第36話 出発まで ヤマタドナ。

出発まで7日あるので二日間ずつヤマタドナとオレロ、最後の三日はグラツィアと寝ることに決めた天狐。今日と明日はヤマタドナと寝るのでどこに行くか決めた後、夕食とお風呂を済ませ、ヤマタドナの部屋に行く。


「ヤマタドナ入るよ?」

ノックをするとヤマタドナが扉を開け、こちらに来いと手招きをする。言われるままにベッドに腰かけ、寝る準備をする。


寝る準備と言っても毛布の中に入るだけ。毛布の中に入るとやっぱり腕枕をされ、頭を撫でられる。そこまで甘えん坊じゃないんだけどな。そんなことを思っているとヤマタドナが口を開く。


「暖かいな。」


「どうしたの急に。」


「いや、なんでもない。」


何かありそうなので聞き出してみよう。とりあえず頭を撫で返してみる。

「…。」


「おい、なんで無言で撫でる?何かあるのか?」


「それをいうならヤマタドナのほうだよ。少し様子がおかしいからね、なにか心配事でもあるんじゃないかってね。」


「別に、なんでもない。」


「それは何でもある顔だね。」

ヤマタドナにキスをし、距離をかなり近づける。


「お、おい!近いぞ!」


「別にいいじゃん、何か問題?」


「いや、それは別に問題ではないが、近すぎる。」


「話してくれないともっと近づくからね。朝までキスするよ。」


「わ、わかったから、離れろ。」


「はいはい。で、何があったの?」


「…黒文様の件でな、少し考えている。」


「え、なんで今さら?」


「いや、今日のことでな。もし、天狐が結婚式まで生きていけないのならお主のウエディングドレス姿が見られないと思ってな。やはりお主の未来は見えないし、私ではどうすることもできないのかと。部屋に帰ったら考えてしまった。」


「そっか、でも黒文様が全身を覆ったって死ぬかはわからないんでしょ?だったら考えても仕方のないことなんじゃない?」


「それはそうだが、私はその力が怖い。もしお主がその力を制御できなくなって、敵になると私とヴィカミオだけでは勝てない。おそらくこの世界自体がなくなるはずだ。」


「それは問題だね、どこかで僕が死ねればいいんだけど。そもそもいつこの力が制御できなくなるかすらもわからない。」


「お、おい!いきなり死ぬとか言うな。そんなことされたら私が困るだろ。」


「ごめん。でも、もしそうだとしたら、僕はこの世界のために死ねばいいと思う。それが一番手っ取り早い。もし僕が死ねなかったら殺してくれ。」


「私がいるからそんなこと言うな、私は絶対にお主を死なせん。ずっと長生きしてもらわなければ困る。私が将来、一人になるだろ。」


「そっか、じゃあ守ってもらおうかな。これから先、僕が生きていられる時間ずっと。でもこのことはほかの皆には内緒だよ。きっと現実を受け入れられないからね。」


「わかっておる、二人きりの秘密だ。」


「そっか、それなら安心だよ。」

天狐が体制を変え、ヤマタドナに腕枕をして、頭を撫でる。


「お、おい急にどうした。」


「別に、いっつもしてもらったりだから今日はしてあげようと思ってね。されるのも悪くないでしょ?」


「確かに、悪くない。」

そんなこと言いながらヤマタドナは顔を埋める。


「ヤマタドナって結構甘えん坊だよね。アースランドさんといるときは結構甘やかしてもらってるし。」


「な、なぜそのことを知っている!」


「え、だってなんでもしてもらってるじゃん。体洗ってもらったり、ドライヤーで髪を乾かしてもらったり。アースランドから結構話聞くよ。」


「お、己、アースランドめ。」


「僕的には可愛い一面が知れてうれしいけどね。甘えん坊さん。」


「恥ずかしいことを言うな。全く。大体、天狐のほうが甘えん坊だろう。」


「わぁあぶ。」

ヤマタドナが腕枕を仕返し、最初の体勢になる。しかし気持ちいいので腕をヤマタドナの背中に回し、太ももの間に足を入れる。


「ふふ、甘えん坊め。」


「はいはい、甘えん坊さんですよ。」

先ほどより、少し濃厚なキスをして胸に顔を埋める。


「んっ、本当にお主は胸が好きだな。」


「ヤマタドナが魅力的すぎるのがいけないんだ。」


「ほう、それは私が悪いな。どれ、そのお詫びに私の体好きにしていいぞ。」


「…ふーん、わかったよ。でも、僕の体も好きにしていいよ。」

そういうと服を脱ぎ、ヤマタドナに迫る。


「覚悟しろよ、旦那様。朝まで寝かせないからな。」

ヤマタドナも服を脱ぎ、お互いが密着する。


こうして二人は夜を満喫し、朝まで胸を吸われ続けて失神したヤマタドナを見て翌朝謝る天狐だった。


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「ご、ごめん。ヤマタドナ。」


「いや、別に、怒ってない、ぞ。」


「そっか。なら、あと少し。」


「ああん!も、もうやめてくれ!」

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