8月18日
『10時に絶対に来ること!』
あの人映画出てくれるだろうか。なんか怒ってたからな。しかし、実際誘ってくれたのはありがたい。普通なら余所者の俺が流しそうめんなんていう地域コミュニティーの場に参加することはできないからな。
待ち合わせの橋に行くとすでに昨日の女の子が待っていた。
「遅い!」
時計を見ると9時50分の表示だ。
「まだ10分前じゃないか」
俺がスマホの画面を見せながら言うと彼女は何故か恥ずかしそうにして謝ってくれた。
「君名前は?」
「水戸さな」
「ミトさんね…」
名前まで聞いて覚えてないだといよいよ俺が悪いな。
「俺達は何年前にどんな関わり方したの?」
「自分で思い出しなさい」
また怒らせちゃった。
流しそうめんをする会場はなにに使うかわからないイベント会場みたいなところだった。小学生の頃にも何度か来たことがある。すでに近所の子どもたちが集まっているようだ。
「さなちゃん!来てくれたんだね。隣の君は?」
運営のおじさんらしき人が話しかけてきた。
「東京から遊びに来ているんですって。暇してるみたいだから連れてきました」
「そうか、歓迎するよ。さあもうすぐ始まるよ」
高校生は俺たちだけみたいだ。田舎だからそもそも人が少ないっていうのはあるだろうけど、まあ家でゲームやってたほうが楽しいよな。
「ねぇ、この近くで高校生が集まってる場所とかない?」
「こんな田舎にそんなところないよ。遊びたいなら自転車で1時間くらいのところに映画館があるよ」
小学生の頃ここに来た時は同い年くらいの子が結構いたから皆家に閉じこもっているんだろうな。
「はじめまーす!皆位置についてください」
めんつゆの入った容器と箸を持ち、子どもたちに気を使って竹の後ろの方に立った。俺の前にミトさんが割り込んできたが、もしかして俺までそうめんが届かないようにでもするつもりだろうか。
案の定俺たちのところまでそうめんは届かない。子どもたちが後ろの気を使うわけないもんな。
「そうめんって汚くないか?前の人の箸についた唾がここまで流れてきてるわけだろ。どう思う?」
「たしかに、食べる用とそうめんを取る用の箸を使い分けたほうがいいかもね。もう遅いけど」
俺は潔癖症ってわけじゃないが意識すると気持ち悪くなってきた。
「なあ、室内にこれから流すそうめんが置いてあったんだけど」
そうして俺達は子供たちが楽しんでいるのを見ながら普通にそうめんを食べるのだった。
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