第051話 その他大勢<<同僚<<<<ヘレン
夕食を終えた後は3人の勉強を見た。
今回初めてアデーレの勉強を見たのだが、アデーレは筆記試験の方は問題ないように思えた。
多分、8級と言わずに7級も十分に受かるだけの力はありそうだ。
「アデーレは問題ないな」
「筆記は自信があるわ。でも、問題は実技……圧倒的に経験が足りないわね」
実技試験はなー……
「今日見る限り、センスがないわけじゃないが、経験不足は感じたな……」
1日でインゴット1個とレンガ3つだったし。
9級ならもうちょっとやってほしいところだ。
「だから来月の試験は微妙って言ったのよ」
「まあ、こればっかりはなー……それまでに数をこなすしかないな。アデーレは明日から筆記対策はいいからポーションかインゴットを作れ。材料は支部経費でいい。そのあたりはどうせまた依頼が来るからそれを納品すればいいだろ」
ポーションもインゴットも日持ちするから問題ない。
というか、普通はそれらを材料にしたアイテム作成の依頼も来るからストックしておくものだ。
「なるほど……じゃあ、そうしようかしら」
今日はこんなもんだな。
「よし、今日の勉強は終わり。これ以上やっても意味ないだろう」
「疲れたー」
「頑張りましたねー」
レオノーラとエーリカがぐったりする。
「お疲れ。レオノーラ、ちょっと電話を借りてもいいか?」
「いいけどー? こんな時間にどこに電話するの?」
「ディナーの予約」
「へー……まあいいよ。おいで」
俺達は勉強会を終えることにし、立ち上がると、エーリカの部屋を出た。
そして、3人で2階に上がると、アデーレとも別れ、レオノーラの部屋に入る。
「ジーク君、ディナーって誰と行くの?」
「アデーレ。手紙のやりとりで食事に行こうっていう社交辞令……じゃない、誘ってたのが現実になった」
「へー……なるほどね」
「まあ、例のやつの侘びも含んでいる。サイドホテルの最上階を取るんだ」
「おー! あそこかー! 行けなかったところだ。いいなー……」
アデーレがそう言ってたな。
「9級に受かったらレオノーラも連れていってやるぞ」
「おー……エスコートしてくれる?」
「それは無理だ。作法を知らん」
貴族じゃないし。
「手を取ってテーブルまで連れていってくれるだけだよ」
「ならできる」
さすがの俺でもできるだろう。
「ワイン、飲んでいい?」
「自分で帰れるくらいの量までな」
この前みたいなのを連れて帰るのはごめんだ。
「よーし、頑張ろう! ちなみに、エーリカも?」
「エーリカが受かってお前が落ちる可能性やその逆もあるから別々だがな」
「ふむふむ……確かに空気が悪そうだね。落ちた私も気を遣うよ」
落ちるなら自分か。
まあ、レオノーラは準備が遅かったからな。
「そういうわけで電話を借りるぞ」
「どうぞー。私はお風呂に入ってくる。電話が終わったら勝手に帰っていいからー」
レオノーラはそう言って、浴室の方に行ったのでサイドホテルに電話をかけ、予約を取った。
「普通に空いてたな……」
「良かったですね。早速、アデーレさんに伝えましょう」
「明日でよくないか?」
「多分ですけど、待ってますよ?」
そうなの?
あー……確かに電話を借りることを聞いていただろうし、待ってるかもな。
「こんな夜更けに女性の家を訪ねるのは気が引けるな」
「女性の家で何を言っているんですか? 今さらでしょ」
確かにな……
俺はレオノーラの部屋をあとにすると、目の前のアデーレの部屋の扉の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。
すると、すぐに扉が開かれ、アデーレが顔を出した。
「さっきぶり」
「そうね。どうしたのかしら?」
「さっき電話して予約が取れたわ。週末の7時な。仕事のあとに行こう」
なお、俺は6時にしたかったが、ヘレンに『女性は時間がかかるものです』と言われたのでこの時間になった。
「わかりました。楽しみにしています」
「ああ。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
アデーレが笑顔で頷き、扉を閉じたので階段を降り、自分の部屋に戻った。
そして、湯船にお湯を溜め、風呂に入ってゆっくりする。
「あー、疲れた……」
転生したが、風呂のある世界で良かったわ。
疲れを取るのにはやっぱ風呂とサウナだわ。
サウナ作ろうかなー……
「お疲れ様です。お仕事に加えて、おく……お弟子さんの勉強を見るのは大変でしょう?」
「まあなー。でも、あいつらはやる気がある。だったらそれに報いてやりたいと思う」
できることは少ないが、やれるだけのことはするつもりだ。
「変わりましたねー」
「どうだろ……? でも、人間性を見るようにはなったな。俺はこれまで人を決めつけすぎていたのかもしれない」
「エーリカさんもレオノーラさんもアデーレさんも優しくて良い人ですよ。あの怖そうな元軍人の支部長さんもじゃないですか」
確かにな……
「俺は出世を諦めたし、当分はこの地で生きていくことになるだろうが、人に恵まれたな」
「はい。思うんですが、ジーク様はこういうところの方が合っている気がしますし、それに合わせてくれるおおらかな女性が良いと思いますね」
ふーん……
「お前は可愛いなー」
こんなにまで俺のことを考えてくれている。
「……やっぱり私が邪魔な気がする」
「そんなわけないだろ」
なんてことを言うんだ!
お前が生きがいだというのに!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます