8月22日
喋ることができなくなった俺は今日の花火大会に行くか迷ったが、一生このままかもしれないと考えると悩んでいても仕方がないので結局向かうことにした。
「お、きた。アキ!」
声が聞こえた方向を見るとトモキの姿が見えた。ユウキはまだ来ていないのかと思ったがそんなことはなく、周りの人に隠れて見えなかっただけだった。なぜなら、俺が喋れなくされたのと同じようにユウキは宇宙人予言者に身長を低くされたからだ。
「ほら、めっちゃ面白いだろ?130センチくらいしかないんだって」
「笑うな。トモキは何も変わってなくていいけどな、アキも喋れなくなってるから2対1だぞ」
「悪かったよ。ほら、迷子にならないように手繋いであげようか?」
「だから…」
トモキは悪いと思いつつ笑いに変えてくれているのだろう。それにしてもこういう話にも入れないのは本当に嫌だな。
今世界では5人に1人くらいの割合で俺みたいな体の異常が起こっているらしい。もちろんもう宇宙人予言者の能力を疑うものはいない。
打ち上げ花火なんて久しぶりに見たな。この振動が胸に響く感覚。花火を見ていると耳が聞こえなくなったり目が見えなくなったりしないで本当に良かったと思う。そういう人も大勢いるらしいからな。
花火を見ていい感じの雰囲気になっているところでトモキが話し始めた。
「アキは喋れなくなっちゃったし、こういうことが続くかもしれないって考えたらやりたいことは早めにやっておくべきだと思うんだよ」
そうだよな。体に異変が起きた人の中には体力が著しく無くなった人や体が部分的に動かなくなった人もいるという。俺はまだマシな方なんだ。
「だから明日からは後悔のないように遊び尽くすぞ」
「そうだね」
俺は喋れないのでチャットで同意する。そしてもう一生喋れないのかもしれないと考えると再び恐怖が襲ってきた。治ってくれるといいけど。
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