第33話 一週間ぶりのメイド服。
屋敷に帰って来て五日後。天狐は再びメイド服に袖を通す。これからまた仕事に取り掛かろうとするけど、国自体の状況が変わっていた。
それはヤマタドナが来たことにより、ヒィスト王国全体がヤマタドナの加護に守られることになった。ヤマタドナが魔獣結界を張り、この国の魔獣は大人しくなるそうで、かなり平和になっていくだろうとされている。無人島では魔獣結界は張ってなかったらしい。しかしおかげで騎士は魔獣や国境対策だけではなく、町中を徘徊し、危険な地域の警備も担うことになった。たった数日でここまで仕事が変わり、騎士たちも忙しそうだった。けれどおかげでアースランドさんも屋敷に帰ってくる日が多くなりそうで嬉しい。
ちなみに屋敷での僕の仕事は何もなくなり、役所の手伝いだけになってしまった。無人島に行っているときに言語はマスターできたのでもう不自由に過ごすことはないかもしれない。本も読めるようになったので、今度ラウラさんと本を一緒に読もうかなと考えている。ちなみに役所の皆には僕が来なかった理由は遠出しているからと聞いているらしい。知らないなら知らないでこちらとしては都合がいい。
これから食堂に行き、朝ご飯を食べたら役所へ向かう。今日から再スタートの生活を始める。
久しぶりに行くと、なんか緊張するな。
「おはようございます。」
役所に着き、挨拶をするとフェデリカさんが膝の上にのせて頭を撫でてくる。
「おはようございます~。元気でしたか?狐ちゃん。」
「はい、お久しぶりです。あと、なんでいきなりそんなことするんですか?」
「それは狐ちゃんが可愛いからですよ~。」
「僕、婚約者いるので、そういうのはちょっと。」
フェデリカの膝から飛び降りる。
「あら~。そうだったの?」
「ええと、この前できました。」
「それは、おめでとうございます~。」
「あ、ありがとうございます。」
「おっす!おはよう天狐!」「おはようございます。天狐さん。」
二人が会話終わりにちょうど出勤してくる。
「おはようございます。」「おはようございます~。」
「にしても久しぶりだな!元気にしてたか?」
「はい、元気でした。」
「少し明るくなりましたね。天狐さん。」
「はい、少しだけ人見知りが解消されました。それと文字が読めるようになったので今度一緒に本読みましょう。」
「もう読めるようになったのですか?すごいですね、ぜひ読みましょう。」
「はい。」
「それより二人とも聞いてください~。天狐ちゃん、婚約したんですよ~。もうお膝の上に、乗せられなくなりました~。」
「な!なんだって!本当か天狐!」「おめでとうございます。」
「はい、ありがとうございます。二人とも。」
「で、相手は誰なんだ?」
「えっと、アースランドさんと、龍族のヤマタドナ、グラツィアです。」
オレロ、君の存在は消しておくよ。
「マジか!すげえ面子だな!ちゃんと幸せにしろよ!」
「あ、ありがとうございます。」
「でもこっちに来て1か月くらいだろ?ずいぶん早くないか?」
「なんか、流れと勢いでこうなりました。」
「それはすごいですね。」
「いや、全部自業自得なんで、なんとも言えないです。」
「そうなんですか、でも頑張ってください。」
「はい、頑張ります。」
「じゃあそろそろ仕事始めましょうか~。」
「「「はい。」」」
こうして今日から仕事に取り組んだ。しばらくはこの生活が続き、また別の物語が動き始めることになる。
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