8月16日

昨日祖父の家に行くことを決め、現在新幹線に乗っている。このスピード感の理由は決して俺に行動力があるからではなく、次のバイトの日が21日だから少しでも長く石川にいたいからだ。いつ帰るかはまだ決めていないが最長でも今日入れて5日しかない。

それにしても新幹線に一人で乗るのは初めてだ。意外と混んでいないな。お盆休みの終わりだから帰ってくる人は多くても今から行く人は少ないということか。でもそのおかげで自由席でも窓側に座ることができた。このまま誰も隣に座ってこないでくれよー。

この時間のために漫画を家から持ってきている。これで2時間半退屈しないで済む。お、もう大宮に着いたのか。ドアが開くと何人か降りていき、それより多い人数が乗ってきた。まあ他がまだ空いているから俺の隣には誰も来ないだろう。そう思っていた。が、予想は外れ俺の隣には60歳くらいのおばさんが座ってきた。

なぜだ、もう窓側は残っていないだろうが、3人席に1人しか座っていないところがいくつか見える。そこなら真ん中を開けて座ることができるのになぜこのおばさんはわざわざ2人席の俺の隣に座ってきたんだ。窓側の席は景色を楽しめるという理由で他より良いが隣に知らない人が座ってきてしまうと話は別だ。壁と人に挟まれて急に窮屈になる上、トイレにも行きづらくなる。このおばさんはどこまで乗るつもりだろうか。途中で降りてくれるといいけど。

「ガム食べる?」

東京から1時間ほど経ったとき隣のおばさんにそう話しかけられた。

「いえ、いらないです」

「あら、そう。遠慮しなくていいのに」

なんか話しかけられたー。これが年寄りのノリってやつなのか。

「ゲッゲー」

突如おばさんがゲップをした。

「あらーいい音が出たわ」

しかも変な人だったー。周りの乗客からおばさんに視線が集まっている。

「その漫画私に貸していただけない?」

「ええ、いいですよ」

俺は読み終えた1巻をおばさんに渡した。これで静かになってくれたらありがたい。

さらに30分が経った、地獄だ。隣ではおばさんが漫画を読んで大泣きしている。それギャグ漫画だぞどこに泣く要素があるんだよ。

「泣けるわー!こんなに泣いたのはいつぶりかしら。面白かったわ。貸してくれてありがとね。あら、2巻も持ってるの?それも貸してくれる?」

「え、ええいいですよ」

「ありがとうー。あなた優しいのねこれで金沢まで暇にならないわ」

金沢…あと1時間このおばさんが隣にいることが確定した。

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