暗黒よりも暗い黒
てると
暗黒よりも暗い黒
紺色に金の煌めく箱の煙草を吸い、ピンクの睡眠薬デエビゴを飲んだが寝付けなかったので、水と肌色の装丁をした短編集に入っている晩年の芥川の『蜃気楼』を五感で読み解いていた。
空腹を覚えたので、梅味の柿の種を買おうとコンビニに出かけることにした。白いカバーをしたスマホを見ると時刻は午前三時台であった。集合住宅の階段に出ると、なぜか下の階の住人のものと思しき物音が、階段から鳴っていた。白い凹凸の壁を見やりつつ、どうしてこんな時刻に住人は起きているのか?階段で何をしているのか?と、心音は上がり不穏になった。ようやく部屋に入っていったようだったので、降りていった。
外に出ると、どうしたことか、目の前の押しボタン式の信号機に、片側一車線の国道であるにも関わらず、-こんな時刻に、-五台も六台もライトを照らした車が停まっていた。春に観た古いアニメ映画のワンシーンを想い出しつつ、なにか善いとも悪いともつかないものに化かされたような不気味さに苛まれた。雨による歩道のシミは黒く、あたかも生物のように感じられた。
梅味はなかったが柿の種を買うと、部屋に戻った。途中、集合住宅に出入りする人影があったので、仕方なく路地に隠れる一幕があった。
眠りにつくと夢を見た。高層ビルの中で、そして緑の草原のある路で、どこに行っても何かが追いかけてきて恐怖していた。その「何か」は、暗黒よりも暗い黒で地面や空間を裂き出現し、そこから飛び出してくる「何か」が私を呑み込むのだった。
…目が覚めて、あれは復讐の神だったんだなと思った。そして、半日はあの暗黒が視野から離れなかった。
暗黒よりも暗い黒 てると @aichi_the_east
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