第27話 龍と狐 今日はデート?

朝日が昇り、日差しが目に入り、意識が覚醒する。隣にいる将来の旦那はまた私の胸に吸い付き寝ている。昨日あれだけのことをしておきながら、まだ足りないと?いや、これはただの甘えか。ただこの甘えはさすがにない。全く、この旦那は。いい加減、くすぐったいので起きてもらおう。


「おい、起きろ。天狐。朝だ。」


「ん、おはよう、ヤマタドナ。」


「おはよう。相変わらずだな。スケベな旦那。」


「え、ああ、ごめん。また。」


「そ、そんなこと気にするか、私はドラゴンだぞ。」


「そっか、よかった。」


「起きたら、支度だ。今日こそデートに行くぞ。」


「わかったよ。じゃあ準備しよう。」


2人は顔を洗い、着替えて出発の準備をする。正直少し、楽しみだ。


「そういえばヤマタドナは金持ってるの?僕無いけどさ。」


「ああ、持ってるぞ。40年前の金だ。人に貰ったことがある。」

そういうとどこからかお金を出し、見せてくる。しかし、綺麗に保存されており、これなら使えそうだと思う。


「へぇ、綺麗に保管してあるんだね。これなら大丈夫だと思うけど。この硬貨はステリオスで使ってたし。多分どこでも使えるよ。」


「そうか、それなら使えるのだな。しかし、お主は持っておらぬか、これだけで足りるのか?私はこの1枚しかないぞ。」


「え?ほんとに?じゃあ何も出来ないじゃん。観光でもする?それしかないよね。僕は屋敷の部屋に置いてて持ってきてないよ。」


「それなら取りに行けばよかろう。まだ旅立って数日、帰っても大丈夫なはずだ。」


「いや、帰らない。だから今日はステリオス以外に行こう。正直誰とも会いたくないから人がいない場所に行きたい。」


「頑固者め。まぁ、いいだろう。天狐の為だ、今日は誰もいない土地に行くか。」


「ありがとうね、ヤマタドナ。」

頭を撫でてあげると顔を赤くしてる。やっぱり可愛いとこあるじゃないか。


「ふん!私は龍だ。このくらい当たり前だ。さぁ、行くぞ。出発だ。」

そういうと龍の姿に戻り、背中に乗る。大きくて暖かい。寝ていいかな。


こうして飛び立ち、人がいない氷の大地に向かう。そこにいるのは危険な魔獣だが、特に気にならない。龍と九尾からすれば、驚異にはならないだろう。

何事もなく氷の大地に到着し、ヤマタドナも人型になる。極寒だが2人とも何事もなく歩き、氷の大地を散策した。


「ほんとに氷の大地だね。あ、見て見てペンギンだよ。本で見たことある。」

少し感動してる。前の世界では簡単に移動することが出来なかったから、こうして自由に行けることが嬉しい。


「ペンギンを見たことないのか?全く、やつらはかわいいぞ。仲間殺しだけどな。」


「仲間殺し?それってどういうことなの?」


「やつらは海の中に天敵がいる。それを知るために仲間を落として天敵の確認をする。そうするとやつらは海に飛び込み、餌を取りに行く。こうすることで最小限の被害になるからな。」


「そうなんだ。物知りだね、ヤマタドナ。でも仕方ないのかな、ペンギンは魔力を感知することが出来ないってことは、弱点にもなる。どんな生物にも魔力は流れてる。弱肉強食だね、でも数が多いのはなんで?魔獣に食べられたりしないの?ここの魔獣、意外と強そうな感じはするけど。」


「ここの魔獣は強いからな、私たちに近い存在だ。私は本来食事を必要としないが奴も食事をしない。永遠に生きることが出来るからな、私とここの魔獣は魔力の塊の存在でもある。」


「え、そうなんだ。だったらなんで食事してるの?」


「この世界の食べ物が美味しいからに決まっておるからだ。それに栄養もある、魔力だけじゃ回復出来ないときもあるからな。血液とか鉄分を含んだ物を食べた方が治りが早い。そういうものだ。」


「そうなんだ、それも知らなかった。僕は天星眼の影響で食べなきゃいけないけど。」


「そうなのか?だから昨日あれほど食べたのか。」


「まぁ、そうなんだよね。年々食べる量が増えてる気がするし、黒い紋様が増えたからかな。」


「…本当か?そんなことあるのか?少し見せてみろ。なにかわかるかもしれん。」


「え、見てわかるの?」

なにも考えずに黒文様をだす。


「私の目を見ろ。少し調べる。」


「わかった。」

ヤマタドナの目を見る。綺麗な瞳だなと思わず頬に手が伸びる。


「お、おい!今調べてる最中だ!なにをしている!」

少しびっくりして顔を赤らめてる。


「え?ああ、ごめん、なんか、つい手が伸びて。」


「全く、お主は。しかし、やはりなにもわからんな。」


「ダメなの?」


「能力の解析すら出来ん。それに私は未来が見えるんだが天狐に関するのは何故かわからん。私もそうだ。天狐との未来は何も見えない。力は近いはずなのに何かに邪魔されているような感じだ。…恐らくはその眼が邪魔をしている。悪いことは言わんがあまり眼を使うのは辞めておけ。」


「まぁ、そう言われても勝手に動くしなぁ、この眼。魔力を使ったぶん勝手に補充されるし、それに九尾の力と合わせると便利だし。」


「使ったぶんを戻せるだけならいいが、それ以上に溜め込むのは良くないはずだ。恐らく黒い文様が魔力を溜めている。それで広がり続けているのであろう。私の目にはそう見える。その黒い文様が全身を覆うとき、そのとき命が尽きるのではないか?」


「えっ、そうなんだ…。」


「あくまで考察だ。絶対とは言えん。とにかく黒い文様を使うのはやめておけ。」


「そっか、ありがとうね。ヤマタドナ…」

そうなのかな、もしそうだったらあと何年生きられる?このままだと10年かな?よくわからない。どうしたらいいのかな。


少し落ち込んでる天狐を見て元気づけるため、抱き寄せる。

「…来い。」


「わぁ!?な、なに?」


「なに、落ち込んで見えるように思ったから元気づけようとしただけだ。それに、私の胸は柔らかいだろう?」

確かに柔らかいし、暖かい。そのまま抱き返し、密着する。


「全く甘えんぼうめ。おい、まだデートは始まったばかりだぞ。ずっと抱きつくな。」


「そうだね、今日はデートだし、楽しもうか!」


「ふん、その意気だ、今日はとことん楽しむぞ、天狐。」


「案内よろしくね。ツンデレのドラゴンさん。」


「わ、私はツンデレなのではない!ただのツンだ! 」


こうして一日、デートを楽しんだ天狐たちである。


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