第2話 真実

「マンション」と確かこの女は言った。

しかし、目の前にあるのは、宗蓮そうれんアパートという看板の付いた古びた建物だった。

女の服装そしてマンションと軽く言いのけた言い草から、性欲を持て余した金持ちの独身女と決めつけていた自分が、笑い者の道化師に思えて仕方がない。


「付いて来て、こっちよ。」

彼女の言葉にまだ淡い期待を持って違う場所をイメージしていた。

その思いも、アパート一階の出入り口を潜るその瞬間に、諦めた時に来る挫折感と共に消え去った。

三階建ての建物には古びたエレベーターがあった。

上に向けた矢印を女が押すと直ぐにドアが横に開く。箱の中には人気がない。

狭く冷たい鉄板に囲まれて、二人寄り添うと自然に暖め合う様に求め合う。

唇を合わせ女も俺も秘部が擦れるほど下半身を密着させ腰を動かす。

エレベーターの速度は、三階程度上がる為に動力は使えないとばかり極度に遅い。

俺の手は自然に女の臀部を撫でてから掴み上げる。

一物が女の陰部に向かって、ズボンとスカートを突き破るかのように挿していた。

女の手がそれを庇うように一物を擦った。


エレベーターからブザー音が止めろと警告してきた。

俺は絡みあったまま彼女の部屋まで行きたかったが、女はそんな思いを冷たく跳ね除け、先に箱から出て俺の前を歩き部屋へと向かった。

後を引きながら俺もついていく。

粗末な作りのドアの上部中央に310と印字があった。

女は躊躇いなくドアを開ける。

その時俺は、鍵が掛かっていなかったことに気づかない程、女の体を後から舐めるように見入っていた。

ドアが開くと吸い付くようにピンクの目隠しカーテンが俺の行く手を阻むように掛けられていた。

女が通るとカーテンは自然に靡いたが、俺が入ろうとすると頭と身体に身動き取れないほど絡みついて来た。俺は邪魔するなと心で悪態をつく。それほど女の体を欲していた。

いても経ってもいられず女を抱きしめようとしたが、女は両手を突き出し俺の身体を拒否した。「先に頂戴。逃げられたら困るわ。」ラウンジで女が言った二万円の事だと思い出した。

俺は長財布をズボンの後ろポケットから取り出し札を確認した。そこには薄い紙切れが一枚ある。それを取り出し女に渡した。「もう一枚よ。」女は批難の顔を向けた。

俺は分かっていて差し出している。無いものは無い。しかし、どうにかして今この性的欲求を満たさなければならないと決めていた。

女に瞬間的に抱き付き床に押し倒した。身体を決める。先程唇の感触は得てある。身体が欲しい。押さえ込んだ女の両足の中心に自らの左足を押し込もうとしたが、力が足りず足をバタつかせてしまった。今度は利き足で試す。上下左右に振り回す女の足のタイミングを計り、両手で抑え込みながらじっと待つ。足腰の疲れがやってきたらしい。女の脚の動きが遅くなってきた。そのまま、右足を間に入れ、即座に左足も入れた。ゆっくりと力比べで女の足を開く。下半身ごと収まった。後は服を割いて入れればいい。だが、慌てると足が付き裁判沙汰だ。パーカーの右ポケットからゴムを取り出すと、太腿下部まで自分のズボンをずらし装着した。準備はできた。あとは、果てるまでやるだけだ。ゴムを嵌めてはいたが、女の性器は締まりがよく二度三度と互いが果てた。

初めは必死の形相で鬼畜の如く抵抗したこの女も何時しか俺を受け入れていた。所詮売女だ。やりたい気持ちに変わりはない。

「お金、付けとくからまた宜しくね。」付けが効くなら又やるかと、一物からゴムを外そうとしたが、妙に惜しくなり4度目の性交をしてから裸のままトイレに行き、便器の中にコンドームを流した。外す時に、中身が多すぎて便器の脇に溢れてしまった。裁判沙汰は無いだろうとそのままにして部屋を出た。


これが真実だ。俺はやるだけやって帰った。只それだけだ。

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