第2話
次の日、カイは学校での授業が終わった後、いつものように図書館に向かった。彼は資料を読み漁り、ドーム都市の仕組みや歴史について詳しく調べ始めた。特に労働者層の生活や、ドームの外の世界についての情報に興味を持っていた。
図書館の奥にある古い資料室で、カイは一冊の古い本を見つけた。それは、ドーム都市が建設される前の地球の歴史について書かれたもので、今ではほとんど忘れ去られていた内容だった。カイは本を開き、かつての地球がどれほど美しかったかを知ることになる。
「こんな世界があったなんて…」カイは感嘆の声を漏らしながら、ページをめくった。しかし、同時に、今の地球がいかに荒廃しているかを思い知らされることになった。
その夜、カイは自室で古い本を読み続けた。彼の心には、ドームの外に対する興味と探求心がますます強くなっていった。しかし、エリート層の生活を享受している自分が、何をすべきか悩んでいた。
ある日、カイは父親のエドワードに対して、自分の疑問をぶつける決意を固めた。夕食の後、カイは勇気を振り絞り、父親に話しかけた。
「父さん、ドームの外の世界についてもっと知りたいんだ。なぜ僕たちは外に出ることができないの?」カイは真剣な表情で問いかけた。
エドワードは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに厳しい表情に変わった。「カイ、ドームの外は危険だ。あそこは生きることのできない荒れ地だ。私たちはここで安全に暮らすために多くの犠牲を払ってきたんだ。」
「でも、僕は知りたいんだ。本当に外の世界はそんなに悪いのか?」カイは引き下がらなかった。
エドワードはため息をつき、カイの肩に手を置いた。
「カイ、お前はまだ若い。世界の全てを理解するには時間がかかる。外の世界は確かに荒廃しているが、私たちがここで安全に暮らせるのもその犠牲の上に成り立っている。理解してほしい。」
カイは父親の言葉に納得しきれず、自室に戻った。彼の心には疑問が渦巻いていた。なぜ真実を隠すのか?本当に外の世界は救いようがないのか?
数日後、カイは再び図書館に足を運んだ。彼はもっと多くの情報を手に入れるために、古い資料やデータベースを調べ続けた。その過程で、カイはある日記を見つけた。それは、ドーム都市建設前の地球環境の研究者によって書かれたものであり、外の世界が完全に荒廃しているわけではないことを示唆していた。
「この日記の内容が本当なら、外にはまだ希望があるかもしれない…」カイは胸の高鳴りを感じながら、日記を読み進めた。
その晩、カイは自室で日記の内容を熟読し、自分の中で何かが変わるのを感じた。彼は真実を確かめるために、ドームの外に出る決意を固めた。だが、そのためには信頼できる仲間が必要だった。
次の日、カイは学校の後に親友のアレンに相談することにした。アレンはカイと同じエリート層に属し、科学技術に詳しい友人だった。
「アレン、ちょっと話があるんだ。信じられないかもしれないけど…」カイはアレンに今までの経緯を話し、ドームの外に出たいという自分の決意を伝えた。
アレンは驚いた表情を見せたが、カイの真剣な目を見て、理解を示した。「カイ、君がそんなに真剣なら、僕も協力するよ。でも、どうやってドームの外に出るつもりなんだ?」
カイは微笑み、「そのために君の力が必要なんだ。まずはドームの構造を調べて、外に出るための計画を立てよう。」と答えた。
カイとアレンは密かに計画を練り始めた。彼らはドームの防護システムや監視カメラの位置、外に通じる秘密のルートを探し出すために、夜な夜な資料を調べ、技術を駆使して情報を集めた。
ある晩、カイはついにドームの外に通じる地下トンネルの存在を突き止めた。それはかつて労働者が使用していた古いトンネルであり、現在は使用されていないとされていた。
「アレン、これが私たちの脱出ルートだ。準備が整ったら、このトンネルを使って外に出よう。」カイは興奮しながらアレンに計画を伝えた。
アレンは頷き、「分かった。だけど、慎重に行動しよう。私たちが見つかれば、ただでは済まない。」と答えた。
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