第5話 レッドグリズリー

 リーダーのホブゴブリンがレッドグリズリーに向かって行くのを見た俺は、回り込んで攻撃しようと動いた。


 他のゴブリンもリーダーのホブゴブリンが言っていた事と同じ事を思ったのか、レッドグリズリーに向かって行った。


 スキルが無いとはいえ、ステータスはかなり高い。


 どの位が生き残れるんだろうか。


 そう思い、俺がその1匹にならないようにしようと決意し動いた。


 リーダーのホブゴブリンは盾をうまく使っているのか、レッドグリズリーの攻撃をいなしていたが、少しづつダメージが入ってる様だ。


 早く決着を付けないとまずいな。


 ゴブリン達も次々にやられていっている。



 

 レッドグリズリーが現れて、どの位経っただろうか。


 もう他のゴブリンは数匹しかおらず、リーダーのホブゴブリンもかなり限界にきているのか、座り込んで動かなくなっていた。


 一応、レッドグリズリーのHPも削れているが、こちらの攻撃があまり効いたいないのか、ダメージが少ない。


 もう限界かな。


 そう思い他のゴブリンからスキルを奪って逃げようとしている時、リーダーのホブゴブリンから声をかけられた。


 「おい、逃げるんなら今のうちだぞ。これ以上数が減ったら逃げられなくなる」


 「何で今なの?もう少し前なら簡単に逃げられたし、ここまで数を減らす事もなかっただろうに」


 「ああ、それはお前ならそう思っていそうだなと考えてたからな。それに惚れたメスにかっこつけたかったのもあるしな。はははっ、それにここにいたやつらも全員とまではいかなくとも、お前に死んでほしくないって思ってただろうよ」


 そんな事を思っていたのか。


 それに逃げたい事も。


 は~、何だかなぁ。


 そんな事を言われて、逆に逃げたくなくなってしまうのは。


 昔、というか前世でもそう思っていたな、何故か他人がやっている事は何となくやりたくなくなるのは。


 「逆張り精神だったけ?」


 「何か言ったか?」


 「いや、何でもない。今のを聞いて何となく逃げたくなくなっただけだから」


 リーダーのホブゴブリンは俺の言葉を聞いて、俺を見てきた。


 「別にあんたが好きってことはないから。ただ単に逃げたくないって思っただけだからね」


 「ははっ、そうか。なら俺もこんな格好をしていては恥だな」


 何となくかっこいいと思ったが、俺は男だと心の中で思いつつ、レッドグリズリーを見た。


 「レッドグリズリーも感動のシーンは待っていたのかね。少しだけだけど休めたから助かったよ」


 リーダーのホブゴブリンはそう言って立ち上がった。


 無理をしているのが分かるぐらい、足はふらついていた。


 他のゴブリン達も少し笑いながら、「おれもやるぞ」「なさけないぞ」何て話している。


 なんかいいな。


 こういうの。


 少しゴブリンの事を見直し、レッドグリズリーを見た。


 レッドグリズリーは血を流しながらこっちを睨んでいた。


 あと少しかな。


 そう思い、他のゴブリン達と攻撃をしていた。


 腕を振り回し、抵抗してきたが出血が多く出たのか地面に倒れこんだ。


 「やった~。勝った~」


 勝てた事が嬉しくなり、大声を出して喜んだ。


 他のゴブリン達もはしゃいでいる。


 ああ、俺がオスだったらな。


 そう思い、目をつむっているとリーダーのホブゴブリンが声を掛けてきた。


 「なあ、進化してここから逃げろよ」


 俺はびっくりして、リーダーのホブゴブリンを見た。

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