第3話 殺人概要
1999年3月2日の深夜、大阪府
被害者の
警察は一人の男をマークした。マレーシア国籍のビン・グォン・タン氏(24歳)を重要参考人と見て捜査を開始した。彼の血液型はO型である。
「どうだ、動きはあるか?」
大阪府警捜査一課刑事部、
「今、誰かと電話で話しています。調べますか?」剪芽梨チームの参謀長と言われている
「あぁー、また坊主だ。4❘3来る筈だろう!」
競艇で負けを食らったビンは、空きビルを利用したスマホ密売を商売としていた。キャリア携帯会社と契約出来ない人間に、高額の取引を持ちかけて巨額な資金を手に入れている。警察はそちらの方には手を出さず、強姦殺人で逮捕を狙っていた。
相手が外国人という事もあり、軽い罪では、釈放後、海外逃亡される可能性があった。最近は外国人の拠り所となっている弁護士が増えている事も要因としてあった。窓を開け巻煙草を吸うビンは、ビルの陰に不審な黒塗りの車を見つけた。「
ビルには地下駐車場に続くエレベーターがある。それを使って、止めてあるモトクロス仕様のバイクで、ビルと隣家の間にある狭い路地を伝って逃走した。
地下で張っていた剪芽梨チームを含め、張り込んでいた刑事達はあっけなく振り切られたのだった。
「くそ、こう成るなら緊急逮捕するべきだった。物証がないんじゃ、どちらにしても無駄足になるだろうが、取り調べで何とかなったかもしれない。」
ビンが、強姦殺人の犯人と一致しているのは血液型だけだ。自供に追い込むしかない。
しかし、何かしら因縁つけて緊急逮捕に至っても自供が取れなければ釈放され、今度は母国に逃げ込まれる。そうなったらおしまいだ。
剪芽梨は、ありとあらゆる事件の経験から、解決の答えを探していた。
殺害現場の死体付近では、陰毛が数本採取された。
鑑識はミトコンドリアDNA型鑑定を行い一本は血液型Bを検出し、被害者のものと断定、残りの数本から血液型Bだが被害者とはDNA不一致のものが一本、後の二本からは血液型Oが検出され事件の手かがりとなっている。
トイレ内滞留水中からはコンドーム内精液が、便器周辺に零れた精液も発見されている。
経時変化などの鑑定結果で被害者が殺害された日、3月2日深夜頃のものであると報告された。
精液は血液型鑑定で両方ともO型と判断、DNAと照らし合わせれば充分な物的証拠になると思われた。
さとこのファイルの顧客名簿には、アジア系外国人23人の名前と住所、そして携帯番号がある。
PHSを使っている者もいた。
「携帯が出来た事で、この商売は軌道に乗りずいぶん稼げるようになった。今日も、仕事の後、タイ人の男と逢う予定だ。ファイル作りは、赤いメモ帳から始まる。夜の繁華街を歩きながら、鴨になりそうな男を漁る。見つけると妖艶にしけ込み売りの金額を決める。」
さとこは、セックスの後に名前と住所、電話番号を聞き出し、メモして会社のパソコンに入力していった。こうする事で、相手の素性が分かり、安全に継続して稼ぐ事が出来ると思っている。日本人を選ばないのは、セックスに対する飢えと人に対する甘えが無い分、満足感と冷めた付き合いが出来るからだ。何よりも、日本人はしつこいのが嫌いだった。
「会社のパソコンに入力したものは、以前はフロッピーに収めていたが、今はUSBスティックに入っている。パソコンの世界は進展が早い。それと同時に、私の稼ぎも上がって来た。借金ももうすぐ消える。」
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