第11話 増加する憎悪
翌日になり私は事務所に向かった。
今日はオフの日ではある。
だがどうしても伺いたかった。
私自身の思いを伝える為に、だ。
「博マネージャー」
「今日はオフだけど...どうしたの?」
「マネージャーに伝えたい事があって」
「...それはもしかして好きな人が出来たって話?」
「...違い...いや。違わないですがそうじゃないです」
マネージャーが居たので話し掛ける。
そのマネージャーは「...どんな話かな」と向いてくる。
私はマネージャーを真剣な顔で見た。
そして「...私、好きな人が出来て...そして女優業を廃業にしようと思ったんです」と話す。
すると「うん」とマネージャーは笑みを浮かべる。
「だけど...萌香のお陰で戻ってきました」
「萌香君か。...そうなんだね」
「私、倒したい相手が居ます」
「...それは?」
「有名になって。もっと有名になって。成り上がってから。そして倒します」
「...そうか」
「...私は諦めたくない」
そう言いながらマネージャーを見る。
マネージャーは「...それでもっと仕事を見つけてほしいって事かな」と笑みを浮かべながら私を見る。
私は頷いた。
「...私は...もっと有名になって...そして彼と婚約します」
「そうか。...じゃあもっと仕事を見つけてくる様に僕も頑張らないとね」
「...マネージャーは止めたりしないんですか。私を」
「社長次第だけど。...僕は特に止めたりしないよ。だって女優とはいえ君は女子だ。...恋愛ぐらいするだろう」
「マネージャー...」
「君は自由に羽ばたけば良い。...苦労はしないで良いから」
「...分かりました。死なない程度に頑張ります」
「そうとなれば仕事をもっと見つけないとね」と笑顔になる博マネージャー。
その言葉に私は「はい!!!!!」と力強く返事をした。
それから私は頷いた。
そして博マネージャーは「うむ。良い返事」と言ってくれた。
☆
そして私はそのまま事務所を後にして帰ろうとした。
その時だった。
電柱の傍に誰かが隠れており。
出て来た。
東郷幸子(とうごうさちこ)だ。
「...」
「何ですか?隆明さん」
「...貴方。お兄の邪魔」
「...言うと思いました。...何ですか?それを言いにきたんですか?頭お花畑ですね」
「まあね。...だけど邪魔なものは邪魔だから」
東郷幸子。
コイツは東郷翔也の妹である。
芸能人だが。
正直、兄よりは売れてない。
そう思いながら私は東郷幸子を見る。
「妬ましいんだよね。貴方」
「...貴方は何もしないから売れて無いだけでしょう。妬ましいって言われても」
「...貴方だって恋愛にうつつを抜かして全てを疎かにしているでしょう」
「してないです。今だってマネージャーに頼んできましたから」
「そう。だけど恋愛すれば自分は落ちていくよ」
同じ高校1年生だが。
ここまで妬ましい様な屑は居ない。
そう思いながら私は東郷幸子を見る。
東郷幸子は「あの子も落ちるし貴方も落ちる。そういうもの。恋っていうのは」と言いながら私を見る。
私はイラッとしながらも「そうですか」と返事をした。
「...で?それが言いたいが為にこの場所に?頭おかしいですか?」
「...そうだね。...まあ覚悟していてねって話だよ」
「貴方は有名人じゃない。...それは脅しだ」
「...私はこれからはばたく。...何故なら運命で決まっている」
「...」
「貴方はこの世界を。業界を何も分かってない」
「...」
「舐め腐っていると落ちていくから」
そう言いながら東郷幸子は去って行く。
私はその姿を見ながら「...」となっていた。
それから私も遠回りだが別の場所から家に帰った。
この業界を舐め腐っている。
それはお前だろ。
☆
私は家に帰ってから...一鉄の手伝いをした。
それから私は二階に上がる時。
一鉄に声を掛けられた。
「おう。あの少年の所に行くか?陸羽は」
「...うん?どうしたの?」
「いや。またラーメンを届けてほしいからな!新しく作った名付けてニンニクラーメン!」
「...うん。じゃあ届けようかな」
そして私は踵を返して一階に降りる。
すると一鉄が「...どうした」と聞いてきた。
私は「え?何が?」と聞く。
一鉄は「俺に隠している様だが顔に出ている。...何かあったのか」と帽子を直しながら聞いてくる。
「ああ。ちょっとね」
「...もしかして東郷兄妹か」
「...そうだね。だけど嫌味ばかりだけど...まあ問題無い」
「あのクソ野郎ども。絞めた方が良いかな」
「お父さん。それはしないで。お父さんの立場が悪くなる」
「俺はどうだって良いよ。...お前の女優業だ。問題はな」
一鉄はあれ以来。
つまり少年=先輩が来た時以来。
東郷翔也を敵認識した。
何というか一鉄のブラックリストに載ったそうだ。
来ても追い返す、という感じで、だ。
「...私の立場も悪くなる」
「...そうだな。...それを今思った。...すまん」
「...だけど確実に地には堕とすよ」
「...」
そう。
私の先輩を愚弄した罪は重い。
確実に制裁は加えないといけない。
だけど今はその時ではない。
まだもう少しだ。
「...頼もしくなったな。お前」
「...私はいつもこんな感じだよ」
「そうだっけか?」
「全ては先輩のお陰で変わったんだよ」
「...そうか。あの少年か」
「そうだね」
そして私は冷食のラーメンを持ってから一鉄に笑みを浮かべて手を振る。
それから私は冷ややかな視線と共に表に出る。
そうしてから歩いていると目の前からカメラを持った男が出て来た。
それは...週刊華と呼ばれるスクープを載せる雑誌のスクープ記者の斉藤だった。
「やあ」
「...何ですか」
「いやいや。君と話がしたくてね。...君、木村陶冶くんが好きなんだって?君の学校の先輩の男子生徒の」
「...」
「いけないねぇ。ファンと付き合うなんて」と言う斉藤。
私はイラッとしながらその姿を見る。
カメラを持ったスキンヘッドのにやついているクソ野郎を。
私は「...」となりながらその姿を見る。
どこで知ったのかこのゴミ屑は。
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