第10話 嫉妬

 今日旦那以外の男と肌を重ねてしまった。

 一回だけじゃない、連続で4回も求められた。

 正直、レイくんとのエッチは旦那同じくらい、いやそれ以上に気持ちよかった。

 けど、罪悪感に押しつぶされそう……。


「アリサさん、めっちゃイッてたね」

「……だ、だってレイくんの気持ちいいんだもん」

「はは、そうですか、俺もアリサさんとエッチすんの気持ちよかったよ」

「そう……なら良かった」


 アタシたちはシャワールームで体を清潔にしてから、

 ホテルを後にする。

 

「じゃあアタシ、こっちだから」

「はい、今日はありがとうございました」

「こっちこそ、相手してくれてありがとう。じゃあね」


 

 ◇◇◇





 レイくんと別れて、自宅に戻ってきた。

 はぁ……なんか落ち着く。

 さてと、ご飯作ろうっと。

 

 玄関で靴を脱いでリビングに向かうと、


「……」


 リビングのソファに旦那の護くんが座っていた。

 彼は深刻そうな表情を浮かべていた。

 ん? どうしたんだろう?

 何かあったのかな?

 あっ、もしかしてミカって人に振られたのかな?

 ふふ、ザマァ見ろ。


 なんてことを思っていると、護くんが話しかけてきた。


「こんな時間まで何してんたんだよ? 男と遊んでたのか?」

「……」


 護くんの質問に思わず黙り込んでしまう。

 アタシの反応を見て、護くんは絶望に染まった表情になる。


「なぁ……答えてくれよ。男と遊んでたのか?」

「うん、そうだけど」

「っ……そ、そっか」


 アタシの返答にショックを受けている様子だった。

 え? なんでショック受けてるの?

 もしかして嫉妬してる?

 いや、そんなまさか……。

 だってもう護くんはアタシのことなんか好きじゃないはず。


「今日会った男、どんな奴なんだ? イケメンか?」

「うん、イケメンだけど」

「俺よりイケメン?」

「うん、護くんよりイケメンだよ。イケメンで、高身長で、優しくて、聞き上手で、エッチも上手で」

「え、エッチだと……? お前、エッチまでしたのか?」

「そうだけど、悪い?」

「……」

 

 アタシの言葉に護くんは黙り込む。

 本当はアタシのこと責めたいんだろう。

 『なんで浮気したんだよっ』と問い詰めたくて仕方ないけど、護くんにはそれができない。

 だって彼も同じ罪を犯したから。

 そう、最初に浮気したのは護くんだ。

 この最悪なストーリーを作ったのは彼。

 

 もしアタシのこと責めたら自分のしてきたことを否定することなる。

 だから浮気したアタシのこと責められない。


「今日会った男と俺、どっちのほうが気持ちよかった……?」

「は? なんでそんなこと聞くの?」

「いいから答えてくれっ!! どっちのほうが気持ちよかったっ……」

「そりゃレイくんのほうが気持ちよかったけど」


 アタシがそう言うと、護くんの顔色が青ざめる。

 ショックで言葉を失っていた。

 よく見ると、涙目になっていた。

 

 え? ま、護くん、泣いてる……。

 そんなにショックなの?


「ほ、本当に俺よりレイって男のほうが気持ちよかったのか?」

「うん、レイくんのほうが気持ちよかったよ。気持ち良すぎて連続で4回もシちゃったな」

「よ、4回っ……。俺のアリサと4回もっ……クソっ、なんだよそれっ……」


 突如、護くんはリビングのソファから立ち上がり、アタシに近づいてくる。

 え? なんで近づいてくるの? もしかしてアタシのこと殴る気……?

 護くんはアタシに近づき、ギュッと強く抱きしめてきた。

 久しぶりにハグされて、思わずドキッとしてしまう。


「頼むよっ、アリサ。もうレイって男に会わないでくれっ……」

「……」

「もう二度と浮気しないからっ……だからずっと俺のそばにいてくれっ」

「護くん……」


 護くん、そんなにショックだったんだ。

 正直、嫉妬している護くんを見るのは楽しい。

 嫉妬するってことはまだアタシのこと好きでいてくれてるってことだもんね。

 そっか、護くんもまだアタシのこと好きなんだ。


「本当に浮気しない?」

「ああ、絶対しないよ。ミカちゃんの連絡先はブロックするし、二度と話さないよ。いや、もうバイト辞めて、ミカちゃんと会わないようにする。だから頼むよ、もう浮気しないでくれ」

「うん、わかった。もう他の男の子とはエッチしない。けど、また護くんが浮気したら、アタシも浮気するからね? わかった?」

「はいっ……わかりました。二度と浮気しません」


 護くんはアタシの肩を掴み、そっと唇に顔を近づけてくる。

 えっ? もしかしてキスしようとしてる……?

 アタシは慌ててキスを拒絶した。

 

「え? なんで……? 俺とキスすんの嫌なのか?」

「ううん、嫌じゃないよ。けどアタシ、さっきまで他の男とエッチしてたんだよ? キスすんの嫌じゃない?」

「いや、それでも今すぐアリサとキスしたい」

「ほ、本当に……? いいの?」

「うん、キスしよ、アリサ」

「う、うんっ……」


 アタシは瞼を閉じて、唇を護くんに差し出す。彼はそっと顔を近づけて唇を奪ってきた。

 アタシは彼の唇を受け入れる。


 護くんとキスすんの久しぶりだな。

 やっぱりこの人とキスするの一番落ち着く。


 そっとアタシたちは唇を離す。


「護くん、浮気してごめんね……」

「いや、謝らなくていいよ。悪いのは俺だし……。けどもう浮気するなよ?」

「うん、しないよ。護くんこそ浮気したらダメだからね」

「ああ、わかってるよ」

「じゃあほら、仲直りのキスしよ」

「うん」


 再びアタシたちは顔を近づけて、仲直りのキスをする。

 この浮気をキッカケにアタシの中は更に良かった。

 結果的に見ると、いい経験だったのかな……?

 うーん、それはないか。

 

 

 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大好きな人に浮気されたので、自分も浮気します! 理亜 @ria012345

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ