最強狐は異世界でメイドになっても戦うことはあるようです。

あよちる

プロローグ 始まりの瞬間。

これは、なんだ?


戦闘の形跡があった場所に着くと倒れている無数の人々。


誰か怪我人はいないかと声を上げながら確認するが誰も返事をしない。


気が付いたら死体の間を通り、あの人の匂いをたどりながら必死に探す。


腐敗が始まっているものもあり、吐き気を感じながらも進む。


「やっと見つけた」と一瞬のぬか喜びと体の一部が無く、心臓が動いていないことに頭が混乱する。


しかし、目に映る表情が少し笑っているように見える人は大切な人の亡骸。


触れてみるとどこか重さを感じ、ふと手から離れてしまう。


だけど落とさないように必死に抱き寄せ体から魔力と涙ががあふれ出す。


「待ってるね!天狐ちゃん!」

脳裏に最後の交わした言葉が何度もループする。


駆けつけた時にはすべてが遅かった。


どれだけ強くても守れなければ何も意味がない。


どれだけ早く間に合わせようともそれまでに死なれたらどうすることもできない。


たとえ間に合わせても治癒ができなければそれは人の形をした肉の塊になるんだ。


なにが九尾の力だ、なにが天星眼だ。僕自身、何もできない役立たずが。


ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。


なんで、どうしてこんなことに。どうして…


理解をしたくない。何も考えたくない。元の世界に帰ってすべての記憶を消し去りたい。すべての魔力を出し尽くしてこの地をすべて破壊したい。でもそんなことしたくない。たくさんの思い出がある場所だ。なんで…


原因はただ一つ。


…全ては俺に力がないからだ。だから守ることもできなかった。


何も守れなかった奴に強さを語る資格はない。


どれだけ力があろうとも大切な人を失えばそれはただの驕りだ。


現実をなかったことなどできない。失った命が戻ることはあり得ない。


これからどうすればいい…


どうして生きていけばいい…


どうすれば救われる…


どうすれば助けられる…


どうすれば…


「…さぁ行くぞ、冥途天狐。これからこれからすべてを取り戻すために。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る