第40話 出発まで ヤマタドナとデート
二人は目的無く街に出かけ、時間を潰す。ただヤマタドナはあまり話さず、しばらく無言状態だった。
その後は歩きながら何をしようかと相談しているところ時刻が12時になったのでお昼ご飯を食べに行く。
「何が食べたい?」
「なんでもいい。」
「それを言われると困るんだけど。」
「…なら肉だ。」
「じゃあステーキでも食べに行こう。」
「そうだな。」
二人は淡々と会話をしながら目的地のステーキ屋まで歩く。おそらく何か考えているのだろうか、それとも言いにくい内容なのか。疑問に思いながらも目的地に到着し、店の中に入る。
「メニュー何にする?」
「そうだな、サーロインだ。」
「僕もそれにしよう。」
注文ボタンを押し、店員にメニューを頼む。今日は何かいつもより静かでやはり何かあったんだろう。
「何かあった?」
「なにがか?」
「いつもより静かだし。」
「私はこんなもんだぞ。」
「いや、今日は様子がおかしい。見ててわかる。」
「そうか?」
「そうだよ、あとで何かあったか聞くね。」
「仕方ないな。」
「ありがと。」
「お待たせしました!サーロインステーキです!」
注文していたステーキが届く。2キロくらいの量で満足食べられそう。
「おいしそうだね。」
「うむ。これなら満足できそうだ。」
「「いただきます。」」
肉が柔らかい。スウーっと切れて口の中にほおばる。肉汁が口の中に溢れてとてもおいしい。口の中で溶けてすぐになくなる。
「おいしい。」
「確かに美味しいが、私は固いほうが好きだな。何も考えず頼んでしまったのが駄目だったか、次来るときはもっと固めな肉を食べよう。」
「そうなんだ、じゃあまた一緒に行こうね。ここ美味しいし、量もあるから満足できるよ。」
「そうだな。」
二人は食事を終え、またぶらぶらと街中を歩く。二人はご飯以外のことはよく知らず、特に何もせずにただ歩き回って気が付いたら景色のいいところまで来ていた。そこは山のほうで街中から結構外れている。ただ人はおらず、景色もいいので隠れスポットなのかもしれない。
「ここ、いい景色だね。誰もいないし。」
「そうだな、悪くない。」
「それで、なにがあったの?」
「…そうだな、結婚についてのことでだ。」
「結婚について?」
「ああ、私はオレロに変なことをしてしまって良かったのだろうか。」
「それって一昨日くらいに言ってたやつ?少しいじったって。」
「そうだ、お主がオレロとはそういう関係ではありたくないと思ってしまってな。少し魔法をかけたんだ。オレロには天狐に断られたら自分は身を引けという魔法をかけてな。お前は本当に天狐と結婚したいのかと、アースランドの時間を奪ってまで居たいのかと。結果は天狐が断り婚約は解消された。ただそれを相談もせずにかけてしまって良かったのかと思ってな。」
「そうだったんだ。でも僕は確かにオレロとは結婚はしたくない。だって僕たちは♂同士だし、子を作ることができない。いくらヤマタドナに♀にされようと僕はそれが納得できないからね。だからそれについてはありがとう。正直助かった。」
「そうか、それはよかったがグラツィアは…」
「グラツィアさんに関しては何も言えないけど…。ヤマタドナが魔法をかけていないとはいえ自分から身を引いたんだ。きっと僕がグラツィアさんに対して恋愛感情が持てなかったからだよ。それにアースランドさんとの時間を削ってしまうとも思ったのかもしれない。だから僕はヤマタドナを責める気はないからね、早かれ遅かれこうなることになると思う。両思いじゃないと結ばれないのは仕方がないことだと思うし、現に僕は二人を仕事仲間や友達としか見れていない。」
「そうか。」
「うん。でも安心して、ヤマタドナとアースランドさんには恋愛感情があるから二人とは絶対結婚するよ。」
ヤマタドナにハグをして甘える。
「ふふ、それを言われると安心だな。」
ヤマタドナが抱き返し、しばらく離れない。
「それとこれをあげる、ちょっと待ってね。」
ポケットからアクセサリーを取り出し、ヤマタドナの首につける。
「これはなんだ?」
よく見ると加工された木が付いている。形は丸だけど三日月の形に色を塗っている。
「僕の術式を閉じ込めただよ、やばくなったらここに魔力を込めてね。僕に信号が送られるからすぐに駆け付けることができる。」
「それは便利だな、作ったのか?」
「うん、なんでもいいんだけどそこらへんで買ったアクセサリーに術式を書いてるだけだよ。」
「そうか、ありがとう。」
「うん、どういたしまして。でも信号が僕に送られてきてもそこに瞬間移動できるわけじゃないからね。まだ時空間魔法については練習中だし。」
「なるほどな、ただの連絡手段みたいなものか。」
「そういうこと。一応持っててね。」
「ああ。ありがとう。」
「じゃあ帰ろうか、来て。」
ヤマタドナをお姫様抱っこし空へ飛び屋敷に向かう。
「お、おい、いきなりはやめろ。恥ずかしいだろう。」
「別に見られてるわけじゃないからいいじゃん、それにいっつも乗せて貰ってるからね。これくらいはするよ。」
「ふん。」
少し照れながら返事をする。
「それと今日は一緒に寝ようね、さっきのでまた甘えたくなった。」
「全く、本当に甘えん坊だな。」
「本当に、なんでだろうね。」
こうして二人のお出かけは終わりを告げる。
屋敷につくとお姫様抱っこをアースランドに見られずるいと言われた天狐達である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます