第12話 マイナス

「お話する事は何も無いです。貴方はいつも...意地悪しかしませんから」


そう言いながら私は怒りの目線を向ける。

すると彼はニコッとして「まあまあそう言わないでくれ」と言葉を発する。

それから「それに良いのかな?そんな態度。俺に対してそういう態度は良くないよ」とニヤッとクソみたいな笑顔を浮かべる。


「俺にあまり変な態度を取ると絶望しか生まれないよ。君はあくまで有名な人。女優だ。だからこそ地に落とすのは簡単だから」

「...」

「あまりふざけた真似をしない様にした方が良いんじゃないかな。俺はスクープ記者だしね」


そう言う斉藤。

私はその姿に少しづつ怒りを感じながらも。

「...ですね」と言った。

それから斉藤に「貴方は何の為に現れたんですか」と聞いてみる。

すると斉藤は肩をすくめた。


「トクダネがあるって聞いたから来たまでだね。そうしたらまさかの有名女優じゃん。嬉しいよ」

「...本当にクズですね。貴方」

「俺はクズじゃないよ。正義感を持って色々と接しているから」


斉藤はそう言いながら私を見てくる。

私はそんな斉藤の姿に眉を顰める。

それから私は「もう帰って良いですか?何をしに来たかも分かりませんし不気味です」と言う。

側をすり抜け帰ろうとした時。


「このトクダネを言ってくれたのは彼女でね」


と含み笑いで斉藤は言った。

多分奴か、とは思う。

だけど彼女かどうかは話が別だが。

コイツが言う事は何も信じられない。

そう思いながら私は斉藤を見る。


「斉藤。だから何ですか?」

「うん。だからまあ...何だろうね。君はやり過ぎない方が良いって感じかな。誰も見てない訳じゃないんだって話かな」

「...」

「俺は君のやっている事を暴露する可能性もある」

「...」

「調子に乗らない事だね」


そう言いながら斉藤は「じゃあ」と言ってから去って行った。

私は「...」となって眉を顰めたままイライラしながら家に帰って来る。

するとそこに萌香が居た。


顔立ちが幼いながらも整っている可愛らしいモデルの様な...その。

モノマネタレントとして半分は有名になってしまった萌香。

萌香はラーメンを食べている。


「お帰り。陸羽」

「...何をしているの?萌香...」

「見ての通り。塩ラーメンを食べてるよ」

「いや。見ての通りって。...ちゃんと来るなら連絡してよ」

「アハハ。ゴメンゴメン」


萌香は塩ラーメンを食べる。

するとお父さんが「お前も食うか」と言ってきた。

私は「そうだね。もう成り行きだけど」と苦笑した。

萌香が「だねだね。そうして」と満面の笑顔になった。


「萌香。どうしたの?」

「...うん。...実は...斉藤がね。...いや。斉藤とあの女。つまり東郷の妹が情報を横流ししている可能性があってね」

「...やっぱりね」

「え?それってどういう意味?どうしたの...?」

「いや。...多分そうだろうなって思って。斉藤に会ったんだ」


やはりそういう事か。

という事は斉藤に身体でも売っているのかあの女。

そう思いながら私は苛立ちながらお父さんお手製の塩ラーメンを見る。

そして食べ始めた。


「...横流しは事実だろうね。...正直、身体でも売っていると思うけど」

「...え?それって事実?」

「知らないよ。...それだったらあの女と変わらない。飯田翔と何ら変わらない」

「...クソだね」

「まあでも...東郷翔也が屑だからそうなるよね」


そう言いながら私は塩ラーメンを食べる。

熱々で凄く美味しい。

だけどまあ...食欲が少し落ちている。

これはストレスか何かか。

思いながら私は「...」となる。



「...何の用事だ」

「...私と付き合って。陶冶。私は貴方を求めている」

「馬鹿じゃ無いのかお前は」


コンビニに寄って帰っているといきなり飯田翔に絡まれた。

飯田は俺を見ながら強気な顔をしている。

コイツにこんな顔をする力は無い筈だが...どうなっている。

そう思いながら飯田に向く。


「お前もう止めろ。何をしているか知らないが。...東郷翔也と何かしらしたいのは分かるけど」

「...私は貴方の子をはらみたい」

「地に落ちた屑だな。話を聞いているのか?」

「私は確かに過ちを犯した。だけどお金さえあれば戻れるって知った。翔也が教えてくれた」

「...」


そういう感じで歪んだか。

そう思いながら俺は「話す事は何もない。...じゃあな」と言った。

それから歩き出した。

すると「私、お金を持っている」と話した。


「こんなに可愛くてお金持っている」

「お金の問題じゃない。...大体先ずそのお金はお前の金じゃない」

「何をもってして決めつけるの」

「それは東郷翔也の金だろ。...そして聞いたが東郷翔也は...自らの妹を売っているそうだな」

「売っているんじゃない。有名になる為に汚れ仕事をしているだけだよ。妹が」


マジに屑だわ。

思いながら「お前さ。...そんな屑と付き合って楽しい?」と聞く。

すると「私がせっかく貴方を幸せにするって言っている。何故断るの」と話の論点がズレる。

俺は額に手を添えた。

このアホには何を話しても無駄だ。


「...もういい。話が通じない」

「陶冶...」

「お前とは縁を切る。終わりだ」


そして俺は歩き出した。

それから帰宅する。

そうしてから自室に籠った時。


電話が掛かってきた。

その相手は東郷翔也だった。

見慣れない番号だったが080から始まっていたので出てしまった。


「何の用だ」

『君、鬼畜だよね。女の子がお金を持って君を拾いたいって言っているのに』

「...それはつまりあのクソの話か」

『お金要らないの?幸せになるよ?俺達と一緒なら』

「お金で買う幸せはお前らだけで十分じゃないか。...要らねぇよそんなもん」

『...』

「良いか。間違ってももう関わるな」


そう言いながら俺は電話を切ろうとする。

すると東郷翔也は「君に関わるのは止めないよ。だって君面白いし」と言った。

それから電話は切れた。

俺はダンッと机をぶっ叩いた。

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