第8話 歪奏

当山のせいでえらい目に遭った。

俺はそんな事を考えながら廊下を歩く。

それからトイレに向かう。

そしてトイレから出ようとした時。


「飯田翔っていう女の子さ」

「何か東郷翔也(とうごうしょうや)っていうアイドルと浮気しているって聞いたけど」

「ああ。あのイケメンアイドルね」

「ゴミ屑っていうか...俺も言ったらやらせてもらえるんかなぁ」


そんな感じで言葉が飛び交う。

俺は「...」となりながら「...東郷翔也かよ」と呟く。

東郷翔也。

有名じゃないが二枚目のアイドルとは聞いた事がある。

背が高いイケメンだ。

よりによって浮気相手ソイツかよ。


「...はぁ...面倒だ」


そう思いながらトイレから出る。

それから歩いて教室に戻る。

そして俺は授業を受ける。


「...」


東郷翔也か...。

面倒な事になってきたな。

考えながら俺は外を見てみる。



「東郷翔也...成程ですね。あのクソ女、二枚目アイドルのイケメンと不倫していたんですね...信じられない」

「...そうだな」

「屑中の屑ですね」

「...ああ。...もう付き纏うなって警告で威嚇はしたけど」


俺達はその様に会話しながら帰宅する。

陸羽は「...その男、地下アイドル出身です」と言葉を発する。

そして「その男の情報、拡散しましょうか」と言ってくる。

俺は「待て。まだ確証が出来てない」と止める。


「...それで陸羽。お前にお願いがある」

「...はい。何でしょうか。もしかして近辺を調べてほしいですか?」

「良く分かったな」

「そりゃそうでしょう。先輩の事は何でも分かります」

「...」


今朝のキスを思い出す。

それから俺はボッと赤面する。

すると陸羽は俺の唇に人差し指を立てた。

そしてニコッとする。

俺はますます赤面した。


「先輩の為なら幾らでも動きます」

「...なあ。お前本当に俺が好きじゃないのか」

「好きとか嫌いとか無いです。...貴方の事は尊敬しています」

「いやそれ答えになってない」

「私はそれ以上でもそれ以下でもないです」


そう言いながら陸羽は俺から人差し指を離す。

それから笑顔になる。

俺はその顔を見ながら溜息を吐いた。

そして歩く。


「...どこで知り合ったんでしょうね。東郷翔也と」

「分からんし興味が無い」

「ですね。...まあどうでも良いんですがこれ以上の影響は避けたいです」

「そうだな」


それから俺は空を見上げる。

オレンジ色の夕日がある。

そして視線を下に戻しながら「やれやれ」と呟く。

陸羽が「それはそうと」と聞いてくる。


「美味しかったですか?お弁当」

「ああ。滅茶苦茶美味かったよ。有難うな」

「...ですか。良かったです」

「メンマを具材に使うなんてな」

「アハハ。私はラーメン屋なので」


そして陸羽はお弁当箱を受け取る。

俺から受け取ってからそれを収納した。

それからまたニコッとなる。

その顔に俺は苦笑しながら歩く。


「...所で東郷とは知り合いなのか」

「知り合いです。...番組共演もした事があります」

「...そうなんだな」

「東郷翔也。あまり良い印象が無いです」

「そうか」


そんな二枚目のアイドルなんぞ知らないしな。

そう思いながら歩いていると「でも」と陸羽が切り出す。

それから真剣な顔になった。

「どんな有名人であっても地獄に落とします。...私は許さない」と言った。

「もし本当にそうしているのなら、ですが」とも付け加えながら、だ。


「...そうだな」

「私は汚らわしいものは嫌いです」

「...だな」


そして歩いてから分かれ道に来る。

それから陸羽と別れてから帰っていると囲まれた。

それも男3人に。

誰だコイツら?、と思いながら見る。


「お前。木村陶冶だな」

「そうだな。誰だお前ら」

「...俺らさ。東郷翔也のダチっつーか仲間。...もう嗅ぎまわるな。お前」

「...ああ。そういう事ね」

「取り敢えず警告はしたぞ。後は知らねぇ」


それから3人は俺に唾でも吐き捨てる様な感じで脅す様に言ってから去って行った。

俺は「...はぁ」と溜息を吐く。

そして東郷翔也という人物について考える。

あんなクソホストの様な奴らと絡んでいるんだな。

そう思いながら真面目に働いて女優をやっている陸羽を思った。


「...陸羽も危ないな」


そう思いながら俺は陸羽にメッセージを送る。

(陸羽。周りに気を付けろ。東郷翔也も動いている)という感じで、だ。

すると陸羽は(はい。何だかその様ですね)と文章を送ってきた。

俺はその文章に(俺も気を付けるから)と返事を書いた。


「...ったく。どいつもこいつも」


思いながら俺は頭をガリガリ掻く。

警察に言うか?

だけどなぁ...動くかな。

そう思ってしまう。


「だけどまあ...」


証拠を集めるか。

そしてとにかく成り行きを見守ろう。

そう考えながら俺はまた夕陽を見てから帰る事にした。

威嚇なんぞに恐れない。

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