第2話 噂の王子様


8時5分、急いで走りやっとの思いで学校に着き、小走りで教室えと向かう為に、階段に向かう途中で、背後から聞き慣れた声が聞こえた。


莉衣りい君!おはよ!」


光莉ひかり、おはよ。今日は少し早いね?」


「そうなんだよね、今日はちょと早めに起きた!!」

「そう言う、莉衣りい君は今日は遅めだね?」


「うん、今日は兄とお母さんの過保護に振り回されてさ ハハッ(掠れ笑い)」


「そ、そっか。大変だったね」


掠れ笑で言うと察した様な顔をする事男の名は、三村光莉みむらひかりと言う。小1からの付き合い、所謂幼馴染であり、髪の毛の長さはロングであり、本人は常にポニーテールか一つ結び、お団子をしている。光莉ひかりは顔立ちが綺麗、整っていて小さい頃は良く女の子に間違われていたし、今も良く女の子に間違われる。本人はとても嫌みたい。地黒でそれは少し気にしてるみたい。

そんな光莉ひかりと一緒に階段を上がって教室えと向かう。


「ん?莉衣りい君、それってもしかしてケーキ?」


そう言って僕が持っているケーキの入れ物を指さす光莉ひかり


「ん?あぁ、そうだよ。昨日の夜に作ったから持って来た!」

光莉ひかり達に食べさせようと思って」


「マジ?ヤッタ!ありがと」


「いえいえ、その代わりに光莉ひかりの作った手作りハンバーグ今度、作ってね?」


「えぇ〜、しょうがないなぁ。ま、良いけど」


「良いんかい笑」


そう言って光莉ひかりと向き合うと一緒に笑う。光莉ひかりは料理上手で僕はお菓子作りが得意で昔から一緒に作って食べさせあったりした。

笑いながら、僕らが所属するクラス、1年C組の教室に一緒に入り声を出す。


「「おはよ〜!」」


「あはよ〜、2人共!ギリギリだね〜」


「そーゆう、のぞみもさっき来た所でしょ」

「あはよう」


「そうそう、1番早く来た俺が偉い!」

「あ、2人共おはよう!!」


「何で、そうなるんだよ笑」

「2人共、おはよ」


挨拶をしてすぐに声をかけて来たのは上から武谷希たけやのぞみ内原麗華うちはられいか大間大翔おおまひろと大崎大和おおざきやまと

皆、小学校や中学校からの友人達。因みに何やけど、大翔ひろと大和やまとは生まれた日も同じで何と2人の母親は姉妹で幼馴染でそして、中学まで同じ部活に所属してたんだ。だから、殆ど双子である。

皆、僕にとっては大事な友人達である。


「、、、、!、あ!」


急に声を上げたのは、窓からの席に座り外を見ていたのぞみだった。


のぞみ?どうしたの。声を上げて」


「いや、見てみて!秋王子しゅうおうじが来た!」


「?秋王子しゅうおうじ?誰それ?」


持っていたリュックなどの荷物を机に置きながら僕がそう言うと皆、驚いた様な顔をして僕の顔を見る。そして、のぞみはおもむろに立ち上がって僕に向かって歩いて来て腕を掴んで窓側に連れて来て外を指差した。


「あれが!秋王子しゅうおうじ!」

「私達の学校の2年生で圧倒的ビジュアル、容姿端麗、眉目秀麗とはまさしくこれで!スタイルの良さ、そして、成績優秀で運動神経抜群」

「さらに、クールで冷静沈着な性格で笑顔をあまり見せないけど小学校、中学校からの友人達にしか見せない笑顔はとても綺麗、可愛らしいと有名!」

「その名も速水秋夜はやみしゅうや先輩!!」


「入学して1週間で秋王子しゅうおうじって、呼ばれ始めたらしいよ?」


「あの、先輩の事、知らなかったの多分、りぃだけだな」


「まぁ、莉衣りい君が知らないのも当然だよ。俺もあんま知らなかったし」


「俺は兄貴が去年3年生だったから、知ってた!」


「何、偉そうな事、言ってんだよ笑」


「ふーん、あの人有名なんだ」


のぞみの言う、速水はやみ先輩はイケメンだったし、何処か懐かしい雰囲気を感じる。気になってしまう。見続けてしまう様な。そして、その周りに居る女子生徒の数が恐ろしいと僕は思う。


たった、今さっき知ったばかりの先輩の事を何故かこんなに気になってしまうのだろうか。


ガラガラ


「よーし、朝の会始まるぞ〜、そのまま授業も始まるからな」

「早く、席に着け」


「「「「「「はーい」」」」」」


そう、先生の声が聞こえ、我にかえり、急いで席に座るがあの先輩の事が気になりすぎて先生の言葉は僕の耳に届かなかった。



***




キーンコーンカーンコーン


莉衣りい君、お昼休みだし、ご飯食べよ?」


「、、、、」


莉衣りい君?」


「、、、、!ぁ、ごめん、光莉ひかりちょっと考え事してた笑」


「それなら良いけど」


「それで何だけど、朝から甘い匂いがしてたんだけど、何持って来たの?」


「そー言えば、大翔ひろとの言う通り、何か持って来た?」


「2人共流石、良く分かったね笑」


鼻の良い2人が言うのですぐに持って来たケーキの入れ物を机に置く。


「今日ケーキ作ったんだ!あ、お父さんにも味見して貰ってOK貰ったやつ!」


「えっ!て事は、実質、喫茶店“ほむら“と同じ味って事!?」


「そうじゃん!やった!食べよ!」


「さっ、2人も言ってるだし、食べよっか」


「あら?大和やまと君、嬉しそうですね?」


「べ、別に、、何でもない」


「照れちゃって笑、大和やまとは甘い物好きなくせに〜」


光莉ひかりが言うな」


ケーキを出した瞬間、皆の顔が笑顔になった。ま、甘い物って幸せになるもんね。

それで、喫茶店“ほむら“って言うのは僕のお父さんとお母さんが開いているお店で、喫茶店だけど洋菓子屋さん兼和菓子屋兼料理屋で朝は喫茶店、昼は洋菓子屋、和菓子屋、それで夜は料理屋をしてるんだ。

父方の祖父母が食品会社、スーパーや農家などの会社を経営してて、“ほむら“はこの街では結構有名なんだよね。


「皆、何食べる?」


「俺は〜、やっぱショートケーキ!」

のぞみは?」


「私はモンブランかな!」

「てか、大翔ひろとはいつも定番だよね笑」


「なら、俺はチーズケーキかな。麗華れいかは?」


「そうですね。私は苺タルトかしら」

光莉ひかり君はどれに?」


「俺はチョコタルト!好きだから!」

「あ、莉衣りい君は、やっぱ同じの?」


「僕は、1人でケーキとお昼ご飯食べたいから、皆、此処で食べてて、」

「じゃ、、、、!」


そう言って教室から出てすぐに校舎裏のみんながあまり行かない、所に少し駆け足で向かった。前、真依まい姉が此処を教えてくれて数回来ている。


「よし、着い、た、、、、!」


そして、近くになり右に曲がるとそこには人が座って居た。そこに居た人の顔を見て驚いて咄嗟に隠れた。


「(今、あの人、速水はやみ先輩が居んの!)」

「(何で、あの人が居るんだ?、でも、あそこでご飯食べたいしなぁ〜)」


そう俺の先程まで考えていた人こと、速水秋夜はやみしゅうやが居た。

何て、悩みながら、もう一度様子を見ようと顔を出して良く見ていた。


「スンッスンッ グスッ (泣)」


「!!(な、泣いてる?!)」


何故か泣いている先輩を見てしまい、驚きと焦りで再び、隠れてしまった。そして、手元に持っていたケーキの入れ物を見て、ある父の言葉を思い出した。


***


莉衣りい、良いか。スイーツと言うのは人を幸せにそして、喜ばせ、笑顔にする食べ物なんだ」


「笑顔にする?」


「そう。もし、大切な人や気になる人、好きになった人や、家族や友達が泣いていたら、莉衣りいが作ったスイーツでその人を笑顔にしてあげなさい」


「、、、、うん!!」



***


真剣な顔で言う父の顔は今でも僕の記憶に残っている。

速水はやみ先輩は今日知った人だけど気になる人だし、それに、泣いている人を放っておくのなんて、僕には出来ない。

そう思い即座に先輩の元に駆け足で向かった。


「あの!、センパ 「グゥゥゥゥゥゥ」イ」


先輩の近くに着いた瞬間、先輩のお腹は大きく鳴った。そして先輩の顔は一瞬のうちに真っ赤になり僕の顔を少し涙目で見て声を発した。


「////// き、聞いたか?」


「、、、、、、、、す、すいません。聞いてしまいました」


「そうか、、、、恥ずかし、、、、ん?、、、(凝視)」


謝れば先輩は両手で顔を覆い、ちょっと落ち着いたのか指の間から僕が持っていたケーキの入れ物をじっと見て来た。


「あ、あの?センパ 「あのさ、何で声かけて来たの?」 へ?」


「俺のファン?」


「いや!違います!」

「そ、その、先輩泣いてたから、気になってしまってそれで、、、、」


「それで??何?」


上目遣いで細目で見てくる先輩に嘘は効かないな、と言うかバレそうだから、本当の事を言う事にした。


「その、良かったら、僕が作ったケーキ食べませんか?」


「え?」


「あ、いや、深い意味はないんですけど、父の言葉を思い出してしまって、それで良ければなんですけど」


いきなりこんな事を言われれば誰しも困惑するし、キモいよね。てか、手作りケーキとか普通食べたくないよね!焦りと恥ずかしさで早口口調で声が出てしまう。


「変ですよね!すいません!この事はお忘れ 「いや、良いよ?頂戴。欲しい」 へ?」


速水はやみ先輩の言葉で少し冷静になってしまったと言うか、驚きで落ち着いてしまった。


「俺、ケーキ好きだし、お腹空いてたし。?くれないの?」


「!いや、全然、あげます!」


「フハッ そう、なら、遠慮なく」

「てか、こっち座りな」


そう手招きをする先輩に甘えて先輩のお隣にお邪魔して座った。


「お邪魔します」


「ん、あ、自己紹介がまだだったな。俺は、速水秋夜はやみしゅうや、2年です」


「僕は火野莉衣ひのりいって言います。1年です!」


先輩が自己紹介をしたので僕も急いで自己紹介をして名前を言うと先輩は目を大きく開けた。


「いや、嘘、でも、、まさか」


「あの、先輩?」


「いや、何でもないよ」


「そうですか。ケーキ、6つあるので好きなの取ってください」


「ん、有り難く、貰う」


小声で何か考え事をしていた先輩に、困惑しながら声をかけて、先輩はチョコケーキを手に取った。


「あの、失礼ですが、何故、泣いていたんですか?」


「、、、、あぁ、その、昔、小さい頃の事、思い出してさ」

「それで、懐かして泣いちゃってな」


「そうなんですか」


「てか、これ、超美味しそうだな」


「あっ、僕の家、洋菓子屋、やってて、“ほむら“って言って」


「、、、、、、、、えっ」


チョコケーキを口に入れた瞬間に声を出して、驚きの隠せない顔をしてこっちを見る速水はやみ先輩。一口目のケーキを良く噛んで飲み込んだかと思えば、瞬時に僕の両肩を両手で掴んで来た先輩。


「、、、、り、ちゃ、、、、」


「え?あ、あの、先輩、」


「りんちゃん!!」


「、、、、へ、?」


そう先輩の言葉で思考停止してしまった。何故なら、先輩が知るはずのない、僕の呼び名を言ったから。この呼び名は僕とあき君と家族、そして光莉ひかりしか、知らないからだ。


「な、何で、、、、その呼び方はあきく、」


言い終わる前に右手を腰に回して自分の懐に抱き寄せて、包むように抱きついて来た先輩。


「、!?先輩?ど、どうし」


「俺が、あきだよ。りんちゃん」


「!!!、、、、」


その言葉を聞き、驚きが隠せなかったけど、それと同時に何故か納得してしまった。何故なら、今日先輩の顔を見た時、何処か懐かしく、そして何処か愛おしさを感じていた自分が居たからだ。


「本当に、あき君?」


「うん!!そうだよ!」


「な、ならさ、僕が初めてお父さんと一緒に作ったあき君のケーキを持って行った時こけそうになったのは何歳?」


抱きしめられたままの僕はまだ何処か信じられなかったのか問題を出してみた。そして、先輩は即答で、


「4歳」


「じゃあ、僕が家のお皿、割っちゃった時、あき君が罪か被ってくれた時に言った言葉は?」


「『りんちゃんと本格的なおままごとしようとして、割っちゃった!!』って、言ったかな」


サラサラとそして的確に問題を答える先輩の言葉でこの人が本当にあき君だと言う確信を持てた。


「あと、他には、俺の引越し当日に『あき君と離れるの嫌〜!僕も行くー』とか、初めて喋った言葉が“あき君“だったり、嫌いな食べ物はいつも俺のお皿に置いてたら怒られそうになったら良く『あき君が食べたいって言ったんだもん!』とか言ってたよね笑」


「ちょ、もうやめて!!」


揶揄い口調でそう言う速水はやみ先輩こと、あき君に恥ずかしくなりながら、止める。


「、、、、元気だった?」


「うん、元気元気、ま、りんちゃんに会えなかったのが心残りだったけどね」


「ふーん、あっそ」


「何か、冷たくない?」


「別に、昔からこうじゃない?」


「そうだったけ?」


「てか、抱きつくのもう辞めて、恥ずかしいから」


「えぇ〜、」


「えぇ〜、じゃない!お願い」


「しょうがないなぁ」


呆れ口調で言うと寂しそうに言いながら抱きしめるのを辞めるあき君。こーゆうところは素直である。


「大きくなりましたね?カッコよく御成になって」


「あら、りんちゃんだって、可愛らしくなったじゃないですか」


「そうですかね?僕もカッコよくなりたかったですけどね?」


「俺はそのままでも良いけどね」


「てか、僕、昼ご飯食べたいから、あき君はケーキ食べなよ」


「うん、ぁ、このケーキ、おじさんの作ったケーキに似てる」


「本当?良かった」


何て、久しぶりの再会に良い意味で花を咲かせ、僕は昼ご飯をあき君はケーキを食べながら、昼休みを過ごした。最初、クールな性格のままかと不安があったが、何も変わってなかった。優しくてそして明るく元気で僕のことが大好きなあき君のままだった。



***











































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