えない未来の先が最悪の事態だったらどうする?何が起こる?あいつには何が見えている?私は何が出来ることはないのか?
…しかし考えても仕方ない、天狐のために私が何とかするか、そうするしかないのだろう。
その一抹の不安を抱えながらヤマタドナもパーティーに向かった。
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