第13話 ついに決戦
「元凶の不審者を引きずり出せたんだもの、――徹底的に叩きのめして元に戻させてやるわっ!」
「おお! よーし、じゃあ俺も頑張ってやるぞ!」
「ほざけガキ共め! 貴様らはもはや生きて元の地を踏むことなど出来んぞ!!」
目を血走ったおっさんが、ローブも相まってホラー感出てる。
これエミ引きそう……。
「ちょっと怒らせ過ぎたんじゃ……。僕正直怖いよ」
「ビビってちゃ家にも帰れないのよ! なけなしの根性出してたまにはまともにカッコつけて見せなさい!!」
「な、なけなしって……。もうみんなしてさっ! やればいいんでしょもう!!」
ヤケになったのか、ショックガンを急いで取り出してモンスターたちに向ける。その顔は必死だ!
過去、エミがこれほどマジになったことがあっただろうか? たぶん無い。
「くっそぉ……これでもっ! 食らってぇええ!!」
ショックガンを構えて撃とうとするも、直前で目をつむったのかブレちまった。
「ふんっそんなもの……何!?」
エミが撃った電気が、何かデカめの球になって飛んでいく。
それはおっさんに当たらなかったが、その後ろにいたモンスターの一体に当たってスゲー音立てて吹き飛んでいった。
おっさんも驚いたけど俺も驚き。
え? あれってちょっと気絶するだけじゃなかったっけ?
そういえば、撃つ瞬間にエミが手に着けてるおっさんから貰ったグローブが光ったような……。
「そういうことね!」
「どういうことね?」
「理屈はわからないけど、ダカーシャさんから貰った銃と、あの不審者から貰ったグローブがいい感じに効果を高めあってあんな威力になったのよ!」
「そ、そうなのかな? でもこれってさ……」
「ええ! 私たち今結構ラッキーよ。間違いなくこちら側に風が吹いてるわ!」
おお! 吹きまくりだぜ!
部下をぶっ飛ばされたおっさんの顔がさらに険しくなってるような気がする。
あれ完全に頭に血が上ってるな。プッツンだぜ。
「キィサマらァアアアア!! 好き勝手ばかりしおって!!!」
「先に好き勝手したのそっちじゃん。こっちばっか悪いみたいな言い方してさ、だから友達いないんだ」
「黙れッ!!!」
ローブのおっさんは怒鳴り散らすと、腕を上げてモンスターたちに合図を送る。
「行け!!」
「ええ、別に来なくていいのに……」
「言ってる場合じゃないよ! どうする?」
「どうするも何も……逃げられないなら総力戦よ! 今の私たちなら全滅させられるはずだわ!」
襲い掛かって来るモンスターたち。
よく見たらデカいウサギ以外にも一つ目のコウモリみたいのもいるじゃん。
他にもスライム的な奴とかアレとかソレとか。
でも関係ねえ! この俺の腕のグローブが光るぜ!
「いっけえ!!」
ちょっと光るグローブからオーラ的な力がガンに伝わる、のかもしれない感じでモンスターに向かって……シュートッ!
当たったモンスターが吹き飛んでいく。これマジ効くじゃん。
「オラッ!! ブッとびなさいってのよ!!」
「ピキーッ!?」
アヤミが派手に電気の球をぶっ放す。すると凄い音が鳴った後、小さなトカゲみたいな奴をやっつけたみたいだ。
「わぁっ!? こっちも来たよ!! えぇい!!」
エミも負けじとショックガンをパンッ。
当たったゴーレムの一部が、なんとズバンッと壊れた! マジですげー威力じゃん!!
……どうなってんのこれ?
「ひるむな攻め続けろ!」
「ピキーッ!?」
「ピギャーッ!!」
「おりゃっ! おりゃりゃっ! おりゃりゃりゃりゃりゃっ!! ……りゃって俺何回言った?」
「ピ、ピキ?」
「答えは……数えて無いから俺も知らねえええ!!!」
「ピギャーッ!?」
そんなこんなで片っ端からザコモンスターを倒して、もう最後の一人。
そう、ローブ姿の不審者のおっさんだけだ。
……そういや、このおっさんって結局は名前なんなんだろう?
「く、クソガキ共が……。まさかこの私がここまで追いつめられるなんて……」
「甘く見たわね! どうよ。もうあんた一人よ!」
グギギっと歯を食いしばってるおっさんにショックガンを向けるアヤミ。
まるで刑事ドラマの刑事みたいだ。本人もその気になってたりして。
「とうとう追いつめましたね刑事!」
「は? 何言ってんの?」
「あっ、違ったや」
それはともかく、このおっさんを脅して早く元の場所に戻る方法を聞き出さないと。
「お前は完全に包囲されている。投降はやめて、おとなしく抵抗しろ!」
「逆だよ逆!? それに別に包囲もしてないし」
「細かいやつだなぁ。それはともかく、負けたんだから早く元の場所に帰してくれよ」
「負けただと? ふん、愚かな……」
おっさんの様子がおかしい。まだ余裕があるような……。
そう思った時、おっさんの手が何か光っていくのが見えた。
まぶしくなっていく光、それを俺たちに向けてくる。
「たかが子供がここまでやるとはな……! だが調子に乗るな! 貴様らなど私一人で十分。――これほどのマナ、受け止めきれるものなら受け止めてみろッ!!!」
叫んだおっさんの手がさらに光っていき、紫色のデッカい球になってる。
な、何だと!? あれを俺たちにぶつけるつもりなのか!?
「それはそれとして、マナってなに?」
「それとしないでよ! ……仕方ないから答えるけど、マナってのは確か魔力のことだったと思うわ。地球じゃ気以上に研究が進んでないから、私も詳しいことは何も分からないけど」
「それを集めて僕たちにぶつけようとしてるんだよ! きっと当たったら僕たちはやられちゃう! どうにかしないと!!」
え? それってまずいな!
でも今の俺たちができる事って……やっぱこれしかないか。
「三人で同時にこれを撃つぞ。そうするとなんかいい感じに勝てるかもしれない、かもしれない! というかそれ以外に思いつかない。もしどうしようもならなかったら、三人でお盆に家族の枕元に立とうぜ。案外パーティー感出て楽しいかもしれない」
「前向きなのか後ろ向きなのかわからないこと言うのはやめなさい! でも他に手もなさそうね……。力を合わせて、アレを打ち破るわよ! タイミングはきっちり合わせなさい!!」
「くぅ……! 死にたくないからやってみせるよ!!」
今ここに、なかよし散歩団の心が一つになった!
常に苦楽を共にしてきたこの三人組なら、どんな困難だって乗り越えられるはずさ!!
さあ、みんな一緒に応援しよう!!
「頑張れー」
「あんたも一緒に頑張るのよ!!!」
「狂ったガキ共め……! ――消し炭となるがいいィイイイッ!!!」
「こっちも……いっけぇえええ!!!」
ついに発射されたマナ球。
押し寄せて来るプレッシャーにエミが押しつぶされようになるも、それも全部押しのけてアヤミの叫び声と共に俺たちもタイミングを合わせて発射。
気合を入れてうなるグローブの光が銃に吸い込まれるように発射された球は、これまで以上に大きく見える。
……ってか、なんか撃った瞬間どっと疲れたような。ああ、これ持ってかれてるわ。
タイミングよく発射された三つの球。それが途中でぶつかり合ってさらにデッカくなっていく。
やがてぶつかり合うお互いの攻撃。その影響か、爆風的なのが起きてフロア内を竜巻でも起きたみたいに風が吹きまくる。
「うえ!? 口に砂ぼこりが入った!」
「我慢しなさい! やられるかどうかの瀬戸際なのよ!!」
「ああ死にたくないよお!!」
「負けてなるものか! 取るに足らない研究とあんなおもちゃの組み合わせでっ、私のマナが負けていいはずは……ないっ!!」
今ここに、お互いの意地と意地がぶつかり合う!!
まさに世紀の一瞬なのだ!!
決して押し負けてはならない、明日の平和を守るために!!!
さあ、みんな一緒に応援しよう!!
「頑張れー」
俺の声が通じたのか、俺たちの放った攻撃が相手の攻撃を押しのけ始めて、おっさんに向かって飛んでいく。
「な、何ィ!?」
俺たちの球とおっさんが自分で撃った球とが合わさって、たぶんとんでもない威力になっておっさんの元へ戻って行く球。
いやーこれ勝ちだわ。
「ば、馬鹿な!? そんな事があってよいはずはない!! くぅうううッ!!」
こっからじゃデッカくなった球のせいよくわかんないけど、おっさんの食いしばる声が聞こえる。
バリア的なの出して耐えてるのかな?
とりあえず応援しよ。
「頑張れー」
「いや頑張れじゃないのよ! 相手応援してどうすんの!」
「そうだよ! それにもし跳ね返してきたりなんかしたら――」
「ガアアアアアッ!!?」
「――あ。当たったみたい」
ついにおっさんの元へと到達した球は、けたたましい音を立てて爆発。
とっさに地面に塞ぎ込んだ俺たちは大丈夫だった。
少し顔を上げると、煙が立ち込めて全然前が見えない。
もう少しだけ、顔を下げてないと。
それからどのくらいの時間が経っただろうか? 多分一分くらい。
「……すぅ」
「寝てんじゃない! ……ほら、あれを見なさいよ。サダ」
「うっ……。う~ん」
アヤミに起こされ、指を刺す方を見ると……地面に倒れてるおっさんがいた。
「か、勝ったみたい……だね」
ちょっと心配そうなエミの声。こいつも心配性だよな。
よし、じゃあここは一発俺が勝利宣言してやろう。
「やったか……?」
「不安にさせるようなこと言わないの」
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