第47話 赤い天星眼
ヤマタドナが全力の魔力を込めて迫ってくる。
また視界から消えて目の前に現れる。
その瞬間に魔法を出す。
「今だ!黒死反転!」
黒死壊系の応用技で吸収しながら放つわけではなく逆に反転して相手を吹っ飛ばす技。込める魔力量に対して防御力も上がっていく。
しかし相手の魔力が自分より大きすぎると失敗する。相手がヤマタドナだったので悪手だった。
「無駄だ!」
「くそっ!」
再び飛ばされたが直撃は免れた、しかし蓄積したダメージがひどい。天星眼の回復が追い付かない。これはまずい、意識が沈んでいく…。
天狐は何とか武器を持っているが膝をつき、身体が横になってしまう。
ダメかも、これは僕の負けだ。
“俺と変われ。”
しかしどこからか言葉が聞こえたのか天狐は意識を手放した。
「…やはり私のほうが戦闘経験は上だ。まだまだだったな。」
「…。」
天狐の意識はないように見える。ヤマタドナは勝ちだと確信し、審判にジャッジを求めようとした。
「今度こそ勝負あったな。おい、審判。」
「は、はい!この勝負ヤマタドナ様の…。」
「まだだって言ってるだろ!」
天狐の声が審判を遮り闘技場内に響く。ぐったりしていたはずが何事もなく立っている。
…いつの間に回復を、この一瞬でか?
ヤマタドナは疑問に思い声をかける。
「まだやるつもりか?私は十分だが。」
「ああ、俺は負けたくないからな。」
天狐の性格と眼が変わり赤色に変わる。
「おい、様子が変だぞ。何があった。」
「気にするな、少し配信を止める。黒死濃霧。」
天狐?が配信を止め、あたり一面を暗くして二人きりにする。
「これは?」
「さぁ続けよう。第二ラウンド開始だ。」
「…!」
天狐が一瞬で詰め寄り先ほどとは全く変わった様子になる。
「な…!先ほどとは全く違うぞ!」
ヤマタドナは驚き動きが乱れる。
天狐は気にせず攻撃を続ける。先ほどよりも圧倒的で攻撃が重い。
「くそ、重い!」
天狐は更に攻撃速度を上げ、ヤマタドナを吹っ飛ばす。
「ガハッ…!」
…天狐もまだまだ身体の使い方がなってないな。
「おい、終わりか?立てよヤマタドナ。」
「…なんて強さだ、先程とは比べ物にならない。それに性格も全く違う、あの赤い眼が原因か?」
「何を言っている、続けるぞ。」
天狐が再び攻撃を仕掛ける。
ヤマタドナは必死に抵抗するが歯が立たない。
再び魔装拳劇を繰り出すも軽く躱されてしまう。
自分自身を小さくし、見えない位置から魔法で攻撃するも黒魔刀により無効化される。
「…しっぽ無しでここまで化け物とはな。一体何があった…。」
攻撃を辞めてしまい足が止まってしまう。
「何度も技を出せばそれにあった対策も可能になる。それに今の俺には魔法は効かないから必然的に肉弾戦になる。」
「くそ。ここまでか…?」
「もう終わりでいいか?」
「…おい天狐。」
「なんだ?」
「お前は天狐か?」
「そうだ。」
「…天狐はそんな言葉遣いはしない、お前は誰だ?」
「俺は冥途天狐だ。このまま勝負を決めようと思ったが時間だ、お前の勝ちだな。」
「何を言っている!?」
「…じゃあな。」
そういうと天狐は武器を落とし黒死濃霧を解く。少しすると天狐が目を覚ます。
「あれ、武器落としちゃった。僕の負けだね、ヤマタドナ。」
「…おい、お前は天狐か?」
「え、そうだけど。何かあった?」
「…いや、なんでもない。」
元に戻っている。眼の色も赤色では無い、あれは一体誰なんだ?
「なんか途中で記憶が無くなったんだけど負けちゃったみたいだね。」
「…ああ、私の勝ちだな。」
「あーあ、能力はわかったんだけど対策方法を見誤っちゃったな。自分自身を小さくすることができるよね?だから気づくのも遅くなっちゃった。いつもは尻尾も出してるから魔力量間違えちゃったよ。」
「確かにそうだ、よくわかったな。」
「でも負けは負けかぁ、次は勝つからね。」
「ああ、負けないぞ。」
「しょ、勝負あり!勝者はヤマタドナ様!」
審判が試合終了の合図を出し、観客が沸き起こる。
最後は何があったかわからないが皆盛り上がっていた。
天狐達は控室に戻り、アースランドさんが駆け寄る。
「二人ともお疲れ!ヤマタドナすごかったよ!天狐ちゃんに勝つなんて。」
「さすがに能力を使えない天狐には余裕だな、まぁ私も全力は出したわけではないが。」
「アースランドさん…。抱っこして。」
「ほらおいで、天狐ちゃん。」
アースランドに抱きつき顔を埋める。
「おい、私にじゃないのか。」
「なんで勝った人の胸に飛び込まないといけないんだよ。」
「なんでも好きにできる権利があるだろう?」
「それは今じゃないよね!?敗者の気持ち考えてよ!?」
「そうだよ、ヤマタドナ。私が天狐ちゃんにご指名されたからね!」
「ずるいぞ…。」
「でもヤマタドナ、今度は氷の大地で戦おうよ。全力で。」
「ああいいぞ、その時は力を押さえなくていいからな。」
「それは楽しみだね。」
「ヴィカミオが泣くかもしれんがな。」
「終わったらまた僕が修復すればいいでしょ。」
「私も連れてってほしいな~。」
「駄目だ。」
「なんで?」
「力が足りん、せめて今日の天狐くらいには勝てるようになってもらわんとな。」
「じゃあ私も特訓する、必ず追い付くから。」
「それは楽しみだな、私が稽古をしてやろう。」
「え、やったぁ~!天狐ちゃん楽しみにしててね!」
「わ、わかりました。」
「…そろそろパーティーだぞ、お前たち。いちゃつくのは程々にして着替えておけよ。」
いつの間にか居たサンドレスに注意された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます