　ただ駆けた。ひたすらに駆けた。

　右手ニハ湿ツタ麻袋。

　棄てる訳にはいかぬ気がした。

　石段で何度も躓き、膝から血が滲む。

　赤い傷口に刺さる小石。

　朱い空と同じ色。

　　　姦姦……

　姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦

　鎮守の森には、手を繋いだ女の群れ。

　一様に首は無い。

　負ケテ悔シイ花一匁……

　勝ツテ嬉シイ花一匁……

　売レテ嬉シイ花一匁……

　売ラレテ熟レテ花一匁……

　痒ミガ止マラン……

　長血ガ治ラン……

　相談シテモ、モウ治ラン……

　何だ!?

　　　　　　　　ハァハァ

　何なんだ!?　アレは!?

　　　　　私は知らん……!!

　　何も……ハァハァ……

　　　　　　　知らんぞ!?

「御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様」

「ワタクシヲ忘レニナッタノデスカ!?」

「貴方様ヲ信ジテ、裏切ラレ、弄バレ、襤褸襤褸二ナッタワタクシヲ……」

「……ヨモヤ忘レタトハ云ワセンゾ……？」

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