第22話 ごめんなさい。

デート当日。朝になってしまった。


あの後結局眠れず、ずっと考えていた為か皆との接し方もよくわからなくなった。

前よりぎこちなくなってしまい、心配をかけてしまう。


「アースランド様とのデート、そんなに緊張するのかな。」「まぁ頑張ってほしいわね。」「天狐ちゃん…?」


「デート、頑張ってください。」シモーナに励まされる。“頑張ります”と声をかける。

だけどデートに行く前に皆の魔力を見たい。


「天星眼。」


皆の魔力を解読する。オレロだけ異常に魅了が掛かっていた。これはやばい。他の皆は少しだけ。

だから皆に近づき、頑張ってのハイタッチのふりをして魔力を注ぎ込む。


「あれ?なんか元気になった。」「俺は、何を?」「どうしたんだ、オレロ?」


「行ってきます。」

そういうと屋敷の外で待っているアースランドさんの所に向かった。あの人は心を読める。だから護衛と称して天星眼の力を出し、読心術を無効にする。これで行こう。ただ、強者には魔力が見られてるのはばれる可能性がある。だからあくまで護衛として、あとは探し物。ドラゴンだ。


「あれ?天狐ちゃんどうしたの?敵はどこにもいないよ?」

そう来るとは思っていたからあらかじめ


「い、いえ、デートと言えど護衛はいるのかなと思って。絶対に安全とは言い切れないのかと、それに、ちょっと探してる人が居るので…」


「そっかあ~。でも今日は楽しみにしてたよ?さぁ行こっか!」

手をつなぎ始めたので握り返して二人は街に向かって歩く。


少し歩くと色々な店があるのでそこに行く。道中、声は掛けられなかった。町の人に幻術をかけ、僕は護衛だと認識させる。そしたら誰も近づかず笑顔で手を振るだけ。立派な護衛だ。アースランドにはまた別の幻術をかけている。


一緒にご飯を食べ、買い物をして、お互いにプレゼントをする。


どデートは楽しくてアースランドさんが楽しんでるのを見る分、心が痛くなる。こんな術をかけてごめんなさい、と。


途中、花屋に花屋に行き、ある花を買う。これは最後に見せるものだからここでは見せない。


こうしてデートが終わり、次の日から仕事なのでアースランドは騎士の訓練所に帰るそうだ。だから途中で別れる。その際、花を渡す。


「あ、あの。」


「どうしたの天狐ちゃん?」


「こ、これ、どうぞ。」

一つの花を渡す。その際に魔力を流し込み、魅了を消す。その際に新たな幻術をかける。しかし反応は変わらない。


「わぁ!ありがとうね!天狐ちゃん!わぁ~綺麗なお花!」


「これ、チョコレートコスモスてという、花です。」


「でも私花言葉なんて知らないよ?」


「たしか花言葉は、あなたと一緒にいたい。らしいです。」


「そ、そうなんだ~。ちょっと恥ずかしいかも。」


「いや、僕も恥ずかしい、ですけど。」


「でもありがとね天狐ちゃん。今日は楽しかったよ。」


「い、いえ。こちらこそ今日は楽しかったです。」


「うん!じゃあまたデートしよっか!」


「…はい、またしましょう。」


「では、屋敷に戻りますので。」


「うん!また数日後ね!」


「はい。」


こうして別れ、屋敷に帰宅すると夕食をとり、お風呂を済ませた。特に質問攻めにあうことはなかった。僕の表情を察してくれたのかな?あ、オレロは元に戻ってる感じがする。よかったよ。


お風呂を上がった後、廊下でグラツィアさんと会った。


「天狐ちゃん。今日のデートどうだった?」


「えっと、楽しかったですよ、またしましょうって誘われました。」


「…そっか。よかったね!」


「はい、昨日、ありがとうございました。」


「ううん!次も頑張ってね!」


「はい。」


会話終えると一人になり、元の世界に居た服を着て、書置きを残す。


「今日の外出中、元の世界の手掛かりになるものを見つけました。未練はないですが調査したいと思っているので少しの間、留守にします。急にすみません。」


天星眼を使い、ドラゴンの位置を把握する。今はヒィスト王国と真ん中にある大陸、アロゲア大陸の中間地点にある無人島にいる。


そのまま窓を開け、宙に飛び出し、ドラゴンのいる方向へと向かうのであった。




別れ際に渡した花はチョコレートコスモス。

移り変わらぬ気持ち、恋の思い出、恋の終わりがある。

短い期間、お世話になりましたの意を込めて。そして諦めの気持ちを伝えたい時にも贈れる花である。短い間でしたけど幸せでした。


そして僕はこの花と花言葉の本当の意味を忘れさせる幻術をアースランドさんかけた。







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