第37話 出発まで 一度曲がったものを修正する。

ヤマタドナと二日間一緒に寝た後はオレロと寝る予定だが、まだ何も伝えていない天狐だった。

夕食後、お風呂に入りそのことを伝えるとオレロは激しく喜んだ。


「今、なんて言った?天狐。」


「だから数日ソアレフ領に行っていないから、二日間は寝てあげるって言ってんの。話聞いてる?」


「いや、聞いているが、まさか天狐からお誘いが来るなんてな。びっくりした。」


「そっか、それならよかった。じゃあ、あとでね。着替えたら部屋行くから。」


「…わかった。部屋を綺麗にしておこう。」


「じゃあよろしくね。」


「ああ…。」

そういうとお風呂を上がり、部屋に戻る。


仕方がなくお風呂上りにオレロの部屋に向かうのであった。


「オレロ、入るよ。」


「ああ、どうぞ一緒に寝よう。天狐。」

オレロがおいでとベッドから手招きする。なんでこうなるんだあ。

仕方がないとベッドに潜り、横になる。


「あ、可愛い。シャンプーのいい匂いだ。」

オレロが抱きしめながら匂いを嗅ぎ、堪能している。


「それはちょっと、気持ち悪い。」


「す、すまない。だがしかし、耳も触り心地がいいな。」


「んっ、今日だけだぞ。」


「なら今日は堪能しよう。」


しかたなく耳を触らせ、しばらく堪能させてあげた。


しばらく無言だったがオレロが口を開く。

「しかし、まさか天狐と結婚するとはな。」


「いや、心の中では認めてないぞ。」


「そうなのか、いや、でも俺もそれでいいかもしれない。」


「あんなこと言っておいて今更過ぎない!?」


「いや、そうなんだが。」


「なんで急にそんなこと思ったの?」


「冷静に考えたら俺は天狐と結婚するべきなのは違うと思う。今まさにアースランド様にも失礼じゃないだろうかと思ってな。あの人と天狐のいる時間を減らしてしまっている。4人もいたら大変だろう。たまに一緒に食事をして、風呂に入る。これだけでいいと思ってしまった。」


な、なんてことだ。あのオレロがまともな感性を。感動してしまった。


「確かに僕の本命はアースランドさんだ。それにオレロとは友達としてならいいと思っているし、それに4人は多い。」


「なるほど、友達か。そこは考えていなかった。執事とメイドの仕事の関係ではなくて。」


「そうだよ、友達ならいいだろう?」


「ああ、俺との関係は友達になろう。親友だ。」


「でも親友は耳を堪能しないものだと思うぞ。」


「エッチなことはしていない。」


「いや、耳を触るのはえっちだね。」


「そうか、ではそれもやめよう。」

少し残念そうに耳から手を放す。ただ抱きしめられたままだからなんだこれはとなる。


「とりあえず、二日間は一緒に寝るからそれまでいいよね。この関係は。それまでは耳は堪能していいからね。終わったら婚約は解消だ。」


「それなら俺も十分だ、その代わり二日間は俺といてくれ…。」

また耳を触りはじめ、堪能する。


「わかったよ。」


「ありがとう。」


こうして二日間はオレロと一緒に寝て、後日サンドレス様に報告をしにいった。

サンドレス様はひどく驚いていたが、納得したようで婚約を解消した。


しかし、どういう心の変化なのだろう、魅了に掛かっているなら普通ぐいぐい来るよね?男同士だから?一度魅了を消したから?

原因はわからないままだけど、急にまともになってびっくりした。


後日ヤマタドナに聞くと「私が少しいじった。」ときたのでこれ以上聞くのはやめた。

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