還リハ怖ィ 弐

 何ダコレハ? 一体ドウナツテヰル?


 ぎゃあぎゃあと頸の孔から鴉の声がする。悲鳴がする。寒気がする。


 ぎゃあぎゃあと哭く聲に混じって、聞き覚えのある声がする。


 御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様御兄様


 忘れる訳もない。醜女の奇異奇異聲だった。


 しかしそれならば、コレは一体何だと言うのか……?


 ジロリと目だけ動かして、麻袋に視線を落とすと、まるでクスリと嗤うかのように、甘媚に麻袋の面が揺れた。


 姦、姦、姦……


 鎮守の森から釘の音が響く。


 暗がりに目を細めると、そこには女が立っている。


 頭の頂辺てっぺんに五寸釘。


 右手には金槌。


 それが五寸釘を打つ音が……


 姦姦蛇螺ぁ〜姦姦蛇螺ぁ〜と響いてくる。



「御兄様御兄様御兄様……!? 逝けません……成りません……! 頸の無いモノの聲を信じては逝けません……!」


「わたくしには、立派に頸が在るではありませんか!? こうして頸から上の口でもって、話しているではありませんか? 彼らを信じては成りません。逝けません……! うふふ」


 奇異な聲が、麻袋の中から聞こえてくる。


 うふふふふふふふふふふふふふふふふ

 うふふふふふふふふふふふふふふふふ

 うふふふふふふふふふふふふふふふふ

 うふふふふふふふふふふふふふふふふ


 壊れたレディオのように、最早同じことを繰り返すだけの麻袋。


 森には化け物、背後にお囃子。


 足元の頸ナシ鴉が此方を見て悲鳴をあげた。



「詣ス詣ス、禁忌二坐ス艮様二、詣ス詣ス」


  「頸ヲ納メヨ……頸ヲ納メヨ……」


     汝、頸ヲ奉納セヨ…


         頸

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