第32話 龍と狐 一度ねじ曲がったものは戻らない。
朝になり、屋敷に帰る準備をする。
ヤマタドナもついてくることになり、荷物を集める。
しかし、天狐は疑問があるのでヤマタドナに問いかける。
「ヤマタドナ、畑はどうするの?」
「畑はそのままにする。誰かが来て勝手に耕してるだろう。気にすることはない。」
「そっか、それなら大丈夫そうだね。荷物はそれだけ?」
目に入ったのは服のみでほかは何もない。
「これだけだ、屋敷に行けばなんでもあるだろう。それにこの私がヒィスト王国に属するのだ。おつりがくるぞ。」
「確かにもうヒィスト王国一強の時代だね。天狐ちゃんもいるから騎士もいらないかも。」
確かにヤマタドナがステリオスに来ればこの国は安泰だ。いるだけでこの国全体が結界で守られるから戦争なんて置きそうもない。いいね。
「そうだ、それに私は死ぬことがないから永遠に守ってあげられるぞ。」
「それは心強いね。これから国を守ってね、ヤマタドナ。」
「ああ、任せておけ。」
雑談をしていると特にない荷物も準備することができたのでヤマタドナが龍の姿に戻り、ステリオスに帰還する。屋敷に着くと、皆が心配しながら天狐に駆け寄って来た。龍に怯えている人もいて、サンドレス様もびっくりしていた。
「天狐、お帰りだ。」
オレロがくっついて離れない。あれ、魅了は一回消したはずだけど、なんで?
「オレロ、ただいま。いきなりなんで抱き着くの?」
「それは天狐が可愛いからだ。ああ、いい匂いもする。」
「わ、わかったから離れて…。」
「それは断る。それにしても、少し見ない間にずいぶんと変わったな。人見知りが消えている。それにしても耳はモフモフだ。」
「んっ!離れろ、オレロ!」
アスカニオに向かってオレロを投げ飛ばす。
「うお!こっちに投げるな!」
アスカニオは避けてオレロが地面に刺さる。
「だ、だれか助けてくれ。」
「自業自得よ、そこで反省してなさい。オレロ。」
エリザがオレロに厳しい言葉を投げつける。
「それにしてもどこに行ってたのかしら、天狐。ずいぶんと私たちに心配させて。わかってるのでしょうね?」
「えっと、ちょっと気になていたドラゴンに会いに行ってました。そしたら、その…。」
「なに、聞こえないわ。なんですって?」
「すみません、心配かけました。」
「わかってるならいいけど、なんで龍がいるの?説明しないさい。」
「えっと、それは…。」
「天狐がいじけて私にところに来てな、同衾をしたのだ。それで責任を取ってもらおうと婚約してここに帰って来た。」
ヤマタドナが淡々と説明する。なんか釈然としないけどいいか。
「え!天狐結婚するの?おめでとう!。…え?」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
「は?」
屋敷のみんなとサンドレスも?になる。
「どういうこと?前の世界の手掛かりを探しに行ったんじゃなくて、お嫁さん連れてきたの?」
「まぁ、そういうことになりますね、マヤさん。」
ビンタされ、説教を受ける。
「本当心配したんだからね!グラツィアだって全く元気なかったんだよ?」
グラツィアのほうを見ると少し泣きそうな顔になっていた。
「ええと、ごめんなさい。グラツィアさん。」
「な、なんで。心配したのに。出て行ったと思えば、結婚するだなんて。私のことないがしろにしてない?私の気持ちはどうなるの?」
「え、でもあの時、変な気分じゃなかったんですか?」
「それはそれだよ。でもやっぱり、私は天狐ちゃんのことかっこいいと思って…。」
「そう、だったんですか…。」
「だったら天狐、責任をとれ。グラツィアを娶れ。」
サンドレスがいきなり解決策?を出してくる。まだグラツィアさんには何もしてないじゃないか。
「お父さん。それはいいけど、グラツィアちゃんは第三夫人になるよ?」
「それは、どういう意味、ハッ!まさか!」
「そう!私が第一夫人だよ!でヤマタドナが第二婦人。」
「おい、天狐よ。」
「な、なんですか?サンドレス様。」
「…娘を頼むぞ。それと他二人もだ。」
「わ、わかりました。」
「グラツィアもそれでいいか?」
「領主様がそういうなら、私は大丈夫です。」
「え、決定?僕の意思は?」
「何か言ったか?」
「いえ、何も…。」
「待ってください!領主様!」
地面からオレロが復活したのか、領主になにか不満があるそうだ。
「なんだオレロ、言ってみろ。」
「だったら私は天狐の夫にしてください!グラツィアだけずるいです!」
皆が唖然し、しばらくの間、場の時が止まる。
「え、は?オレロ、何言ってるの?冗談はやめてよ。」
これはどういうことなのオレロ?これ以上変にかき回さないでくれ。
「いいじゃないか、天狐!性別など些細なものだ!」
オレロの顔が怖い。いや、問題だろ。子供作れないよ?
「確かに、些細なことだ。その時は私が天狐の性別を変えてやろう。」
ヤマタドナまでもやばいことを言う。
「待って、ヤマタドナ。そんなことできるの?」
「ああ、出来るぞ。オレロと子作りしたらお主も妊娠するぞ?」
「え、それはちょっと、ね…。」
「サンドレス様はさすがにこれは無しですよね?」
「…好きにするといい、私は何も言わん。」
「え。」
「なら、これからよろしくな。天狐。」
「は?マジで言ってるの?」
将来、妻三人、旦那一人を娶る天狐になった?
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