第1話 え、ご飯の支度中だったんだけど。火はどうするの?

「ふぅ~。今日も何とかご飯を確保できたな。」

そう言葉を発すると獲物を解体し、食事の準備をする。

火をおこし、その間に血や汚れを落としたりする。


もう何年この生活を続けているのだろう。

一人でずっと狩りをし、たまに戦争に駆り出される。


それでも最近は戦場に出ることもなくなり、徐々に平和に近づけてきた。

この力がある限り、どこにいてもきっと利用される。そして恐れられる。

仕方がないと自身のなかで割り切る。


とりあえず今日もご飯ができたのでを食べようとドアを開けると全く知らない場所にいた。


「あれ、ここ何処なの?」


気がついたら知らない場所に居た。

いつの間にか街にいて、人が多い場所にいる。

さっきまで自分の家周りで狩りをしていたのだけど、瞬きすると世界が変わっていた。

後ろを振り返るとドアがあり、急いで開けなおすとそこはただのトイレだった。


「え、なんで?どうなってるの?トリック?」

そんな言葉を発すると思考を巡らせる。


なにか自然発生した歪み空間に吸い込まれた?

それとも誰かの時空間能力で意図的に?

いや、僕が使ったとはありえない。そんなことできるわけがない。

だいたいドアに時空間魔法かけるとかべたなんですけど。引っかかったから何も言えないけどさ。

でも仮に誰かがやったことに気が付かないことなんてありえるのかなぁ。


「あ、火が付いたままだった。やばい。消しに行かなくちゃ。でもどうやって?無理じゃない?」


おおおおお落ち着け深呼吸。だ。とりあえずタイムマシン探して帰ろう。

そしてどうしよう。


…と、とりあえずどこかに移動しよう。町の様子も伺いながら。


冥途天狐(めいどあまこ)

15歳。種族は狐種の九尾。身長156cm 職業は無職の狐。たまに戦場を駆け巡り、敵を駆逐する。教養は一応あるがマナーがそこまであるわけではない。

しかし、この年で全く知らない土地に放り込まれるのであった。


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「つ、疲れた。」

あまりにも突発的な事だったから精神的にきてしまった。

1時間くらい歩きながら街の様子を見たけど人が多いなぁ。

夕方から一瞬で昼になったことも原因の一つだ。後はご飯食べてお風呂入って眠るところだったのに!全くもう、異世界ちゃんったら。覚えておいてね。


しかし、どこに行っても人が多くて街が栄えてる。屋台もあって美味しそうな食べ物もある。焼き鳥美味そう。食べたい。おなかすいた。まだ夜ご飯?を食べられていない。でも硬貨の種類は持ってないから買えない。あったら逆に怖い。


持ち物は狩り用の小刀とポケットに紐があるくらいだ。

これでどうしろと?お金がないから銀行強盗しろと?そんなことできるわけないじゃん。覆面なんてあるわけないし。あってもやらないけどね!


街の人に聞いた感じ、近くに大きい屋敷があってそこに領主様が住んでるみたい。

嫌な人だったらどうしよう、食べられちゃうかな?


しばらくうろちょろしていると焼鳥屋のおじさんが話しかけてくれた。


「おい、嬢ちゃん。さっきから大丈夫か?ずっとキョロキョロして、何か探しものか?」


「え、あの、僕ですか?その、ちょっと旅をしていたんですけど、その、人生の道に迷ってて、仕事なくなって、寝る場所なくて、ここどこか知らなくて、あと♂なんですけど。」


ちょっとびっくりして変な風に返答してしまった。


「へぇ、ここを知らないってのはよくわかんねえなぁ。まるで別世界の人間か?

でもそんな人見たことねえしなあ。」


「そ、そうですよね。」


「まぁ、ここは領主ステラ・サンドレス様が納める街、ステリオスだ。なんもわかんねぇなら領主様のところに行って話を聞いてみるといい。あそこは役所の役割もあるから受付に聞いてきな。」


なるほど、領主様のところに行けばいいのか。

「あの、ありがとうございます。助かりました。」


「おう!ところで嬢ちゃん、旅してるんだろ?どっから来たんだ?

ここは色んな場所から来る人が多くてなぁ、色んな話を聞くんだ。」


やばい、そんなこと聞かれてもわからないものは答えられない。

顔に冷や汗が出るがどうにかして誤魔化すしかない。


「えっと、ちょっとぶらぶらして旅をしてて気が付いたらここに。」


「へぇ、そうかい、そんな若いのに立派だなぁ…」


「はい。今15歳ですけど、10歳くらいから一人で過ごしてるのでえっと、その…」

そう言い淀んでるといきなり肩に手を置かれおじさんに慰められた。


「まぁ、なんだ、その、言いたくないこともあるもんな。まぁ旅を楽しんでくれよ…!ほら、焼き鳥二本やるから元気出せよ?」

かわいそうだと思われたのだろうか。否定はできないけど。


「あ、ありがとうございます。ご飯食べられてなかったので、うれしいです。」


まぁ、お腹すいてそうに見えたからな!ほらお待ち!塩とタレ、一本ずつ!お代はいらねえからよぉ。」


「焼き鳥、ありがとうございました。あと僕♂です…」


そうして一人になり3時間くらい街をぶらつくのであった。



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