8月12日
夏休みは半分が過ぎたというところ。撮影は順調。宇宙人予言者がいてもいなくても最高に充実した夏休みだ。
「それにしても暑いなー。一昨日雪が降った時は涼しくなったのに」
「また雪降らないかなー」
ユウキはそう冗談を言う。本当は予言なしに降るわけがないことはわかっているだろう。休憩中の俺たちのもとに日傘を持った田中さんが戻ってきた。片手ではペットボトルを抱えている。
「水買ってきたよ、ほら」
そう言って俺たちに水を渡してくれる。
「あ、ありがとう」
田中さんの性格はまだちょっとわからない。もしかすると不思議ちゃんってやつなのかもしれないな。笑っているところを見たことがないし正直あまり楽しそうではない。なんでこんな身内ノリのような映画製作に手伝ってくれたのか。まあ、まだ関わりが浅いのはあるだろうが。もし俺たちが女の子だったらもっと笑顔を見せてくれるのだろうか。
「そういえば明日は祭りがあるよな」
そうトモキが話を切り出した。
「田中さんは誰かと行くの?」
「べつに、その予定はない」
「そうなんだ。なら俺と2人で行かない?」
薄々勘づいてはいたがトモキはこの田中さんのことが気になっているんだろう。2人は夏休み前から面識があったみたいだからその時からか。
「2人?でもトモキくんはそこの2人と一緒に行くんじゃないの?」
ほぼ告白みたいなものだったが田中さんは気づかなかっただろうか。
「あーいや、僕達は…わざわざ3人で行かなくてもいいかなって話になったんだ。だから気にしないで2人で行ってきなよ」
ユウキがすかさずフォローした。ナイス。
「そうなんだ…じゃあ、一緒に行く?」
「本当に?やったー、楽しみ!」
これは意外、田中さんはもっとツンツンしていると思っていたが…
もちろん、2人の邪魔にならないように明日は家でじっとしていよう。ってそんなわけあるか。そんな面白そうなもの見に行くに決まっているだろう。俺はユウキと目を合わせた。明日が楽しみだ。
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