8月13日

夏祭り、トモキのデートのぞき見作戦当日だ。

「おい、田中さんもう来てるぞ。トモキはなにやってるんだ」

ユウキと一緒に2人が待ち合わせしているところを覗くと見えるのは田中さんのみ、あと3分で待ち合わせの時間なのにトモキの姿は見えない。どうせ時間ギリギリまで普段気にしない身なりを整えているんだろう。

「ちょっと電話してみるね」

そう言ってユウキが電話をかけ、俺にも聞こえるようにスピーカーにしてくれた。

「おい、なにしてるんだよ。もう時間だぞ」

『わるいわるい、ちょっと準備に時間かかって。あと、お前ら見てるのはいいけど邪魔だけはするなよ』

走っているのか少し息を切らしている。

「わかってるよ」

「トモキ、会話聞いていたいからこのまま電話切らないでね」

『わかった。もう着くよ』

少し経つと俺たちにもトモキの姿が見えた。

『ごめん、待った?』

『いや、今来たところだよ』

おい、そのセリフは立場が逆だろ。始まりから雲行きが怪しいな。

『それじゃあ行こうか』

二人の会話はあまり弾んでいるとはいえなかった。2人でも断らなかったくらいだからそこそこ仲が良いのかと思ったが、俺たちと一緒にいるときと同じ感じだ。

途中2人が離れたときにかっこいいところ見せろと伝えてみたが、射的はまったく当たらないし、金魚も一匹も取れない、それを見て俺たちはゲラゲラ笑っていたが2人は大丈夫だろうか。2人の会話は気になるが自分たちも祭りを楽しみたいので30分くらい通話を聞かずにユウキと楽しんでいた。その後はトモキたちに気づかれずにどれだけ近づけるかで遊んだ。結果はユウキがほぼ隣まで近づき、なんとそこで3ショットを撮って帰ってくるという高等テクニックを披露して優勝した。

「なあ、そろそろトモキたちの会話聞いてみよう」

「そうだね」

この少しの時間でどのくらい仲良くなったか音量を上げて確かめてみる。

『俺と2人で楽しかった?』

『うん、最初は緊張したけど…楽しかったよ。誘ってくれてありがとう』

「もう帰るみたいだね」

『トモキくんはなんで私を誘ってくれたの?アキくんとユウキくんとも遊びたかったでしょ?』

『あいつらとはいつも一緒にいるから、たまには他の人とも遊びたいよ』

『だから私を誘ってくれたんだ』

『うん』

『本当にそういう理由?』

あれ?なんかいい流れじゃないか?

「えーもしかして告白イベント?好きじゃない男と2人で祭り行くかなとは思ってたけど、やっぱりそういう事?」

「トモキ告白するのか?それともなんだか田中さんが積極的だし向こうから告白してくるか?」

少しの間沈黙が続いている。俺たちは次の声を楽しみに携帯を凝視していた。

その時、ゴソゴソ音がしたと思ったら次の瞬間。

「あ!あいつ電話切りやがった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る