第8話


 ……

 

 なんていうか、

 その、

 いちいち、暴力的、過ぎる。

 

 スレンダーの対極で、

 パンチもあるし、

 む、むちっと、してるし、

 肌、ぴっかぴかってして

 

 あぁぁ……っ。

 こんな、こんな形而下のことで、

 こころが、ゆらぐなんて、

 ほんと、人として弱すぎる。

 

 女は、必ず、裏切る。

 女には、靡かない。

 なにも、期待しない。

 

 そう、決めていたはずなのに。

 どうして、このカラダは、

 このココロは。

 

 ……

 

 あ。

 

 そう、なんだよな。

 

 (だって、ゆーくん、

  わたしを虐めてたグループの女子と付き合ってた。)

  

 美玖のいた世界だと、

 僕は、女子と、付き合っていたらしい。


 僕が、女子と。

 ありえないはずなのに。

 

 美玖を虐めていたグループといえば、

 外ならぬ、田中麻里一派だ。

 どう考えても、僕の趣味じゃない。

 

 ……なんで、そんなことになったんだ?

 なにか、とても大事なことを見落としている気が

 

 ぶーっ

 

 ……

 あぁ。

 

 西本さん、か。

 

 <美玖ちゃん、大丈夫?

  こっちで匿おうか?>

 

 心配してくれてるのか。

 

 ……?

 

 うん。


 <そうだね

  ちょっと、相談してみる>


 オーディエンスじゃ、ないのか。


*

 

 コン、コン

 

 「はいってまーす。」

 

 「違うだろ。」

 

 「にゃはは、

  ちょっとだけ待ってー。」

 

 ……

 先にRINEで通知しておくべきだったか。

 一応、性別違うわけだし

 

 がちゃっ

 

 !!??

 

 「あー。

  さっきまで、部屋、整理してたからさー。

  あっついから、汗、かいちゃって。」

 

 い、いや、だって

 さっき、風呂、入ったんじゃ

 

 「そうなんだけどさー。

  ほら、一回気になっちゃうと、

  あれも、これもやんないとって、気にならない?」

 

 じゃ、なく、てっ

 

 「な、なんで、

  シャツ、一枚、だけなの。」

 

 「えー?

  下着だけのほうがよかった?」

 

 「違うわっ!

  せめて下なんか履いてっ!」

 

 「んー?

  あ。

  

  あー。


  にゃははは。

  さっきまで下着だけだったし、

  あっついからさー、つい。」

 

 「は、恥じらいないのっ!?」

 

 「ないっ。

  だって、いっぺん死んでるもん。」

 

 それは無敵カードじゃないっ!

 

 ふ、ふとももが、

 部屋の灯に照らされて

 は、肌に、珠のような汗があまく薫って

 ぴ、ぴっち

 

 「んー?

  にゃはははは、ゆーくんってば、

  ひょっとして、●っちゃってる?」

 

 「●つかぁっ!!

  い、妹だよっ!」

 

 「えー?

  義理だよ、義理。

  法的になんの問題もないって。」

 

 だ、だれかに聞いたなっ?

 

 「うん。

  おとーさま。」

 

 は?

 

 「だから、

  ゆーくんと、わたしの、おとーさま。」

  

 ……

 ぶっ!?!?

 ち、父よ、

 あなた、なにを吹き込んでくれてんのっ。

 

 「晶子さんもいいって言ってくれてるよ?」

 

 そこはおかーさんじゃないのかよっ。

 

 「にゃははは。

  いやー、わたしもそう言いたいんだけどさー。

  どうにも抵抗感があってねー。


  っていうか、晶子さんって

  そういうキャラじゃないでしょ?」

 

 ま、まぁ、

 そうだ

 

 ぶっ!?!?

 

 「わ。

  もうちょっと華奢かなーって思ってたけど、

  意外にふともも、ちゃんとしてるんだねー。」

 

 「さ、さ、触るなっ!」

 

 「あー、ひっどいなぁ。

  拒絶しちゃだめだよー。

  ふだんからの兄妹スキンシップは大事

  

 「じゃないっ!

  親しい中にも礼儀ありでしょっ!」

 

 「恋人同士は違うと思うなー。」

 

 「なってないっ!」

 

 「えー?

  じゃ、なろ?

  いまから。」

 

 ロマンスの欠片もないなっ!

 おばさん最強すぎるだろっ。

 じゃ、なくてぇっ!

 

 「に、

  西本愛実さん、知ってるっ?」

 

 う、わ。

 なん、だ。

 

 一瞬で、表情が、替わった。

 

 「……どう、して。」

 

 やっぱり、か。

 彼女は、美玖の味方なんかじゃ、ない。

 

 「……っ。」

 

 ……?

 

 「美玖?」

 

 な、なんだ。

 急に、涙を浮かべてるけど。

 

 「どうしたの?」

 

 「……っ……ぅ……。」

 

 「言わないと、わからないよ?」

 

 「っ!?!?」

 

 あ、

 カラダごと、びくんってなった。

 

 ……って。

 

 「……

  にゃはは。

  

  うん。

  ほんと、言わないと、わからないよね。」

 

 美玖は、

 僕の太ももをさすりながら、

 潤んだ瞳を必死に明るく見せながら、

 僕を、見上げた。



  「……その娘、だよ。

   ゆーくんが、つきあってたの。」



 ……。

 やっぱり、そうか。

 オーディエンスではないと思った瞬間から、

 考えないわけではなかったが。


 あぁ。

 慣性は、本当に、

 存在するのかもしれない。

 

 だと、したら。

 

 「美玖。」

 

 「……うん。」

 

 僕が、

 きみに、言えることは。

 


  「運命を、裏切ってやろうよ。」



 「……え?」


 逃げても終わりが待っている。

 それなら、こちらから、攻め込んでやる。


 「一緒に戦おう、美玖。

  晶子さんの、美玖の、慣性と。」


 「……

 

  

   すきぃっ!」


 

 のわぁっ!?

 の、のしかかってくるんじゃないっ!

 べ、べったべたじゃないかぁっ!?



逆行してきた幼馴染が妹になったら篭絡してくる

第1章


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