冤罪判決 剪芽梨シリーズ①
138億年から来た人間
第1話 男と女
いつか来た道に俺は戻った。背負わされた十字架は、何時までも人生を狂わせる事だろう。この社会は既に俺の事を排除しているのかもしれない。然し、俺は無実だった。無罪を勝ち取ったのだ。長く続いた幽閉生活から逃れる事が出来た。そうあの判決は警察組織と司法の過ちだった。
「証拠開示なくして公平裁判なし」と言われるほど物証は裁判にとっては要となる。然し、今回の事件では、警察組織の
「ねぇ、2万円でいいわ、どう?」
東京都内にあるラウンジ「
客の1人は頭の天辺が禿げた中年でスーツ姿の営業マン風の男だ。アルバイトの女店員20歳の
その3人とは離れたテーブル席に男女の姿があった。女は仕事帰りなのか、スーツにタイトなスカートを履いていた。ハイヒールは高く、スカートから覗くその足には男を誘うには十分な肉付きに黒いストッキングが映えていた。男は、話言葉から異国な感じを受けた。タイかフィリピン、或いはマレーシア辺りか?「どこで、やる。」他の三人に背を向ける男の声音は極めて小さく響かない。「私のマンション。」女の赤い唇は、口角を上げると同時に男を首肯させる。二人は時間をおいて席を立ち、別々に店を後にした。さも、これから別行動だといわんばかりに。女は、後から席を立つまで手の平サイズの赤い日記帳に走り書きをしていた。店から姿を消した二人は数十メートル先の路上で再び姿を見せ、タクシーを拾って揃って走り去った。
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