第3話 探偵は ひょっこり顔を出す

接点のない人物が突然現れていきなり世間話を始めたらどうしますか。


・不審者と認識してその場を離れる場合。

一切リアクションをとらずにすっと離れるか、軽く会釈して離れるか、すみません急いでますのでと言い訳めいたことを口にするのか。


・ひまなので、ま、いっかと思った場合。

当たり障りのない会話をしながら相手が距離を縮めてこようとしたらかわして世間話に留めようとする。

もしくは、折をみてその場を離れる。


・話し始めてから思い出したかのように相手が自己紹介を始めた場合。

その自己紹介が本当かどうかさりげなく観察する。

相手が自分は疑われてると勘付いて、身分証、もしくは、知り合いの社会的信用のある人物の名前を出してきたならば、観察は続けつつ真の用件を探る。


少し前に倒叙ミステリに興味がわいて読んだり見たりしていまして、探偵が犯人(倒叙ミステリなので既に犯人は確定している)の前に現れる時は唐突だな、と思っていました。

その事件を担当しているという描写はありますが、そんなことは犯人は知りません。


とは言いましても、犯人は自分が罪人つみびとだと自覚してますので、探偵が現れることは予想の範囲内のはずです。

はずですが、犯人が自分は完全犯罪をしたのだ、と自惚れていた場合、探偵が自分の前に現れるのは大いなる驚きになります。

なので、どぎまぎしたり、あたふたしたり、怒りっぽくなったりして、自ら尻尾を見せてしまうということになりやすいのです。

そうでないタイプの犯人の場合、探偵がだまされたりしますが、最終的には何らかの解決をみます。



作者は小説の場合その物語世界の神である。

この認識をうっかり忘れてしまうといけません。

神は物語世界の創造主であり俯瞰している存在です。

生殺与奪を握っています。

それを不用意に行使するとご都合主義な物語になってしまいます。

それすら楽しむという場合はそれでもよいでしょう。

ただ、それはむずがゆくなってしまって楽しめない人もいます。

自分は読んだりイメージ創作ではどちらも楽しめますが、本腰を入れて書く場合は極力不用意さは避けたいと思っています。

とは言いましても未熟なのでその点は要努力です。


登場人物ひとりひとりの人生を生きるわけですから、小説を書くというのはエネルギーがいります。

普通に生きてるだけでもエネルギーを使うのに、さらに、物語の中とはいえ自分以外の人の生を引き受けるというのは(自分が生み出したので自分の分身ではありますが)覚悟がいります。



探偵は、犯人の前にひょっこり顔を出して、するっと隣りに座ります。

煙草の火を借りたり(これは最近では見かけないシーンだと思いますが)、缶コーヒーを勧めたり、相手を持ち上げて反応をみたり、逆に痛いところを突いて顰蹙をかってみたりします。

現代であればさまざまな機器がその役目をになっていますが、探偵は、やっぱり、画面越しにひょっこり多様な姿で現れて任務を全うしていることでしょう。




では、今日はこの辺で……





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