第4話 異世界のような場所

 この夢は自分が《異世界》のような場所で、夢と分かってもなかなか覚めなかった話です。


 青い空、ゆったりと流れる雲。

 目を開け最初に映った光景です。


 体を起こすと、そこは少し小高い丘の草原のような場所です。爽やかという表現が似合うそよ風が、草原と自分をゆっくりと通り過ぎています。


 立ち上がり周囲を見回すと、丘の下の方。

 遠目でも分かる白を基調とした中規模程度の街が見えます。


 その街から少し離れた場所には、同じく白を基調とした高い尖塔が複数あるお城が見えます。


 自分はひとまず、街へと足を向けました。

 と言うよりも風に乗って向かったという表現がピッタリです。

 まだ、この時点では夢だと気が付いていません。

 

 街に着くと、舗装などはされていない幅の広い通りがあります。恐らくここがメイン通りだと感じました。

 両サイドには、高くても三階建ての建物が複数建ち並んでいます。人通りも割とあり、旅人のような人も行き交っています。

 所々に露店もあり、色んな所からいい匂いがしてきます。


 夢から覚めそうになるのは突然で、この辺りから段々と夢だと言う事を認識していきました。


 そして、完全に夢だと分かると、夢の覚める時間が迫っている事を感じました。こう言う機会はあまりないのではと思った自分は、できる範囲で行動を取ろうと考えました。


 まず最初に思ったのは、この場所がどこか? と言う事です。そう思い、確認するために宿屋のような建物の表を、竹箒で掃いている、ふっくらとした女性に声をかけました(年齢は恐らく30〜40くらいの方でした)。

 言葉が通じたようで話ができます(話が出来たのは、自分の言葉があちらの言葉に変換されたのではと勝手に思っています)。


 自分「あの、すみません。この街は何と言うのですか?」

 女性「? 知らないのかい? もしかしたら旅の人かい?」

 自分「そんな感じです……」

 女性「ここは─────だよ」


 この時、女性の言った言葉が雑音が入ったように聞き取れませんでした。なので、もう一度聞きました。しかし、やはり結果は同じであり、街の名前は分かりませんでした。

 結局、これ以上聞く事を諦めお礼を言うとその場から離れました。

 すると、今度は露店の男性が声をかけて来ました。

 年齢は20〜30と言ったところでしょうか。串に刺した何かの肉を焼いています。


 男性「おい! そこの人! この串いらないかい?」


 この時、自分は当然お金などなく──


 自分「──お金を持っていないので……」

 男性「!? お金を持ってない旅人なんて珍しいな……。なら、金はいいや! ここの名物だから食べていきな!」


 

 そう言うとその何かの肉が刺さっている串を頂きました。自分はお礼を言うとそれを口に運びました。 

 見た目はソースなどはなく、シンプルに塩だけの味付けでした。


 牛肉ほど柔らかくなく、多少筋肉質の少し硬めの肉でした。地球で表現すると、ジビエ肉のような感じで、食感的には猪の肉に似ています。

 ただ、臭みなどなく美味しかったです。


 そして次に行動したのは、この街中がどんな風になっているのか? を確認することでした。


 ですが、夢が覚める時間が刻一刻と迫っているのを感じます。


 自分は建物の横の脇道に入り、とりあえず壁に触れてみました。材質などが何なのか? です。ですが、勿論詳しくは分かりません。


 ただ、コンクリートではないのは確かでした。

 綺麗にツルツルにされているのではなく、所々凹凸があります。


 しかし、脇道を行くにつれ、確実に夢から覚めようとしています。

 だから最後に、この街に来たような《風》に乗りたいと思いイメージしました。すると体が浮き上がります。

 そうなるとどこまで行けるか試したくなります。

 なので、街全体を見渡せる場所まで飛ぼうと考えました。上へと上がるイメージを強くすると、勢いよく上がりました。


 上から見た景色はただ美しかったです。

 最初に見た城の付近には透き通るような湖があり、城を映しています。


 この光景を最後に夢から覚めました。

 ですが、体を包む浮遊感と、貰った肉串の味が微かに残っていました。



 ここまで読んで頂きありがとうございます。

 夢だと分かり自由に行動できるのは面白い経験でした。

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