秋王子のヒロインは俺らしい?

橋本衣

第1話 朝の一幕



『ヤーイ、男女おとこおんな!男のくせに、女の格好すんなよ!』


男女おとこおんなはこっち来んなよ!』


『(泣)何でそんな事言うの!』


『コラー!!何、りんちゃん、泣かせてんじゃー!!』


『げっ、あきが来やがった。逃げんぞ!』


『おう!!』


『りんちゃん、大丈夫か?』


あき君、僕の格好って変なのかな?』

『、、、、好きな格好してるだけなのに、何でこんな事言われないといけないのかな』


『変じゃないよ!!りんちゃんの格好はとっても可愛い!』

『好きな物を身に付ける事に理由なんて要らないよ!』


『理由は要らない?』


『そう!好きな物を好きになる事に理由なんて要らない。好きになったのが可愛い物だっただけで』

『男が可愛い物を好きになっちゃいけないなんて言う訳じゃないよ!』

『好きだって思った物を否定するより、好きな物を大切にする、ずっと好きである事の何が悪いの!』


『そうなの?』


『うん!好きになる事に理由と性別は関係ないって、母さんが言ってた!』


『そっか、、、、良かった』

『ありがとう!!あき君!!』





『りんちゃん!大きくなったら、僕と結婚しよ!!』


『うん!僕もあき君と結婚する!!』


小さい子頃の僕の王子様、ずっと一緒に居るとあの時は思っていたんだ。




「りぃ!早く起きなさい!!学校遅れるわよ!」


5月下旬、まだ春の暖かさのある季節の朝、大きくそして聞き慣れた声が聞こえ僕は夢から目が覚めた。目が覚め、スマホに目をやる。


「んん、、、、ん、ふぁぁ、、」

「今何時??」


「、、、、7時半か、まだ大丈夫だけど、そろそろ起きんと」


時間を確認し、まだ残っている眠気に抗いながら、ベットから起き上がる。そして、制服が入っているクローゼットを開け、パジャマを脱いで制服を着る。教科書などが入ったリュックとスマホを持ち、2階から洗面台がある1階えと向かう。


火野莉衣ひのりい高校1年生。

高校生になって約2ヶ月、中間テストも終わり、小学校、中学校からの幼馴染達と同じクラスになり、それなりに充実した生活をおっている思う。

陽キャでも陰キャでもないし勉強は得意な方だと思うし、運動神経も良い方だと思う。家族仲も良く、友人だって居るが、ふとした瞬間に何処か、物足りない。何処か、寂しい気持ちになってしまう事がある。この気持ちはなんだろうか。


「ふぁ、、まだ眠いな。昨日はちょっと夜更かしし過ぎたかな」


そんな気持ちを他所に、あくびをしながら歯ブラシと歯磨き粉を取り、歯ブラシに歯磨き粉を塗り、歯を磨く。少々、眠いが我慢しながら、磨いていると、隣に人が来た。


真依まい姉?おはよ」


「おはよ、莉衣りい。まだ眠たそうだね?」


「うん、昨日ケーキ作り時間かかっちゃってさ」


「そう?ほどほどにしなよ?」


「分かってるよ」


優しく話しかけてきたのは2番目の姉で高校3年生の火野真依ひのまい。しっかりしていて優しくて、頼りになるけど怒らせたら1番怖い人なんだよね。


「(そー言えば、懐かしい夢見たな。何年前だっけ?)」


歯磨きをしながら、夢の事を思い出していた。夢のあき君と言うのは、、、、簡単に言えば僕の初恋の相手である。

男なのに、初恋の相手って可笑しいと思われるが、僕にとっては大切な初恋の人なんで。

あき君の本名も知らないしあき君と言う読みじゃなく兄弟全員が四季の名前が入っているからそう呼んでいる。あき君は僕が0歳から6歳までの幼馴染なんだよね。あき君は僕より1つ上で生きてたら今年で17歳高2だ。あき君は小1の時に転校してからの10年間もう会っていない。

会いたいけど、あき君の事、ちゃんと好きかって言われると分かんないけど、会いたいって言う気持ちだけはちゃんとある。

あき君は僕のこと、ずっと“りんちゃん“って呼んでた。理由はちゃんと莉衣りいって呼ばなかったからなんだけどね。その理由を知ってるのは、僕と家族とあき君ともう1人の大切な幼馴染だけ。


でも、もし会ったとしてあき君が僕の事を覚えている確証なんてないに等しい。でも、、、、、でも、好きな事を否定してくれなかった。むしろ、肯定してくれた。あの時の感謝を伝えたいな。何て、叶うはずがないのにね笑


「おーい、莉衣りい?もう5分も歯磨きしてんだけど?」

「母さんも早く朝ご飯を食べてって言ってるけど?」


「ハッ!考え事してた!ごめん、」


姉に声をかけられてちょとハッとしながら、口に水を含んで軽くすすぐ。すすいだ後、水を出してタオルで口を拭く。そして、リビングえと向かう。


ガチャ

「お母さん、おはよー」


「りぃ、おはよ。早くご飯食べなさいよ!」


「分かってるよ」


そう言って僕の定位置の椅子に座り、目の前にはご飯、お味噌汁、卵焼き、鮭の塩焼き、ほうれん草の胡麻和えが置いてある。


「いただきます」


手を合わせてすぐに箸を手に取り、卵焼きを一口大にし、口に含めば、砂糖の甘味と卵の旨味そして、ふわふわの食感が口の中で広がる。

いつも食べている味だけど、飽きない味で、好きな味である。


「うん、美味しい!」


「あら、良かった。沢山作ったからお弁当にも入ってるわよ」


「!本当!やった」


莉衣りいは本当、母さんの料理好きだなぁ」


「美味しい物はなんでも好きだし、」

「てか、羅衣らい兄今日大学行くの?」


「うん、単位取って早く卒業したいしなぁ」


「本当、莉衣りいは料理出来るんだし自分で作ったりしてくれないかしら」


「、、、、それは、出来ない相談だよ」


揶揄からかい口調で話しかけてきたのは4歳上の兄の火野羅衣ひのらい。少し意地悪だけど優しくて頼りになって手先がとても器用なんで俺にとっては大切な兄である。

そう思いながら、お味噌汁を口に含む。


「そうだ。りぃ、高校はどう?慣れた?」


「えっ?」

「うん、友達は居るし、部活は入ってないけど、全然学校生活楽しいよ?」


「それなら、良かった」


「まぁ、もし、莉衣りいにいじめとか怪我とかさせたら、容赦しねーけどな」

「ギッタンギッタンにしてやる」


「あら、羅衣らい、生ぬるいわよ。うちの子に手を出した事を後悔させないと」

「まずは、社会的に抹殺しなきゃね」


「お母さん、羅衣らい兄、落ち着いて、いじめなんてないから!」


笑顔で怒りのオーラを背負いながら怖い事を言う2人の宥める僕。やっぱり、本当、2人は僕に過保護過ぎるし、羅衣らい兄はお母さんにそっくり過ぎなんだけど!


「無理よ無理、あぁ、なったら母さんも兄さんも止まらないわよ」


真依まい姉は呑気にお味噌汁を啜らないでよ!」

「てか!居たの!気づかんかった!」


「この家に住んでれば気配を隠したり、無くしたりするスキルの習得なんて簡単よ」


そう言う真依まい姉の瞳は諦めが入っていた。流石、この親、兄にしてこの子ありだな。何て、思いながらふと、時計を見るとそこには、、、、


「!ヤバ!真依まい姉!もう7時50分!近いとは言え、早く行かないと!」


焦りながら真依まい姉の方を見ると既に。


「あら、私はもう準備してるわよ?」


「いつの間に!?(この人まさか、時間止めれたりしないよね!)」


「流石にそれは出来ないわよ」


「心読まないで!」


既にご飯を食べ終わり、鞄を持っていた。この姉、本当準備早いんだよな。

そう思いながら、急いでご飯とお味噌汁、卵焼き、鮭の塩焼き、ほうれん草の胡麻和えを口に掻き込み、水を含んでリュックを背負い、お弁当のランチパックを持って、家を出ようとしていたら。


「りぃ!ケーキ、忘れてるわよ!!」


そう急ぎながらいつもより時間をかけて遅くまで頑張って作ったケーキが入った入れ物を持ってくるお母さん。


「ごめん!忘れてた!ありがと!」

「そー言えば、お父さんは?」


「早くに仕事場行ったわよ!大事な会議があるみたいよ」


「そうなんだ!じゃ、行ってきまーす!!」


靴を履きながら受け取り、感謝をし、玄関を開けて家を出て、学校に向かう。

これが我が家の日常であり、我が家の家族である。

軽い足取りでケーキが崩れない様に走りながら、学校に向かった。








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