第9話 リンク
☆
東郷翔也。
奴は...私の敵だ。
そう思いながら私は実家でお手伝いをしていた。
敵っていうのはつまり、私達の幸せの邪魔になる、という意味だ。
クソ野郎だと思う。
「...」
私はレジ打ち処理などをしてからそのまま家に戻っていた。
それから私は東郷翔也の出演している番組を少しずつチェックする。
コイツのせいとかもあるが。
とにかく全てがクソッタレだ。
「...何とかしないとな」
そう思いながら居ると「おーい。お客さんだぞ!」とお父さんの声がした。
私は「?」を浮かべてから一階に降りる。
そして固まった。
そこに居たのは...。
「やあ」
この場所を何故か知っている東郷翔也だったから、だ。
何故この場所を知っているのか...。
確かにラーメン屋ではあると言った事はあったが。
☆
何をしに来たのだコイツ。
そう思いながら私は東郷翔也に向く。
東郷翔也はラーメンを注文した。
豚骨ラーメン。
「...何をしに来たんですか」
「まあ一先ずはラーメン食ってから話したい」
「...」
私は東郷翔也を見る。
こんな感じの人間じゃない。
正直、フランス料理でも食べてそうな勝手なイメージが有った。
だからコイツがラーメン食っているのが信じられない。
そう思いながら見ていると東郷翔也は「親父さん。美味しいですね」と言う。
父親は少しだけいつもとトーンが違い警戒する様な感じで「そうかい」と苦笑の様な笑みを浮かべる。
私はそれを見てから東郷翔也をまた見た。
東郷翔也は全てを食べ終えてから水を飲み私を見る。
「やあ。お待たせ」
「...何をしに来たんですか。本当に」
「まあそんなに警戒しないで。...俺は君達と話がしたいと思ってね」
「私から話す事は何も無いです」
「...そう言わないでくれ。...君達は探っているんだろ。俺達の事を」
「そうですね。探っています。...貴方は...彼女を拾ったそうですね」
「飯田翔か」
「そうです」と返事をしながら私は東郷翔也を見る。
東郷翔也は「...あくまで俺は彼女を見捨てておけなかったからね」と肩をすくめる。
それから「君はそういうの無い?何か可愛いものを見つけたら救いたくなるの」と笑顔になる東郷翔也。
私は「話をすり替えないで下さい」と言いながら見る。
「別に互いに破滅するのは勝手ですけど。...ただ迷惑を掛けないで下さい」
「迷惑?」
「そうです。...私と彼の貴重な時間を邪魔しないで下さい」
「...俺はそんなつもりは無いんだけど」
そう言いながら東郷翔也は肩をまたすくめる。
私は「...」となりながら彼を見る。
すると彼は「というか君もそうでしょ?何かろくでもない事をしているよね?」と言ってくる。
また話をすり替える。
っていうか何だって?
「...私の何処がそんな感じですか?」
「君は確か好きなんだよね?彼が」
「...で?」
「その彼と好きでも無いのにキスなの?それ問題じゃない?」
そんな事を言いながら私を見る。
私は「...そうですね。だけど私は彼が好きですから」と言う。
「でも正式に告白もしてないでしょ?」と苦笑する東郷翔也は言う。
それから「それってまあ何ら変わらなくない?」とも。
「...」
「というかとても有名な女優がそうやってコソコソ公表も無しで秘密の恋をしているってのもどうかと思うけどねぇ」
「...」
東郷翔也は「俺はキチンと公表するつもりだけど。君はどうなの?」と言ってくる。
私は「どこで知ったんですか」と聞いてみる。
すると東郷翔也は「まあこっちにも色々と入手の道があってね」と笑顔になる。
その言葉に「...」となってから東郷翔也を見る。
「...俺は貴方の行動が理解出来ない」
「...」
「...どうかな?」
「私も公表するつもりです。だけど...」
それに関しては言い返せなかったが。
それ以外は言い返そうと思う。
「貴方、勝手に情報を調べたんですね」という感じで、だ。
すると東郷翔也は「まあね。根っから邪魔なものは潰すタイプだし」と言う。
「...ただ俺達と同じだよ。君」
「...別に私はファンを...裏切って無いです」
「裏切ったとかじゃなくて君の行動がコソコソしているのが駄目だと思うんだけどな」
「...」
「まあどうでも良いけどねぇ。君がやられようが何だろうが」
「だけどやられたものはやり返すからね」とニコッとする東郷翔也。
私はその顔に「私は自分のやった事を反省しています」と言う。
それから私は「...さっきも言いましたがファンに向けては全て公表するつもりです」と見据える。
すると東郷翔也は「まあそれが良いね」と笑顔になる。
「...じゃあまあ話は終わったから帰るね」
「...はい」
そして東郷翔也は立ち上がる。
それから帰ろうとした時。
扉が開いた。
入って来た人物は「!」となりながら東郷翔也を見る。
それは...先輩だった。
「...お前。東郷翔也か」
「噂をすれば。君は木村陶冶くんだね」
「何で知っているんだ」
「有名人だよ。じゃあね。俺は仕事が有るから」
それから無理矢理、去って行く東郷翔也。
私は「丁度良かったです。...先輩」と呟いた。
先輩は「あ...ああ」という感じで私を見る。
「何があったのだろう」と言いたそうな顔だ。
だけど。
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