8月19日
「だから、ここは東京じゃないんだから学生が遊べる場所なんてないの」
明日には帰るから実質石川県で遊べるのは今日が最後になる。俺は今日もミトさんに呼ばれ近くの図書館に来ていた。ここには前にも来たことがある。田舎に似合わない大きさと本の数があって小さい頃の俺には遊園地のように見えていた。
「ねぇ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか。俺たちは前はどこで会って何をした仲なんですか?」
ミトさんは黙っていて教えてくれない。
「何回遊んだとかは?」
「1回だけ」
1回だと。なんだ怒ってるから結構仲が良かったのかと思ってたけど、それなら覚えてなくても仕方ないだろ。
「それで、なんで図書館なんかに連れてきたんです?」
「この辺で学生が遊べる場所、強いて言うならここくらいかなって」
図書館で遊ぶか、まあ勉強している人とかならいるだろうな。
ミトさんはたくさんある本には目もくれずスタスタと階段を上がっていく。2階は1階よりも本棚の高さが低く、机や椅子も小さくなっている。
「ここって子供エリアですよね。何か探している本でもあるんですか?」
ミトさんは本を探そうとはせずに部屋の角にある本を読むスペースに座り、顔を下に向けた。
「何してるの?」
そう言いつつ俺は何故か既視感を覚えていた。その光景見たことある気がする。この場所、この席で女の子がうずくまっている。
あれはおそらく小4の頃、何か遊べるものはないかとこの図書館に来た俺は、本も読まずに椅子に座って涙を浮かべる女の子を見つけた。
「泣き虫!何やってるんだよ」
「泣いてない!」
1つを思い出すと断片が繋がり、どんどん記憶が鮮明になっていく。
「あの時の…友達できなくて泣いてた女の子か」
「ここまでしてやっと思い出してくれたか、遅かったね」
「なんだあの子だったのかー。スッキリしたー。それで、あれから友達できたの?」
「一昨日までは1人いたよ」
「…」
そういえば俺が友達になるとか言ったんだっけか。初めてあった子に何言ってるんだよ小学生の俺は。
思い出してからチクチクしていたミトさんはなんだか穏やかになった気がする。それで余計に悪いことをした気分になってきた。
「ごめんよ」
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